音楽隊・の花・プリンセス

「ねえ。僕達はどうしていればいいの?」


 隆司りゅうじくんの問いかけはもっともなのだけれど。それは脚本家がなんとかしてくれることになっている。


 なぁに。美味しいもの食べて楽しく遊んていればそのうち寝てしまうだろう。


 脚本家はそう楽しそうに笑っていた。


「ふーん」


 だかれど氷姫ひめの方はなんだか意味深な納得の仕方をしている。もしかしたらなにかに感づいているのかも知れない。


「音楽隊ー。音楽隊ー」


 隆司くんがごきげんなのも先程まで劇団の音楽隊が相手をしてくれていたからだ。氷姫もおなじようよろこんでいたはずなのに。


「ボーイ、プリンス、プリンセス。着いたぞ」


 そこは見覚えがあるホテルだった。あんまりいい思い出ではない。


 あれだけ派手に壊したはずなのに元通りなんだもんな。物語の力と世界の力は《たすく》が思っている以上に強固なものなのかもしれない。


 しかしなんでまたここなんだろうか。ただの偶然にしては出来すぎている気がするのだけれど……。


「ここはうちの劇団御用達なんだ。ゆっくりできるし融通もきくからな」


 ほんとにただの偶然みたいだ。


「うちの花形もここに泊まるんだ。やつらにもあいてをさせよう」


 主役だった人だろうか。なんだかまだまだ騒がしくなりそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る