令和初・月刊・スーパー

「月刊ミューに書いてあった幽霊の話が本当だったんなんて。思いもしなかったよ」


 そういう類の噂を集めた月刊誌があるのは知ってはいたのだけど、読んだことはない。というか、なんで記憶の中の雑誌がこの世界とリンクしているのだ。いや、でも実際の雑誌を参考にすることも少なくないのだ。気にすることでもないか。


「それってどんな話なんですか」


 嬉しそうに語る劇団員はそういった類の話が好きなのだろう。興奮気味だ。


「劇場に幽霊が出ては夜な夜な何かをしてるらしいんですよ。正しく王道の噂話。しかし、戸締まりはちゃんとしていますし、警備員が誰かがいる気配がすると察知して扉を開けるまでに姿を消してしまうんだ。それってやばいよな」


 元気よく同意を求められても正直困ってしまう。しかし、舞台に人の気配はするけれど、その姿を見たものがいないから幽霊なのだという。


「それって誰かが忍び込んで練習してるだけじゃないんですか?」


 そう言葉を返すと途端に顔を険しくさせる。


「そんなのスーパーつまらないじゃないか。せっかくこんな噂が立ったんだ信じないほうがどうかしてるよ」


 そうなのだろうかと思わず思ってしまうほどの勢いにたすくは気圧されてしまう。


「そ、そうなんですね。もうちょっと調べてみますね」

「おっ。脚本家に頼まれたんだってね。よろしく頼むよ。こっちは毎日稽古で毎日くたくたんだ。夜まで起きてられなくてさ。気になって眠れないんだよ」


 起きてられないのに眠れないとは矛盾がすごいなと思いながらもツッコミはしない。


「令和初のビックニュースになるといいな!」


 彼は佑が月刊ミューの記者かなんかと勘違いしているのだろうか。そんな事言われても記事にはしないし、解決してしま追うと思うのだけれど。そうすればニュースどころかなかったことになる。それはちょっとだけ彼に申し訳ない気がしてしまった。

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