詐欺・クエスト・ファンシー

 案内されたのは意外とファンシーな部屋だった。外観から比べると随分と豪華にも見える。あちらこちらにもふもふした何かが取り付けられていて、座るように促されたのもそんなもふもふのソファだ。


 隆司りゅうじくんはこれまた用意されたカラフルなお菓子を美味しそうにいただいている。となりで、氷姫ひめも同じように小さな口を大きく開けて美味しそうに頬張っている。


「ふう。それでボーイはなにしにここにきたんだ?」


 脚本家は自分の分のマカロンを口に放り込んだあと、ごくりと飲み込むとそう問いかけてくる。


「子守を頼まれてるだけですよ」


 そう隆司くんと氷姫に視線を移す。それを同じように脚本家も追う。そしてうなずいた。


「ふむ。もしかして、ボーイたちは神永のところの子どもたちなのかい?」


 神永はつとむさんの名字だ。つまり、招待されていたというのはこの脚本家からなのだろう。


「そうです。その神永さんからクエストを受けているんです。まさ、ここで臨時クエストが発生するとは思いませんでしたけどね」


 巻き込まれることばかりでそういう星の下に生まれてきたのかと自分を疑いたくなるほどだ。それとも物語の登場人物である以上、それは避けられないのかもなと諦めたりもする。


「あの神永の下でクエストを受けているとは、さぞかし苦労しているのだなボーイは。今回のことも彼に相談しようとしていた矢先のことだ。もしかしたらそれも見越していた可能性すらある」


 勉さんと仲がいいのかなにやらわかっている雰囲気を出している。しかし、そんな相談を受ける前提だったのなら、この展開を予想していたのは間違いなさそうだ。


 ほんとに一歩間違えれば詐欺師にでもなっていたと思うくらい。隠し事がうまい。肝心なことをなにも伝えずに人を動かすことに長けている。頭の回転が早いことに由来しそうだ。


「まったく。否定できないですね」


 脚本家はくすりと笑った。

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