競争・オタク・からの刺客
「なにかようですか?」
警戒心むき出しなのは隠していないからだ。できればこの警戒心を見て取って、ここから去ってくれると助かったりするのだけれど。
「おー。私の代わりに事件を解決してくれた礼がいいたかっただけだよボーイ。そう警戒しないでおくれ」
そう豪快に笑う彼女を見て思わず気が抜けた。どうやら敵対心はないらしい。むしろ、こちらを歓迎しているのか警戒も何もしていない。
「不届き者が演者のなかにいるのはわかっていたけれど。確証がつかめなくてな。泳がせいたんだが、あの騒ぎで、まいったよ。あんなに大胆に動くとは思っていなかった。競争心のかけらもないやつだったしな」
そうなのだろうか。競争心がないのならあんな風雨に嫉妬心で人を襲ったりしないと思うのだけれど。
「競争心がないから手っ取り早い方法で障害を排除しようとするんだよ。だから舞台上じゃないくてきっと裏でこっそりとやるもんだと思ってたんだ」
そうか。であればおかしな行動をしていたのはしゃべる剣の影響なのだろう。よからぬことを考えたから剣にとりつかれたのか。とりつかれたからよからぬことを考え始めたのか。
「ふむ。気に病む必要はないぞボーイ。やつは自分で蒔いた種に食われたのだ。止めを刺したのがボーイと言うだけでボーイの責任ではない」
「その格好はなんなんですか。演者ではなかったみたいですが」
「おっ。これか。これは趣味だ。舞台俳優たちと同じような格好をすることで同じ気分になろうって算段だ。私は脚本家だよ」
オタクのような発想をしている。それもかなりぶっ飛んだ方向に。こんな脚本家につきあわされる演者もたいへんだろう。
「身内からの刺客なんてな。なんにせよ。申し訳なかった」
そう頭を下げる脚本家にどうしていいかわからなくなっていた。
「ねえ」
その気まずい空気を振り払ったのは
「どうした?リトルボーイ」
話を遮ったのを気にする様子もなく脚本家がそう尋ねてくれる。
「おなかすいたー」
あたりに豪快な笑いが再び響いたのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます