101回目の・で検索・穴

 何回やっても。それこそ101回目の攻撃でもたすくは自身に攻撃が当たる気なんてしなかった。それくらい相手は素人だったのだ。


 それなのに……。


「たぁぁあ!」


 剣を振り下ろすその人の首筋にこつんと軽く、剣の柄を当てる。それで、終わりのはずなのだ。

 でも。


「たぁぁあ!」


 変わらず切りかかってくるのは、相手が人でないからなのか。それとも、なにか特別な力を使っているからなのか。


 もしかしたら語り部なのかとも考えたが、動き自体は素人だし、単に丈夫なだけにしか見えない。でも間違いなく殺気は発しているのだ。そして目の前には絶対にかなわない相手。であれば、ここまで彼を突き動かすものはなんなのか。


「ちぃっ!」


 あんまりにもしつこいものだから、相手を殴る手にも力がこもる。実際に刃で着付けるわけにもいかない。実際に飛び散るその血を観客に見せつけるわけにはいかない。

 そんなことを繰り返している間に。その流れは最悪な方向へと進む。


「が、がんばれー!」


 観客の誰かがそう叫んだ。必死になっているその姿に感銘を受けてしまったらしい。


 おいおい。人を殺そうとしているやつだろう。そう叫びたかったが、それをしてしまったらこれまでの行動の意味がなくなる。


「そうだ。がんばれ!まけんじゃないぞ!」


 人を気絶させる方法で検索でもかけたいこ気持ちになる。できればこの場にいる全員。しかし、そんなことを調べている暇もなく。やれることは多分一つ。


「くそっ」


 そう悪態を付きながら、剣をこちらに振り下ろす相手を抱きかかえる。


「なっ。なにをする!」


 それはこっちのセリフだと思うけれど。その言葉を無視してそのまま舞台の袖に空いていた穴に飛び込んだ。


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