犬・カリスマ・スープ

「くそっ。めんどくさい攻撃ばかりしてきやがって。遠隔型の直接攻撃とか避けるしかないじゃないか。あー、めんどくさい!」


 避け続けていたのに、自らその体をひらりと翻すと男へと突っ込んでいく。


「この地獄のカリスマにそんな攻撃は無駄だとわかったでしょうに。いつまでそんなことを続ける気ですか。それがわからない方だとは思っていなかったですよ」


 それはたすくですらそれを同意せざるを得ない。無駄な突進。無駄な攻撃。披露だけが蓄積されただでさえ相手は一歩も動いていないのに、永遠とわは避けることばかりで、動き回り続けている。その差は体感しなくてもわかるくらいには歴然としている。


「地獄のスープにでも浸かっていただけると幸いです」


 物騒なことを礼儀正しく言い放つ彼はやっぱり不気味なのだがそれより、突進し続ける永遠のほうが不気味だと思えるくらいに攻撃は繰り返されている。体力が尽きることがないのか疑問に思う。


「さて、そろそろそこから動いてみようか」


 永遠がそう言い放った時、男の顔が少しだけ歪んだ気がした。


「こんな強力な物語。世界に許してもらえるはずないもんなぁ。それこそ、この空間自体に仕掛けがないと割にあわないんだよ。なんせこの世界は等価交換なんだから」

「ふんっ。それがわかったところで、何が出来るというのです。あなたの攻撃は当たらない。よって動かすこともできない。それは変わらぬ事実!」


 永遠が言うように空間自体に予め仕掛けが施されていたのだとしたら勝機は見えてくるのかもしれないが、男の言うことももっともで、どうすることもできないのはなにも変わっていない。


「ふん。俺は犬みたいに鼻は聞かないが、感だけは働くんでね。まあ、やり方は教えてやらねぇよ」


 永遠がそう言って男の目の間に着地する。そうしてから、挑発するようにそのひらひらのアイドル衣装を揺らしている。


「この針地獄で苦しみ抜くがいい!」


 その言葉とともに地面が盛り上がる。でも、それに違和感を覚える。


「真実を正確に認知するっていうのは実は難しいんだよ。自分の都合のいいように余計な解釈が挟まる。それが無数な分岐で存在するからちょっとしたズレが大きなズレになって。痛い目を見る。お前みたいに余裕かましてるやつは余計な」


 永遠がそう言葉を放ちながら、それでもその場から動こうとはしない。


「永遠!」


 思わず佑は叫んでしまった。

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