図書館・劇・チアリーダー
とりあえず図書館行きましょ。そういった背の大きい方の彼女はなんともまあ、物語の力を知っていると言わんばかりの場所を指定してきた。
「私達は七日間戦争を勝ち続けなくちゃいけない。そのために力を貸してほしいの」
図書館に着くなり案内されたのは図書館の奥の奥。なにやら関係者以外入ることの許されない場所に何を言われなくても案内された。そうして、その会議室みたいな広く机と椅子が並んでいるだけの部屋で彼女はそう言い放った。
「なにを急に。一体どう言うことか詳しく説明してくれないと困るのだけれど」
「あら。意外と真面目なのね。もっとゴネるかと思った」
自分で言い出しておいてひどい言い草だとは思わないのだろうか。
「七日間戦争という劇に出演する以上、勝ちたいの!でも私にはその力が足りない。語り部なら力を振るうことができるのでしょ?」
それは出来るのだけど。そもそもどうして語り部とわかったのだろうか。
「なんか不思議そうな顔をしてるわね。この子が見えたんでしょ?その時点で語り部はほぼ間違いないのよ」
そういって彼女は隣りにいるこの頭にポンッと手を置く。
「どういうことですか?」
話が見えてこない。最近こんな経験ばかりしている。それだけこの力について知らないことが多すぎるように思える。それにこの世界には思った以上に語り部は根付いている。想像しているよりきっともっと深くこの世界でこの力は続いてきたのだろう。
「この子は私が召喚した物語の力。私が憧れたアイドルそのもの。でも力が足りなくて成長途中なの。そしてこの子は普通の人には見ることはできない。それこそ語り部じゃないとね」
なるほど。と思いつつ、召喚なんて出来るのか。しかし考えようによってはこの前の口裂け女を使役しているようなものか。それならなんとなく納得できる。
「レイヤーにくれべてサモナーは非力なことが多いの。私もそうだけどね。だからあなたにお願いしたいの。まさかあなたもサモナーってことはないわよね?」
サモナーとかレイヤーとかよくわからないけれど、彼女がサモナーだとしたら会ったことがある語り部はみなレイヤーということだろう。しかし、物語自体である自分はきっとどちらでもない。力としてはレイヤーなのだからそのフリをしていればいか。ふと、彼女の力をコピーしたらその子を召喚できるのだろうかとちょっとだけ気になったりもしたけれど、やめておいた。好奇心でやるには少しリスクが高い。
「レイヤーだよ。力を貸すに当たってこちらにメリットは?」
本当は受けてもいいのだけれど。そういった方がいい気がした。ただで動くほど厄介なものもない。
「私のチアリーダー衣装姿を見せてあげる」
はぁ。何がメリットなのかわからない。それになにの価値があるのか。こちらが不思議そうな顔をしているのが不思議だったのか向こうも不思議な顔をし始めた。
「もしかして私がだれだかわかってないの?」
彼女は自信満々にそう言った。
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