『勇者は心優しいのだな。けれど心配は無用だ。人間族にけしかけているのは、人間族の負の感情から創り上げた魔物だ。魂などはない』
魔王のこの言葉。
本当にその通りだと思います。
今世界では戦争が始まっていますが、それも負の感情の集合体がある一点を超えた時に、王様の心を動かし、戦争になってしまったのではないか。と、思いたい自分がいます。
であれば、王様が優しくなれれば、この戦争は終わるのかな、といつも、王様が優しくなりますようにと、祈っています。
このお話は、子供たちにも聞かせてあげたい優しい真実が、たくさん詰まっています。
ぜひ、今だからこそ、お読みいただきたい名作です。
今、まさに最後の決戦の扉が開かれようとしている。
その扉の奥には、これまで無敗をほこる魔王が存在している。意を決して、そこに飛び込む勇者一行は、その場を覆う、もの凄い重圧をその身に感じていた。
先鋒を競うかの如く前進してくる、魔王軍。対して、勇者を温存するための陣形を見せる勇者一行。ついに、その戦端は切って落とされた……。
という、いきなりクライマックスから物語は始まります。
しかし、ここから先、読者の期待は良い意味で裏切られるのかもしれません。
こういう強さを持った勇者がいても良いではないか。こんな優しさを持つ魔王だっていても良い。そして、ふたりの脇を固める仲間たちも、素敵な存在である。
しっかりと描かれた、勇者、対、魔王の物語。でも、その綴られた顛末は、勧善懲悪とは違っていて、読了後は、きっと優しくなれることでしょう。
そこがまた素敵な物語なのである……。