まつ毛を濡らしたままみあげる瞳は、遠いあの日かすめて月をみつめている

現代ファンタジー。
あうあが、とにかく可愛い。

「私の寿命が縮んだっていい。私に、友達を、下さい」と神様に願った。
なのに、自分の部屋の床に赤ちゃんらしきものが転がり、『注 あなたが願ったことです』と落ちていたカードにはメモが書かれていた。
友達が欲しかったのであって赤ん坊ではないだろう、と紬は思わなかったのかしらん。
とはいえ、「いちゃか、った」「んはゃよぉ」「ちゅ、ん、ぎ」つたない言葉で話すのがなんともかわいい。
「くしゃみぃ、くしゃみぃくしゃみぃ!」と新しい言葉をおぼえて繰り返す何気ないエピソードが、二人に腰痛する話題として、最後に響いてくるところも良かった。

自分を成長させる方法は、自分が自分の親になることである。
紬の幼い頃に似ている描写があることからも、あうあは幼い紬自身なのだ。
あうあの面倒を見ることは、子供の自分の親代わりとなることでもある。
子供の自分に褒めて励まし応援してもらうことで、初心に戻り、また一歩前に進む力となれる。
あうあのおかげで成長でき、ほのかと仲直りすることにつながった。

あうあを殺すことで、割礼の儀式のごとく自立心が芽生えさせて、紬は大人になれたと思う。
できなかったのは、父親を病気でなくしているからだと推測する。
月の満ち欠けのように紬とあうあは入れ替わりながら一生を過ごすのかしらん。