第21話異変について聞いてみた!

 さらに数日が過ぎた、幸いな事に新潟市の守り人と会うことはなかった。普段の会社勤めには何の支障も無かったが……ヤエとヒエの事の方が気になってしょうがない、勢いもあったけど正直に言えば後悔はしていない……ヒエが言ってた、私達にはある意味人間の常識は通用しないわよって……いつの日か二人に言ったことあったけどな。

『じゃあ二人共俺のお嫁さんって事?』

 あの言葉がまさか現実になりかけているとは……二人は大切な存在だ特にヤエは、なのに私達を愛してか……いっそ事実婚って事にしてって……駄目だ! 茉希ちゃんをどうするか、彼女も大切な人には違い無い。ただライクなだけだ……ごちゃごちゃ悩んでいると不意に嫌な予感が頭によぎる、茉希ちゃんは新潟の大学に通っていると言う事は……アカン! もし茉希ちゃんが狙われたら……今日の夕飯時にそれとなく聞いてみよう。


 アパートに帰ると3人共揃っていた、ヤエとヒエの目線が纏わりつく……俺はどうなってしまうのだろうか……じゃない! 食後に勉強中の茉希ちゃんに話しかける。

「あのさ、茉希ちゃんの周りで変な事とか起こってない?」

「ん~~別に何もないかなぁ、どうして?」

「いやほらね、茉希ちゃん可愛いから変な奴とかに絡まれてないか心配でさ」

 どうやら異変には巻き込まれていないと見るべきか。気にはなる……

「あのさ! 今度の俺の休みの日に一緒に大学まで行っていいかな?」

「「何で!!」」

 あっ……ヤエとヒエから怒りのオーラを感じる。

「保護者としてね!」

「師匠……良いよ! 次の休みいつだっけ?」

「15日だけど……どうかな? 俺の青春時代は暗黒期でさ、眩しいキャンパスライフに憧れがあってね」

「ふ~ん? じゃあ、その日なら講義が……昼からだから、本当にそれだけ?」

「ちょっと見たら直ぐに帰るよ」

 そこまで話すと茉希ちゃんがお風呂に入ったスキに、ヤエとヒエに誤解を解いておく。

「本当に見に行くだけなのね?」

「隠れて連れ込んだりしないでしょうね?」

「信用ないなぁ俺……二人共こっち来て」

 ヤエとヒエのほっぺにキスをすると

「もし浮気したら……健を殺して神の座へ一緒に連れ帰らせて貰うわよ?」

「怖いよヤエ……俺の気持ちは変わらない」

「じゃあ何で茉希の大学なんかに興味あるの?」

「俺の過去知ってる癖に……」

「過去って言えば……ねぇ健、小野寺茂子さんて知ってる?」

「誰それ? 俺の過去は知っての通り、職を転々としてたから何処かであったかもね」

「まっそういう訳で次の休みは出かけてくるよ、御土産も買ってくるからさ」


 当日、ヒエに留守番を頼むと茉希ちゃんと一緒に出掛けた。

「師匠が学校か……思い出すって言ったら変だけどさ……」

「どうかした?」

「いや……あの……ほら、敵対してたじゃん……」

「あ〜あの時か……覚えているの?」

「うん……」

「まっ俺は気にしてないよ、手でも繋ごうか?」

「うん!」

 この娘もちゃんと守らなきゃな、もし茉希ちゃんにまで危害を加える様ならぶっ飛ばす! 電車の中でも茉希ちゃんは手を離さなかった、流石に新潟の街中では名残惜しそうに離してくれたが……

「師匠! こっちのバスだよ!」

「バスか……そう言えば大学って今は何処になってるの?」

「前と一緒、青陵大学だよ? あれ知らなかったけ?」

「そこは変わってないんだね……凄いんだな大女神様」

「アタシは感謝してるんだ、友達も新しく出来たしね」

「じゃ……」

「彼氏とか興味無いから師匠以外に」

 黙ってバスに乗ると走り出す、並んで座ると。

「師匠の事諦めきれないよ……ヒエとヤエに負けないぐらい好き」

「そっか……俺も好きだよ3人共」

「アタシだけを見てなんて言わない……ヒエもヤエも好き」

「俺達は家族……それじゃ駄目かな?」

「良いよそれでも、でも……一度で良いんだアタシの初めてを……貰って……くれないかな?」

「公共の場でそういう事言わないの!」

「もう! ちゃんと考えておいてね!」

 

 そんなこんなで青陵大学に着くと……感じるな……

「師匠! ここだよ! アタシもう講義だから行くけど捕まらないでよ?」

「大丈夫! あっちに美味しいアイス屋さんがあるから、取り敢えずそっちに向かうよ」

「じゃあね!」

「いってらっしゃい! 茉希ちゃん」

 さてと……アイスの前に行くか! 護国神社へ、近付くと神気が身体中に勝手に満たされていく……本殿から離れた林の中に彼女は居た。

「こちらでは、お久しぶりですね八神さん」

「ですね大女神様、『理由』はもう知ってますよね?」

「ええ勿論、良く救ってくれました。二人は?」

「元気ですよ、人間世界を満喫してるみたいです」

「ふふっ……それだけじゃないでしょう?」

「そうですね……大切な存在です、それよりも……」

「新潟に現れている瘴鬼の事ですね?」

「はい、もし茉希ちゃんに害なす存在なら……叩き潰します!」

「大丈夫……渡辺茉希は、約束通り私が責任を持って守護していますよ」

「と言うか……此方へは被害は出ていません」

「あっそうなんですか? じゃあ駅周辺って事ですか?」

「そうですね……今彼処の土地は、混乱の渦中と言っていいでしょう」

「駅の改修工事とか?」

「そうです……建物などは、デタラメに建てている訳では無いのはご存知でしょう?」

「じゃあ……まさか……」

「嘆かわしい事です」

「じゃあ俺は介入しませんよ、良いですよね?」

「八神さんは充分過ぎる程に戦いました、守るべき者は有るでしょう?」

「ですね! それじゃ大女神様一緒にアイスでも食べに行きません?」

「あら? 宜しいのですか?」

「男一人じゃねちょっと……この間の分も奢りますから」

「少しお待ちを……鳥居の前で待ち合わせましょう」

「じゃあ待ってます!」

 本当に世話になったからな……大女神様は下越地方の大きな神社であれば、どこにでも同じ様に同一人物として存在する。何があったかはもう昔の話だ……鳥居の前で待っていると白いワンピースの美しい姿で現れた。

「それでは行きましょうか?」

「何でも注文して下さい、俺の奢りです!」

「それでは手を……」

 大女神様の手を取りジェラートショップ迄エスコートすると、道中のすれ違う人々が振り返る。まぁ美人だしな……残念な点を除けば……お店に入ると目を輝かせている、そうこの大女神様は甘い物に目がない。

「たまりません……この甘い香り! 八神さん早く座りましょう!」

 店内の客の注目を浴びながらテーブル席に着くと、パンケーキにパフェのビッグサイズを頼み始めた。

「あの……大女神様? そんなに食べれます?」

「何かしら八神さん?」

「何でもないです……」

 悔しいがこんな美女がビッグサイズを食べるとは……だが食べる姿さえ美しい。食後のコーヒーを飲み干すと、窓の外をぼんやり見ていた俺に。

「ごちそうさまでした八神さん」

「食べたんですね……少し海まで行きませんか?」

「構いませんが……どうしたのですか八神さん?」

「ちょっと歩きたいんですよ、海なんて……」

「行きましょうか、八神さん手を」

「ありがとうございます大女神様」

 


 大女神様の手を取ると海辺へと歩き始めた……

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