第20話ヒエと健の休日

 ヤエとの夜を過ごした日からもヒエと茉希ちゃんの態度は変わらなかった……良いのかな……俺はヤエが好きなんだし、いつかちゃんと話をしたいな3人で。


 さて休みの日になった、勿論行かない行くつもりもない。俺は休みの日の朝は弱い、ヒエに起こされると4人で朝食を食べる。

「今日は、俺ちょっと慈光寺に行ってくる」

「え〜一緒に周回するつもりだったのに!」

「ごめんなヒエ、帰って来たら周回手伝うから、俺も欲しい素材集めたいし」

「じゃあ一緒に行こうか私?」

「いや一人で行くよ、ヒエは家をよろしく」

「アタ……」

「茉希ちゃんは学校!」

「健……何か気になるの?」

「まぁ俺達の将来かな? 聞けたら大女神様に聞いて見たいんだ……」

 嘘じゃない、でも本当は……気になる件がある。確認しなければ! 食事が終わるとヒエが後片付けを始めて今日は、ヤエと茉希ちゃんが一緒に出かけていった、俺も続くと。

「じゃあヒエ後よろしく!」

「早く帰ってきてよね!」

「大丈夫! 行ってきます!」

 アパートを出ると巡回バスに乗り込み村松へと向かい、慈光寺行きのバスに乗り換えると見えて来た。慈光寺だ……バスを降りると参道へと向かい、手水舎で身を清めると境内へと向かう。ほう……神気を感じる、お待ちかねでしたかね? 本殿に着くと宮司の爺さんと久し振りの再会を喜ぶもんか……気色悪い!

「お久しぶりですな! 八神さん」

「ちょっと話がしたい人が居るんだけど良いかな?」

「えぇ良いですとも! 既にお待ちしてますよ……此方へどうぞ」

 奥の院へ案内されると、大女神様が待っていた。

「それではごゆっくり……」

 久し振りか……

「どーも大女神様! 聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

「貴方には聞く権利があります……どうぞ」

「この間新潟で化け物に襲われた、そして俺に神気が復活した、何でだ?」

「貴方の中で新しく出来た結晶と完全に同調してしまったのでしょう……折角人間に戻れたのに申し訳ありません」

「じゃあ次の質問だ、新潟に瘴鬼って言う化け物が現れている。何か知っている事は?」

「お気づきの様に五泉市と同じです……」

「だろうと思ったよ……」

「一応聞くけど、手を貸したほうがいいのか?」

「そのような強制力はありません、貴方次第です。新しい力をどうするか良く考えて下さい」

「まっ五泉の時は誰も……いや助けてくれる人は居たな、塚田さんに鷲尾さん。でも二人は五泉の人間だ……」

「そうですね……」

「あともう一つ確認だ、ちびっ子女神について何か知ってるか?」

「ノエですね、子供の姿という事は恐らく力の大半を無くしたのでしょう……」

「ふ~んノエちゃんね、気が向いたらね……」

「あっ! 肝心な事聞くの忘れてた!」

「何か?」

「俺とヤエ……結婚出来ますか? 出来れば子供も欲しいです」

「今のヤエは人間です、貴方が死ぬその時まで。ですから結婚したいと言うのなら祝福を授けましょう!」

「ありがとうございます! それじゃ帰りますねヒエが待ってるんで!」

「今度来るときは御土産持ってきてくださいね……」

「一応聞きますが何か御希望は?」

「洋菓子を……」

「日本の大女神様ですよね? 良いんですかそれで?」

「良いんです! それではヒエとヤエをどうか宜しく……」

 ふぅ、どっと疲れた大女神様意外と適当な所があるな……帰るか我が家へ


「ただいま〜ヒエ、周回やろうか!」

「おっかえり〜さっさとするよ!」

 ゲーム機を用意すると、やけにくっついて来る。

「ヒエ……ちょっと近いよ」

「良いじゃない……ヤエとはしたんでしょ?」

「言い方ね……気を付けて、後悔はしていないよ」

「じゃあ私も抱いてくれる?」

「はぁ!? 何いってんの?」

「私は本気よ、ヤエの許可も取ってる」

「そっか……」

「ちゃんと愛してね、私達を……健はどうせ死んでも一緒だから!」

「そうだな……愛してるよヒエの事」

「まっ今日は、周回よ! どんどん回すわよ!」

「周回も大事だけど、俺達の島もちゃんと作ろうぜ?」

「島作りは4人でやるのよ! その方が楽しいじゃない!」

 早速ゲームを開始すると、流石に上手いなヒエ……太刀使いとしては既にプロ級だ、俺は自分が死なないようにプレイするのがやっとだ。何周か回ると……

「ねぇ……喉乾かない?」

「暑いしな……ちょっとまってな、冷蔵庫に確かジュースが……」

 冷蔵庫には麦茶しかなかった、おかしいな確かに買い置きしてたジュースがあったはず……

「ヒエ様? 俺の買い置きしてたジュースは?」

「あっ! 私、麦茶でいいわ!」

 態度で丸わかりだよ、こいつ飲みやがったな……しょうがない、麦茶とコップを持って部屋に戻ると。

「これからどんどん暑くなるんでしょ?」

「あ〜ヒエ達は人間になったから感じるんだよな、でも大丈夫!」

「この部屋にはエアコンってものがあってな」

「えあこん?」

「ヒエには使い方教えておくよ、このリモコンだよ」

「冷房に除湿に暖房ね、うんわかった! 冷房入れてみていい?」

「押してみな」

 ピッ! っと音が鳴りエアコンから冷たい風が出ると。

「涼しい!」

「だろ? これで暑い夏も平気だよ、やったねヒエちゃん!」

「ちゃんって……茉希じゃないんだから、まっ良いわ、これで周回が捗るわね!」

「いや消すよ? まだ耐えられるし、もう一ヶ月位したらね」

 リモコンを取り上げようとすると、ヒエが

「嫌よ!」

「良いから良いから、ほら返して」

「ぜっったぃいぃぃに嫌よ!」

「良いからよこせ!」

 まったく駄々っ子か! 遂に取っ組み合いになるがしぶとい、さっさと返して欲しいがヒエにいつの間にか押さえ込まれた。

「ちょ……」

「ずるいわよヤエだけって……」

 ヒエからこんなにも甘い声は初めて聞いた、同時に濃厚なキスをされる。抵抗は許さないとばかりに全身を押し付けてきた、少しの間貪り合う。口を離すと糸をひいていた程に……ヒエの目が捲られたTシャツから見える腹の傷痕を見てしまった。

「これは……あの時の…………綺麗にしてあげるね」

「結構です! もうヤバい色々ヤバい! やめ……っつ」

 ヤエと同じ様に傷痕をヒエが舌でなぞる、ゾクリと背中に言い様の無い感覚がする。不味い……それ以上は……

「健……良いのよ……教えて…………」




 数時間後…………

「結構痛いのね……でも何だか幸せ……満たされるってこうなのね……」

「…………」

「大丈夫よ……私達には気を使わないで、ヤエは知ってるから」

「どう言う事?」

「私達は二人で1つの神だった、同じ男を愛して何か悪い?」

「俺はさ……3人で神の座に戻るまで……」

「人の身でなければ分からない事もあるのよ……」

「私達と健は結ばれて当然よ……今更離すと思う?」

「思わないよ、神核が一緒だもんね俺達」

「そうよ……今は、3人で一つの魂よ」

「前みたいに心が読まれないのは救いだね……」

「大丈夫よ、健は分かりやすいから……少し眠ってもいい? このままで」

「良いよ、ヤエが帰ってくる前に起こすから」

 起き上がろうとすると。

「だからこのまま! 健の腕の中で……」

「わかった、でも服ぐらい……」

「…………」

 寝ちゃったか、それよりも絶対に手を出さないつもりだったのに! 俺の馬鹿!

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