第19話異伝、違う地で…… その2

「なんじゃこりゃ!!」

「何だそれ!!」

 いや俺が驚くのも無理ない左腕が結晶化してしまっている。こんな力だったか? 殴っていいのかな? まぁ良いか瘴鬼だっけ? 攻撃を躱しながら、結晶と化した左腕を顔面に叩き込むとそのまま真っ二つに斬り裂いた。グロい! そして俺の左腕の結晶が神三角刀の形になっていた、あ〜こうなるのね……何かのアニメで見たな! 取り敢えず目の前の瘴鬼は消えたな。

「おい! 兄ちゃん仲間が居るな? 中か?」

「あっああ! まだ戦ってる連中も、瘴鬼も何匹も居るんだ助けてくれ!」

 この程度の大きさなら一撃で行けるな……最大出力だ! 左腕がまた結晶の塊になり神気を込める。

「おい、今から一発デカいのかますぞ! 他に大物は居ないんだな?」

「いなかった筈だ……」

「じゃあ下がって休んでろ」

「いっくぞ!!」

 立体駐車場の中に突撃し建物の中心点まで走り、神気を思いっきり地面に叩き付けると、凄まじい神気が噴き上がり邪悪な気配が吹き飛び。辺りを一気に浄化してしまった、俺の神気どうなって……あっ! それもそうか俺は女神と同格になってたんだっけ、でもまだ噴き上がってるんだけど……どうしよう。瘴鬼は完全に消滅しただろうし、もう帰ろうか……左腕を元に戻すと。赤い傘の女の子が微笑んでいた。

「ありがとう……おじさん」

「どういたしましてお嬢ちゃん、いや……この地の女神様か?」

「わかるの?」

「じゃなきゃ俺を呼ばないだろ?」

 駐車場の中から4人組が出て来た、さっきのやつと合わせて5人組か。

「すみません女神様……助けていただいて……」

「いえ私ではありません……こちらの……」

「自分達の土地は自分達で護れ! じゃあな!」

「おっおいオッサン! 待ってくれ!」

「早く帰らないと家族が待ってるんだよ、じゃ……」

「ヒエ様とヤエ様はおげんきですか?」

「ちょっとまて! ちびっ子女神、何で二人の名前が分かる?」

「私の先輩と言ったほうがりかい出来ますか?」

「序列あんのかよ……まっ悪いけど興味ない、今日は帰らせてもらう」

「せめてお話を……」

「明後日休みだから気が向いたら聞いてやるよ」

「わかりました……明後日、ここに居る全員でお待ちしております」

「来ないかもよ俺?」

「朝9時にあなたの会社のまえでお会いしましょう」

 5人組も何か言いたそうだが……

「気が向いたらな! じゃあな!」

 駅へと戻り、帰りの電車に乗り込むとスマホを見る。ヤッパリな……ヤエからの着信の山だ、アイツラに気付かれないようにしないとな……電車内なのでメールを送る。


 家に帰ると22時を過ぎていた、玄関を開けると3人が心配そうに迎えてくれた。

「おかえりなさい健……私、心配で……」

「本当にそうよ! ヤエがどれだけ心配してたか!」

「師匠駄目だよ……ヤエに心配させちゃ……」

「ごめんなクレーム処理の仕事がなかなか終わらなくってさ、ただいまヤエ……」

「良いの! 無事に帰って来てくれて、おかえり!」

「それじゃ晩御飯にしようか! ヤエ、茉希!」

「まだ食べてなかったのか?」

「私達は、家族じゃない……さあ上がって! すぐに温めるから」

 ヤエが支度をしている間、ヒエと茉希ちゃんにこっぴどく叱られた。

「良い! ちゃんとヤエにフォローしてあげて!」

「今日はヤエに譲るよ師匠、本当にヤエ心配してたんだから!」

「うん、わかった」

「おまたせ皆! いっぱい食べてね!」

「「「いただきます!!!」」」

 今日の夕飯はとても美味しかった、あんな事があったせいかとてもお腹が空いていた、ヤエの料理の腕はかなり上達したんじゃないだろうか? ヒエや茉希ちゃんとおかずの取り合いになる事もしばしあったぐらいだ。

 本当に帰る場所があって、待ってくれてる人がいるって事は幸せなんだな……守らなきゃな…………

 遅い夕飯が終わると、3人共既にお風呂を済ませたそうなので。後はヒエに任せて風呂に入る、風呂場で身体を洗い気付かれないように神気を解放してみる。左腕と心臓の辺りまで結晶化する事がわかった、何時こんな力が……思い返すと東京のホテルで見た幻覚を思い出す、まさか……腹の傷痕は消えていない……どういう事だ? 結晶化を戻すと風呂を出る、俺の部屋だった所にヤエが待っていた。ご丁寧にカーテンを閉めてまで……ヒエに茉希ちゃん……

「どうしたんだよヤエ?」

「健……今日ね私……凄く怖い予感がして、そうしたら遅くなるってメールが来て……」

 そう言えばヤエは探知能力や予知能力が優れていた女神様だった、人間になっても残っている力の残滓のようなものか?

「大丈夫だよヤエ……心配する様なこと何て無いよ……」

「嘘ついてない?」

「何かあっても俺が守るから、ねっ」

 上手く笑顔を作れだろうか? ヤエの表情が泣き出しそうだ……

「抱きしめてくれる? 震えが止まらないの……」

「良いよ、おいで……」

 ヤエを優しく抱きしめる。

「この腕の中が好き、安心する……」

「そっか……それで安心するのならいくらでも抱いてあげるよヤエ」

「それだけ?」

「えっ?」

「健……離さないで……今夜は……抱いてくれるよね?」

「…………」

「どうして黙るの? 私じゃいやなの?」

「二人が……」

 言うが前に口を塞がれ、ヤエが服を脱がそうとするが慌てて隠す。

「どうして隠すの? 私を見て」

 ヤエが寝間着を脱いで……綺麗な肌を見せていた、正直な感想を言えば抱きたい、愛する人を抱く喜びはかけがえのないものだ……だがそれには、この傷も晒す事になる……覚悟を決めるか……

「なぁヤエ……抱く前に見てほしいものがある」

「なに……」

 ヤエの声が艶っぽく俺を誘う、覚悟を決めてTシャツを脱いで傷痕をヤエに見せる。

「その傷って……」

「そう……自害した時の傷痕だ、何故か消えなかった……誰にも見られたくなくってさ」

「そうだったの……私達を救ってくれたあの時の……よく見せて……綺麗にしてあげるね」

 半裸のヤエの顔が傷痕に近づくと、熱い吐息がくすぐったい、突然ヤエの舌が傷口をなぞる。

「ッつ! ヤエ止めてくれ」

 黙って舌を這わせ続けるヤエ……我慢が……我慢し続けていると体内から激痛が……これってまさか……我慢してるからか? 試すか……

「ヤエこっち向いてくれ、この傷痕気にしないのか?」

「私達を助けてくれた貴方の痕よね、何も気にしない……むしろ私達との繋がりの証よ、だから嬉しい」

 ヤエの口を優しく塞ぐとそのまま押し倒す、肌けた寝間着が何ていうか煽情的に誘う。お互いに我慢が限界だった。


 その夜、ヤエは初めて満たされる痛みを知る事になり。


 俺の腕の中でヤエが眠っている、髪を撫でると俺も眠りについた……


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