33.交渉


「流石ですね、カナミ。いや、いまはキリストと名乗っているのでしたね」


 頭上からの声。

 ティーダのときと同じだ。僕は高いところの注意が薄い。特に、戦いに集中したあと、その悪癖が顕著に出ている気がする。


 僕が睨むような目で警戒していると、ラスティアラは酒場の屋根から飛び降りてくる。


「お久しぶりです。お待たせしましたか?」


 金の長髪を跳ねさせながら、僕に近づく。

 服は以前に襲撃してきた際と同じく、上質な布の服で軽装だ。


 違う点はただ一つ。その腰に銀の剣を下げていることである。


 僕とラスティアラの目が合う。

 相変わらず、同じ人間とは思えない目をしている。


「別に……。待っていませんよ」


 僕は毅然と言い返し、ラスティアラの深い黄金の瞳を直視し続ける。


 いまの僕は、初日とは違う。

 この世界にも慣れ、抗う力を身に付けてきている。

 以前に感じていたプレッシャーも、前ほどは感じない。


 僕は万全の構えのまま、彼女を『注視』する。



【ステータス】

 名前:ラスティアラ・フーズヤーズ HP670/689 MP312/315 クラス:英雄

 レベル15

 筋力11.01 体力10.56 技量6.78 速さ7.89 賢さ12.38 魔力8.78 素質4.00

 状態:なし

 先天スキル:武器戦闘2.12 剣術2.02 擬神の目1.00

       魔法戦闘2.27 血術5.00 神聖魔法1.03

 後天スキル:読書0.52 素体1.00


【天剣ノア】

 攻撃力7

 消耗率-99%



 以前は確認できなかったラスティアラの詳細が、頭の中に流れ込んでくる。


 レベル、スキル、武器。

 どれもが一級品。


 だが、許容範囲内だ。確かにレベル1の僕なら、ラスティアラは十倍ほどの強さだったことだろう。けれど、いまの僕ならば、十分に戦える相手だ。


「つれないですねー。私はこの日をずっと待っていたというのに」

「つれないって……。君のせいで、いま僕は酷い目に遭ってたんですけど……」

「でも、カナミにとっては、あのくらい大したことじゃないですよね?」

「あ、あのくらい……?」


 ラスティアラは人間最高クラスの決闘を、あのくらいと表現した。


「それよりも、その敬語。他人行儀はやめましょうよ。私たちは想い人同士ということになっているんですから」


 私たちの間にそんなものは必要ないと微笑むラスティアラ。

 そして、厚かましくも、堂々と、『ということになっている』と言い放った。


 僕は警戒を強める。

 その手前勝手な振る舞いに、何度も振り回されているのだ。


「それは構わない。僕だって、君みたいなやつに礼儀を払おうとは思わないから」

「ふふふ。レベルが上がったから強気ですね。……あぁ、私も敬語をやめないと。この仰々しい物言いは、カナミと話すのに相応しくないからね」

「最初に言っておく。僕は君の思い通りにはならない。襲われても、もう負ける気はしない」

「襲うなんて物騒な。いつだって私は善意と好意で接してるだけだよ?」

「その結果が、さっきのレイディアントさんってわけか?」

「ためになったでしょ?」


 何でもないようにラスティアラは喋り続ける。


 そこに僅かな動揺も見られない。あの決闘を大したことではないと、本気で思っているようだ。


 僕の酒場での立場。

 剣での決闘の危険性。

 騎士たちが抱くであろう僕への印象。

 こいつは、何も考えちゃいない。


「ためになるわけが――」

「身に覚えのない濡れ衣なら、根気良く説明すればよかったよね? けど、カナミは決闘を受けた。「『天上の七騎士このくらい』ならば、僕には敵わないだろう。腕だめしに丁度いい」って、そう思ったんじゃないの?」

「――っ!?」


 その黄金の瞳。

 スキルで言うところの『擬神の目』とやらが、僕を見透かしているのだろうか。

 少なからず、僕の考えを読み取っているのは間違いない。最近、目のスキル持ちばかりを相手にしている気がする。


 何ともやりにくい。

 純心無垢だったディアが懐かしくて仕方がない。


 ラスティアラは言葉を返さない僕を見て、一人で話を続けていく。


「まさしく、その通り。セラちゃんとあなたでは、モノが違う・・・・・んだよ。その身に宿す魂の密度が違う。レベル差なんて、あってないようなもの。それを私はあなたに教えたかったし、二人で共有もしたかった。丁度いいって思ったのは、私もってわけだよ」


 ラスティアラは頬を高潮させ、鼻腔を膨らませながら語る。

 その最中、彼女の両目は狂気で燦然と輝いていた。


 口調は段々と芝居がかっていき、彼女が自分に酔っていることが露になっていく。


「私とカナミは、生きているステージが高くて、物語のスポットライトが近い。世界に愛され、与えられ、恵まれている。私たちは選ばれた存在。直に私たちは孤独となり、その傍には、お互いしかいなくなってしまう――だから、手を取り合おうと、そう私は言っているの」


 ラスティアラは語り終え、僕に手を伸ばした。

 その狂気に呑まれないよう、しっかりと僕は言葉を紡がないといけない。


「……一理ある話かもしれない。けど、視野が狭い話だ。……それで、結局君は何がしたいんだよ?」

「あ、あれ? 反応薄いね。これでも結構考えた誘い文句だったんだけど」


 勢いに流されず悠然と答えた僕に、ラスティアラは首を傾げる。


「ほら。結局君は面白半分なんだよ。だから、僕もずっと話半分に聞いてる」

「んー、確かに半分が趣味なのは認めるよ……。けど、半分本気なのも信じてほしいな。私は本気でパートナーを探しているんだよ。簡単に言えば、あなたの迷宮探索に加えて欲しいんだよね。……私と仲間になってくれないかな?」

「嫌だ。断る」


 僕は深く考えず、脊髄反射で答えた。


「早いっ。えぇー、もう少し考えてよ。早すぎるよー」


 ラスティアラは慌てて両手をぶんぶんと振る。

 それを冷静に僕は処理していく。


「当たり前だろ? 君は得体が知れなさ過ぎる」

「最初から得体が知れてたら面白くないじゃんっ。こう、時間が進んでいくと共に、私の正体とかが見えてきたほうが面白そうじゃない?」

「いや、別に面白さとか、僕は求めてないから……」

「え? なら、なんで迷宮潜ってるの?」

「そりゃ……、帰るためだよ」


 辺りには誰も居ない。

 それでも誰かに聞かれているかもしれないので、『どこに』帰るとまでは言わない。だが、世界が二つあることを知っているであろうラスティアラなら、これで通じるはずだ。


「え、帰るんだ?」


 ラスティアラは意外そうに返事をする。


「当たり前だ。僕はそのことしか考えていない。あの日からずっと」

「へぇ……、ふーん。ならなおさら、私が必要になると思うけどな」


 ラスティアラの言いたいことはわかる。


 確かに、このラスティアラの協力を得られれば探索は楽になるだろう。ディアクラスの才能の上に、前衛向きの能力。正直、喉から手が出るほど欲しい。


 そんなラスティアラの価値を認識してしまうと、自然と僕の言葉は柔らかくなってしまう。


「確かに、君が味方になれば心強いだろうけど……僕は君の事を知らなすぎる。少なくとも利害が一致していることを確認しないと無理だ」

「利害かぁ……。一致しているとは思うよ?」

「なら、教えろ。君の目的は何だ?」


 ラスティアラの目的。

 初日、僕の身体を治したこと。

 わざわざ夜中に襲撃し、強制的にレベルアップさせたこと。

 『天上の七騎士セレスティアル・ナイツ』に僕を追わせていること。

 レイディアントという騎士と決闘させ、自分を売り込んだこと。


 それらの理由がわからなければ、僕は一生ラスティアラを敵だと認識するだろう。


 その僕のこれだけは引けないという意思が伝わったのか、ラスティアラは違った表情を見せ、ぽつりと言葉を落とした。


「目的は一つだけ。――してみたいんだよ。冒険・・


 その目は相変わらず、真っ直ぐに狂っていた。だが、いままでとは違い、そこには人間らしい憧れのようなものを感じる。


「冒険をしたい?」

「うん、心躍る冒険をね。できれば、仲間ってやつと一緒に迷宮を楽しみたいんだ。あぁ、仲間って言っても、私を特別扱いしない人とでないと駄目だよ? あと、私についてこられる人でもないと駄目。これ重要ね」

「確かに、その条件に僕は当てはまるけど……」

「私はずっと退屈だったんだ……。生まれてからずっと籠の中。刺激も何もない。ただただ与えられるだけの牢獄。だから、英雄譚、冒険譚、それに登場する人たちが妬ましかった。自分の意思で、失ったり、手に入れたりする人生が羨ましかった。――羨ましくて仕方がなかったんだよ」


 ラスティアラは止め処ない感情のままに語る。

 明らかで、わかりやすい。

 稚拙で純真な羨望のままの、心の叫びに聞こえる。


 まるで子供の癇癪のようだと、その情念に偽りはないと、感じてしまう。

 そして、それが誰か・・に似ていると思った。


「……君の考えは、大体わかったよ」

「わかったなら、責任を取って欲しいんだけど。君みたいに愉快なやつと出会うまでは、私は私を抑えられていたんだよ? なのに、スキル『異邦人』なんてものを持って、レベル1で満身創痍、ギリギリの極限状態で、たった一人で迷宮探索――そんな羨ましいやつがいたせいで、私は私を抑えきれなくなったの。どこの話の主人公が、これからどんな冒険をするつもりなのか、気になって気になって仕方がなかった。だから、混ぜて欲しいんだ。お願いだから……」


 最初は要望で、最後は懇願になっていた。

 まるで姿勢が一貫していない。一秒ごとにラスティアラの感情は揺れ動いているのが丸見えだった。


 会話をすればするほど、ラスティアラという人物の不安定さが露見していく。

 恐ろしいまでに不安定。いつ崩れてもおかしくないトランプタワーのようなやつだ。


 成熟した身体とレベルに見合わない、未熟な精神。

 話から察するに、典型的な箱入り娘だったのが原因なのだろう。

 そのギャップが、蟻を潰して遊ぶ子供のような印象を他人に与えるのだ。


「……はあ。君がとても幼稚なやつだということは、よくわかったよ」

「私は真剣なんだよ、カナミ。そっちの『帰る』という目的に手を貸すから、私の夢にも手を貸して欲しいの。お願い」


 僕の率直な感想を聞いて、ラスティアラは憤慨して、真剣な表情で交渉を続ける。

 その様子から、彼女も年相応であることを確認する。


 依然としてラスティアラが危険を孕んでいるのは確かだ。しかし、それが正体不明でなければ使い方は見出せる。交渉内容も悪くはない。

 ラスティアラの幼稚なところさえを上手くコントロールできれば、彼女ほどの逸材はいないのは事実なのだ。


 それどころか、彼女を逃してしまうと、そのメリット以上の大きなデメリットが発生する。僕の情報を持っている彼女を逃がしてしまえば、その情報が漏洩する可能性が常に付きまとうのだ。それならば、目の届くところで監視するのが適切というのもある。


 僕は少ない時間の中で、素早く損得を勘定していく。

 そして、ゆっくりと、言葉を選ぶ。


「……そうだな。僕は協力者ならいつでも歓迎してる。様子見でパーティーを組むくらいなら――」

「やった、ありがとう!」


 言い終わる前に、ラスティアラは喜び勇んで僕の手を握った。

 僕は成すがままにされながら、パーティーの条件を提示していく。


「だが、おかしな真似をしたら、すぐに叩きのめす。君を動けなくして、パーティーから追い出す」


 コントロールできないと判断したら、即口封じ。

 これだけは心に決めないといけない。

 ただ、口封じといっても、僕にどこまでのことができるか甚だ疑問ではあるが。


「いいよいいよ。私はカナミと迷宮で遊びたいだけだからね。変なことはしないよ」

「あと、レイディアントさんたちの誤解は解いてくれ」

「え? うーん、あれは続行でいこうよ。恋人って設定だと、追っ手が少ないと思うんだよね。あの人たち、恋愛を神聖視しまくっているから、こっちのほうが都合がいいんだよ」


 恋愛を神聖視?

 確かに、愛は尊いものだとは僕も思う。けど、この世界に似つかわしくない考え方だとも思ってしまう。


 ……考えても仕方がないことだ。

 いま重要なのはそこではない。

 重要なのは追っ手についてだ。


「待て。なら、君んちの追っ手は必ずセットでついてくるのか?」

「私というものをゲットしながら、練習相手もついてくるっ! カナミ、これはいい買い物じゃない!?」


 ついてくるようだ。

 確かに、いまとなっては、あの程度の相手は練習相手と評さざるを得ない。


 多少、ラスティアラに乗せられている気はするが、物は試しだ。

 いざとなれば、全てを放り出してもいい。


 なにより、騎士との決闘は本当に勉強になる。

 強すぎもせず弱すぎもせず、それでいて技量は豊富。ルールに守られているから、殺気もない。レイディアントさんとの一戦では短期決戦を選んだが、場合によっては、じっくりと敵の技を観察してもいい。


「はあ……。まあいいか……」

「よし! いま頷いた! 確かに頷いた!! あとで駄目って言っても駄目だからねっ!!」


 僕が曖昧に頷いたのを見て、ラスティアラはここぞとばかりに手を強く握って振り回す。



【パーティーにラスティアラ・フーズヤーズが参加します】

 パーティーリーダーは相川渦波です



 そして、ここでパーティー参加の『表示』が視界に出現する。

 何となく使ってきたパーティーシステムだが、先ほどの会話でパーティー参加の条件を満たしたようだ。


 細かいことは試さないとわからないが、とりあえず、お互いが口に出して仲間になることを了承すればいいみたいだ。


 ――これで僕のパーティーは四人。


 この二日で二人も増えてしまった。

 たぶん、増えて悪いものでもないから、いいだろう……。たぶん……。


「それじゃあ、カナミの拠点に行こっか。いやぁ、明日からの冒険が楽しみだよー」

「待て、まてまて。このまま僕の家までついてくる気か?」

「そうだよ?」


 ラスティアラは当然のように微笑んで答える。

 その微笑みは、女の子らしさに満ちていた。それはディアのように中性的でもなく、マリアのように幼いものでもない。僕と背が同じくらいの、同年代の女の子だ。意識しないはずがない。


「ちょ、ちょっと待て……! 考えさせてくれ……!」


 僕は慌てて制止をかけた。


 ラスティアラは僕の家を拠点にするつもりだ。

 この世界のパーティー同士の付き合い方なんてものは知らないが、寝所を共にするというのはよくあることなのだろうか? お金のない駆け出しの探索者ならば、節約ということで納得できる話だ。仲間となった以上、協力し合うのはやぶさかではない――が、お金に余裕があるのならば別々のところに泊まるのが自然の流れじゃないのか?


 というか、口では仲間になるとは言ったが、できるだけ平時は遠ざけたい。

 彼女はマリアのような弱者・・ではないのだ。


「カナミ、まだ?」

「いや、ちょっと面食らっただけだ……。けど、僕の家に泊まるのはやめてくれないか? この世界ではどうか知らないけど、僕の世界では年の近い男女が同じ屋根の下で寝るというのは、少し恥ずかしいことなんだ。別々のところで泊まろう。お金はあるんだろう?」

「私はこの世界のこともカナミの世界のこともよく知らないからよくわからないけど……本では、仲間同士はいつも同じ宿に泊まっていたよ? 私はそのほうが楽しそうだと思うし、お金だって無限じゃない。節約できるときに節約しないと。そう私は思うな」


 ラスティアラも冒険者の常識は知らないようだ。

 ただ、読んでいた本から、ある程度のことは学んでいるようだ。この世界の冒険譚でそうなっているのならば、この世界の冒険者達はそうしているのだろう。


 節約できるときに節約する。

 僕の価値観でも、それは同意だ。


「そ、そうなのか……。なら、そういうものなのかな……?」


 以前、寝込みを襲われたとき、命まではとられてはいない。

 だから、僕が寝ている間に、ラスティアラの手によって殺されるような心配はないと思う。


 ならば、寝所を貸すくらい大丈夫かもしれない。


 あとは僕の気恥ずかしさとの問題だ。

 ラスティアラという美少女が近い・・という問題。

 男として嬉しいのも確かだが、そういった感情がいまの僕には無駄だということも確かなのだ。


「そんなに悩むことかなあ……? もっと軽く考えてもいいんじゃない……?」


 悶々と考え続けている僕を見かねて、ラスティアラは口を挟む。


「……わかった。ついてくればいい。部屋は多いしな」

「え、部屋は多い? 宿じゃないんだ?」

「ああ、家がある。つい先日、手に入った」

「へぇ、それはラッキーだけど。冒険譚に出てくるような、ぼっろい宿も楽しみだったんだけどなぁ。前にカナミが泊まっていたところみたいなやつ」

「前って初日のところか。あれでも高い宿だったんだぞ」

「ほーう。ということは、アレ以上におんぼろで狭い宿もあるってことかな。楽しそうだね」


 ラスティアラは貧困した生活に憧れを持っているようだ。本当に貧困で苦しんでいる人が聞けば、怒り狂うこと間違いないだろう。こういう無神経さが、ラスティアラの欠点だ。


 こうして、僕たちは話も済んだので、家に帰る支度を始める。


「ああ。最後に、僕をカナミと呼ぶのはやめてくれ。ここではキリスト・ユーラシアって名乗っている」

「ふうん。わかったよ、キリスト。……ちなみに、その名前、どういう意味なの?」

「僕の世界の有名な教えと大陸の名前だ。知っている人が聞けば、すごくびっくりする」

「なるほど、同郷の人を探すのに都合がいいわけだね。ふふっ、偶然にしても面白いな。私とおんなじだ」

「そういえば、君の姓は国名フーズヤーズだったっけ。国の名前ってことは、王家の血でも入ってるのか? それだと、ちょっと嫌だな」

「うーん。確かにその通りだけど、この連合国では珍しくもないよ。百を超える権力者と貴族たちが、王を名乗っているからね。この連合国は、たくさんの王で政を決めているんだ。昔、馬鹿みたいに小国を取り込んでいった名残だね」

「へぇ……。この世界のことは知らないから面白いな」

「当時の大国フーズヤーズの主導者がとんでもない馬鹿で、面白いんだ。私の好きな英雄譚の一つだよ。国を盗ったあと、王を名乗るものを殺さず、逆に讃える。それで何度も失敗するけど、その主導者は絶対にあきらめない。人々を笑顔にすることだけを願いに、何十年も戦い続けるんだ。それで――」


 英雄の話を始めたラスティアラは楽しそうだった。

 その話を聞きながら、僕は家路を歩きだす。


 隣でラスティアラは飽きもせずに話し続ける。

 この世界の歴史を学ぶのは悪くないと思い、僕はラスティアラの話を延々と聞き続けた。


 そして、帰ったあとのことを考える。

 家にはマリアが待っている。


 四人パーティーになったものの、ディア、マリア、ラスティアラ――それぞれが僕との二人パーティーだと思っている。

 少しややこしいことになったので、それぞれにどう説明しようかと考えて、すぐにやめる。


 どうせ、軽く自己紹介をし合って終わりだろう。

 大したことでもない。

 僕は何の気負いもなく、マリアの待つ家に歩を進めた。


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