感情を知らない女3

 中学を卒業するタイミングで、私達家族は隣の県に引っ越しをした。引っ越しをしたのは、私が原因であると、後に両親から聞いた。私の虐めに合う環境を変える為に、引っ越しをしたのだそうだ。その結果、中学生の同級生が誰もいない高校に、私は入学した。私が虐めを受けていた事を知る者が、誰もいなくなったのだ。

 高校生になった私の下駄箱には、毎日手紙がたくさん入っていた。

 好き、愛してる、付き合ってください。

 全て私に当てられたら言葉が、手紙には綴られていた。

 これが俗にいう、ラブレターなのだろう。

 私の顔は普通ではない。

 それを教えてくれたのは、高校一年の時に同じクラスメートになった、榊原茜だ。

 榊原茜は私と出会った初日に、友達になって欲しいと言ってきた。

 私は友達という言葉も意味も知っている。しかし、何故に友達にならなければいけないのか、私には分からなかった。だから私は断った。しかし、榊原茜は毎日友達になりたいと言ってきた。

 私は友達というものを学習する為、榊原茜と友達になった。

 その榊原茜が、私の顔は美し過ぎると言ったのだ。

 人間に生まれたのならば、女は美しい方が子孫を残せる可能性が上がるだろう。

 私は子孫を残したいとは微塵も思わない。しかし、私は学習する為に、手紙を渡してきた男と性交渉を行ってみた。

 痛い。

 性交渉は、ただただ痛いものだった。

 性交渉を終えた男は笑顔を作り、私に抱き付いてきた。

 男が女に抱き付くのは、愛しいからだ。私はそれを知っている。男は私を愛していたのだ。

 愛というものを学習する為、私は男を抱き締め返した。

 苦しかった。愛とは苦しいものだ。

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