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わたしはおりたホームのベンチに座り、青い屋根、白い壁や白い道の街が眼下につづいているのを涙でにじんだ目でぼんやりみていた。灰色の空模様が憎らしかった。青空なら青い空と少し先の青い海も合わせてこの街を完璧にみせただろう。
腰を上げる気力もわかないまま座り続けていると、横から人の声が聞こえてきた。目をこすり顔を声の方に向けると自動販売機の陰から、長い白衣を着て細いフレームの丸い眼鏡をかけた男の人が、携帯電話を耳にあてて出てきた。
その人の電話の内容はまるでわたしに向けられているかのようで、わたしをゆっくり諭していった。
恥ずかしいという心のブレーキのかかるシチュエーションの違いは、わたしたちの価値観の違いを大きくさせたこと。自己愛による自己都合の優先や他者を見下し攻撃する心理。
ここから見える街灯が2,3回点滅してからつくと、街路樹の色を変えた。
これで終わりだ、とわたしにささやく。
そして、次に来た電車にフル回転しだした頭と乗り込んだ。
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愁太はわたしの両親の前でわたしのできないことや悪いところを意気揚々と並べ挙げ、それを聞かされる両親の顔色には気を配らなかった。
わたしは、大人になれていない自分の無力さに泣いた。
荷物を引き取りに戻った部屋には、2人で過ごした空気はもうただよっていなかった。わたしたちはまだ、たった1ヶ月でお互いの存在を消しあえる仲だった。
わたしたちの最後の部屋は、マンションの角部屋で2人で住むには広めの3LDKだった。東向きの大きな窓は朝早くからたっぷり光が入ったが、昼過ぎにはほとんどの部屋が暗くなった。ダイニング、リビングとふすまで隔てただけの和室に人の気配がどの部屋にいてもあり、広いわりには完全な個室をつくるのは難しい間取りだった。「いつか子どもができたら」とわたしたちは未来しか見ていなかった。
部屋は、住人同士の関係性や習慣も変えてしまう。今までいくつかの彼と過ごした部屋に居心地がよかった記憶は、一度もなかった。
とにかく2,3時間でつめこむ夜逃げのような引っ越しは、軽トラ1台に積まれたわたしの荷物のほとんどが、誰かがわたしのために選んでくれたものだったんだと思い知らせた。なぜなら、わたしが教えなくても両親はまちがえることなく私の荷物だけをつめこめたからだ。
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