第21話
落ち着かない。
そわそわする。
「こら、首元を緩めようとするな」
カンザキが俺の手を取った。
無意識でネクタイを緩めようとしていたらしい。
「慣れねぇんだからしょーがねぇだろ…それに俺に似合いの正装っつったらさ、やっぱ冒険者装備だと思うんですよ」
カンザキと揃いのスーツは嬉しい。
けど似合わなすぎて辛い。
黒のスーツとか、カンザキにしか似合わないだろ。
しかもベスト付ですよ?
俺にはレベルが高い。
「お似合いですよ、古壱さん」
「白浜…やっぱ俺がセレモニー出る必要性さぁ」
「僕の為ではないのです」
「え」
「神崎の虫よけです」
「…ちょ、詳しくっ」
「お話しましょう…それはダンジョンコアを古壱さんが」
「二人とも、無駄話はそこまでです」
「なんだよ!聞きたい!」
カンザキは俺のじゃんっ。
つまり俺のだって主張が必要なほど何処かの誰かに望まれているということじゃんっ。
そいつはぁ聞き捨てらんねぇ。
「俺は古壱の恋人。それ以上でもそれ以下でもない。以上だ」
キッパリ宣言され、ぐうの音も出せなくなる。
「…ふげ…カンザキのそーゆーとこですぞ」
「なんだ、何が問題なんだ」
カンザキが腰に腕を回しぐっと抱き寄せる。
顔、近い。
ひぇ、恥ずかしい。
「…僕、最終確認してきますぅ」
「あ、白浜、ひとりにしないでっ」
白浜が空気を読んで先に行ってしまった。
俺達も追い掛けないといけないのだが、カンザキがぎゅうして動かない。
黒い猛禽類みたいで負けそうだ。
地上じゃ俺のほうが弱いのだ。
…いや、ダンジョンに潜ったことあるって聞いたので、地上でもってなるかも。
つよいかんざきだいちゅき…。
「古壱」
「はい…」
カンザキがするする俺の頭を撫でて、襟を整え、頬に手を添える。
そーゆートコなんだよ、カンザキっ。
「今日も、頼りにしているぞ」
ちゅうって、額にキスされる。
ぐわぐわって滾った。
めっちゃ熱い気合が全身駆け巡った。
だって頼られるって、独りじゃないじゃん。
もう、独りじゃ、ない。
それを実感する。
その他が気にならなくなった。
「おう、任せとけ」
自分でも分かるくらい顔を真っ赤にさせ、俺は笑顔で応えた。
カンザキも笑顔で頷いてくれた。
そうして二人で、白浜の後を追う。
穂高の大迷宮の新ダンジョンマスターを、護るために。
勇者はダンジョンで夢を見るのか 狐照 @foxteria
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