第17話

いつの間にかイルミネーションの灯り消えていた。

真っ暗な中、抱き締めあってる。

けど、俺の頼りない左腕がついに悲鳴を上げた。

ずるっと右腕が力なく降りる。

ついでに両足もガクガクしてくる。


「かんざき…ちょ、休憩…したい…」


「…ああ…いいとも」


毒の闇に魔力を使った影響で疲労感がすごい。

カンザキがそんなふらふらな俺を解放し、今度は優しく支えてくれた。

胸に凭れる俺を左腕一本で支えるとか、もう悔しみも感じません。

自然と膨れた頬を、左手が撫でる。

なんとなく、見つめ合う。

暗いがこれだけ顔が近ければ、どんな顔してるか分かる。

いやってほど、優しい険のない目だった。

虜になって見つめていると、ふいに親指が唇をなぞってくる。

くすぐったくて身を捩る。

カンザキが微笑を浮かべ、キスしてくれた。

唇の全体を優しく押し付けるだけの、キスだった。


あ、どうしよ。

溶けそう。


「…さっきと違う…」


とろっと半溶け気味にさっきのと比較してしまった。

だって違いすぎるんだもん。

歯、溶けてない?


「…古壱を、如何しても繋ぎ止めたかったんだ…すまない…無理矢理奪ってしまった」


苦しそうなシワが眉間に寄って、俺はカンザキがずっと辛かったことを思い知る。


俺はずっとモンスターだと思って接していた。

名前なんて呼ばずお前とか、モンスとか言った。

終わらせてくれとばかり要求した。

自決しようともした。

酷い錯乱状態だった。

なのに、俺を、なんとかしようとし続けてくれた。


「もっかい、してくれたら許す」


はじめてのキスがあれで、正直ショックではあった。

けど、俺がカンザキにした狂気の行動を思えば、むしろ俺の方が旗色が悪い。

だから、もっかい。

はじめてみたいな優しいのをして欲しい。

そう願い、俺は目を閉じた。


「…ありがとう、古壱…」


お礼を言うのべきなのは俺のほう。

思わず言いかけた俺の唇を、カンザキの唇が塞いだ。

優しく触れるだけ。

じわじわ、熱が伝わってくる。

口の端から端まで触れ合わせる。

薄く目を開けると、カンザキがふにゃって微笑んでた。

俺もつられ笑ってしまい、僅かに開いた唇を甘く唇で食まれた。


「んむ…ちゅっ…んぅ…」


それが気持ち良くてしばらくして貰ってから、俺もお返しにカンザキの上唇をあむあむした。

めっちゃくちゃ楽しいし気持ち良い。

カンザキが嬉しそうにふふふって笑ってくれた。


「ん…っ…ぁ…んっ…」


舌が出てきて、唇と唇の間を舐められる。

ぞわってしたから舐め返す。

すると仕返しされて、やり返してを繰り返す。

口と舌を必死に動かし、俺は夢中で唇貪った。

カンザキは俺を優しく抱き締め、奪って与えて混ぜて舐ってくる。

粘膜を擦り合わせるようにして、柔らかな部分を深くしつこく攻め合った。


すっげぇ、気持ち良い。

歯、溶けてる。


「…はぁ…はぁ…」


息を整えたくて顔を離す。

カンザキが熱に浮かされた顔して俺を見つめてる。

俺、変な顔してないかな。


「カンザキ…ここで、する…の?」


聞いたのは、キスだけでチンコ勃ってて辛いからだ。

ここでおあずけは、キツすぎて泣く。


カンザキが額と頬にキスしながら耳元で囁いた。


「ああ…一刻でも早く、古壱を抱き繋ぎ止めたい」


「そ、いうこと…いうなよ…も…」


低い声が骨髄まで届き、俺は腰が抜けた。

カンザキの低い声好きなの知ってての所業か、このっ。

恨みがましく睨み、俺は噛みつくようにカンザキにしがみつこうとした。

結果はぺちょって頭寄せた感じになった。

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