第14話
みせたいものがある。
そう言って、カンザキの姿をした個体が握った手を引き俺を立たせ車へ乗せた。
気付いたら夕方になってた。
オレンジ色の太陽が眩しくて、アンデッドじゃなくて良かったって思って浴びて目を細めた。
風が涼しい。
車は屋根もないまま何処かへ向かう。
なんとなく、眠くなってくる。
それを察したのか「…寝てていいぞ」カンザキの姿をした個体が素っ気なくそう言った。
楽しいのかつまんないのか怒ってるのか。
そもそも何処で終わりなのか。
次で終わりなのか。
俺は言われたままに目を閉ざした。
このまま目覚めなくても良いって、思って。
「古壱」
「…んぁ…あれ…まだおわってない…」
「終わってなくて、悪かったな…もう少しだけ付き合ってくれ」
「ん」
まだ、この、カンザキの姿をした個体とやりとりしなきゃなんないのだと知って、気持ち良く眠ってた俺は興ざめした。
アガってたデートへの熱がどんどん冷めてく。
もういいって。
海で終わりで、良かったって。
「で、ここ何処だよ」
「もう、少しだけ、待ってくれ」
「ん」
辺りは真っ暗だった。
辛うじて川が流れているのが分かった。
これは、海の匂いも混ざっている?
眠っていたし、俺は地上の地理に異様に疎いので、所在地は要として不明だ。
助手席に凭れたまま、黙って時間経過に耐えた。
俺から感じて左側に、緑が茂っているのを感じた。
で右側に川、それを挟んでなにか建造物がある気がする。
風は冷たい。
ちょっと寒い。
暗いし寒いとか、ダンジョン思い出すんですけど。
あ、ここダンジョンでした。
冷えた右肩を左手でさすり耐える。
「…はじまった…」
「なにが…あ…わぁ…!」
右側から強烈な光感じ見たら、大変なことになっていた。
開いた口が塞がらない。
目の中に、収まりきらない。
人工的な、川を挟んだ向こう側。
お洒落なビルといかつい工場とが立ち並ぶ。
そのどれもが、キラキラピカピカ輝いてる。
まるでクリスマスのイルミネーションだ。
それがずーっとずっと、一直線に続いてる。
「…少し、走るか?」
「!おう!出せ出せっ!」
「…三歳児」
「うるせぇ冷血漢っ!」
「難しい言葉をよく知ってるな、飴をやろう」
「飴おじさんコワイ来ないでー」
「大人子供は可哀想だな」
「俺お前より年上だかんな?!」
「歳の話を持ちだしたら、終わりだと何度も言ったはずだが」
「わすれましたーお前との会話なんておぼえてませんー」
「かわいそうに…記憶が三歩しかもたないとは…」
「俺はハトかっ!」
はははは、カンザキの姿をした個体が笑った。
今日一番の笑顔が人口灯で映し出され綺麗だった。
この笑顔、見れてたか。
まじか。
視界が滲む。
俺は誤魔化すように笑った。
「飛ばせ飛ばせー!」
「残念ながらこの道はすぐに行き止まりだ」
「…とばせとばせー!」
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