第8話
俺はダンジョン潜りをする者だった。
けど止めた。
引退した。
引退した、というよりも。
金の亡者共に嫌気がさして、隠居した、が正しい。
ダンジョン潜りには危険が伴う。
ひとりで活動するのも限界が起きる。
そうなると支援者が必要だ。
それが無いといけないと、若い頃の俺はそう言われ、契約したのが後の祭りだ。
ダンジョンの恐ろしさを知らない人間が、ぐちぐち口を出して来るようになった。
五月蠅かった。
潜らないのに偉そうに、持ち帰って来た物にケチをつける。
文句を言う。
取り合う。
争う。
ひとりで戦える俺を置き去りにして。
俺は、ただ、穂高の大迷宮で過剰に強くなったモンスターを斃しアイテムを得て、地上で平和に生きてくために稼ぎたかっただけなのに。
身動きが取れなくなる。
ダンジョンより地上の方が生きづらかった。
だから、俺は、止めた。
なのに。
モンスターが溢れかえった。
金の亡者が群がったことにより、ダンジョン潜りが弱くなったのだ。
モンスターを斃すより、アイテムを入手するを重きに置いた所為だ。
モンスターと戦うことを避け、斃さず年長にさせてしまった結果、彼らは強者に変異していく。
そんなの基本知識なのに、忘れたふりした所為で、穂高の大迷宮から恐ろしいモンスターが出現しまくった。
だから、俺が、探された。
俺が、呼び戻された。
無視しても良かった。
放置しても良かった。
ダンジョンの恐ろしさをみんな学べば良いって、思った。
だけど。
隠居する時に手伝ってくれたじーさんが。
穂高のじーさんが。
頭を下げて来たから。
白浜のじーさんが、孫を守りたいと言うから。
俺は、条件を提示した。
ダンジョンコアを持って帰って来る。
穂高の大迷宮をコントロールしろ。
ダンジョンマスターと成れ。
穂高のじーさんは、その条件を飲んでくれた。
だから、俺は、独りでダンジョンに、潜った。
独りでなんて何も出来ない。
金の亡者が叫んだ。
独りで出来る、俺は応えた。
本当は独りで出来た。
それをお前らが、出来なくさせた。
それを証明する。
その為にも、俺は、独りを選択した。
なのに。
俺は今、モンスターに捕まって、脳内デートするよ。
弱くなったな、俺。
ごめんな、穂高のじーさん。
やっぱ、独りは、寂しいよ。
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