70日目

その日、朝から生き物は家の荷物を片付けていた。

谷の底から出るという生き物の長年の夢がやっと叶う。

呑気に水を舐めている猫をひと撫でして、生き物はリュックに必要なものをボンボン大雑把に詰め込んだ。

応急薬、救急セット、寒かった時用のスカーフに、タオル、非常食、着火セット、水も……必要だろうか?

精査しているようで、していない生き物はドンドンカバンに詰め込んでいく。

そろそろ底が破れそうだ。

そんな目に見えてはしゃいでいる生き物を見て、猫は大きく欠伸を一つ零し、体を伸ばした。


膨らむ期待を抑えきれず尻尾と耳を揺らし、ステップを踏みながら生き物は、まだまだリュックに詰め込むことにした。

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