58日目

生き物と犬の奇妙な生活が始まって暫く経った。


今日も生き物は、犬のふかふかした腹に顔を埋めて呼吸している。

所謂、犬吸いである。

犬は遊んでもらえるのか?と暫くバタバタしていたが、一向に動かない生き物を見て、したかなさそうに尻尾を下げた。

釣られて下がる耳と耳の間、狭い狭い額を生き物のモフモフした手がゆっくりと撫でる。

機嫌を取ろうとしているようだ。

午後の温かい日差しと犬の柔らかな毛と体温でまどろむ生き物は、目を細めながら犬を宥めている。

今にも夢の世界に旅立ってしまいそうな相棒を見て、犬は小さく「くぅーん」と鳴いた。

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