50日目

生き物の生活を観測し始めて、50日が経過した。


今日も生き物の生活は変わらない。

好きな時間に起きて、文字が読めているのかは分からないが好きな本を読んで、好きなものを食べて、好きなことをする。

柔らかい草の上に転がったり、美味しい水を飲んだり、鉱石を掘ったりして生活している。

時々やってくるドラゴンやユニコーン、猫に生活を乱されることもあるが、生き物はそれも楽しんでいた。


今日はふかふかの青草の上を、転がりながら生き物は空を眺めていた。

深い谷の底からは上空の青空は、殆ど目視することはできない。

谷の隙間から差し込む太陽光が鉱石に当たって乱反射し、谷全体を明るく照らしている。

生き物は眩しそうに眉間を寄せて黒い瞳で空を見る。


谷の壁は高く、高く険しい。

生き物の身体能力では登りきることは困難だ。

だが、生き物にはどうしても諦められない夢がある。


そう、谷の底以外の景色を見てみたいのだ。

地上の景色を見て、広がる青い空を目に焼き付けたい。

遠く、遠く、遥か彼方にある空に広がるという星空を眺めてみたい。

その夢が捨てられずに今まで生きてきた。


生き物は今日も谷を上がる方法を考えている。

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