第2話『王達の宴』
「おはよ。目が覚めたみたいだね」
聞き覚えがある声がして、俺は顔を上げた。暗がりの中を目を凝らして見ると、そこに居たのは黒色のパーカーを着た青髪の美少女だった。彼女は壁にも
「ここは……。何処だ?そもそも、俺一体何をして――」
「あれ?僕のこと忘れちゃった?僕だよ僕、レギナだよ」
レギナ、何処か引っかかるその単語の正体を探ろうと、俺は記憶を探った。確か、俺は自宅に帰って、ドアポストを覗いて、そしてそれから――
「――!?そうだ、思い出した。俺は、確かお前に殺されて……。でも、なんで生きているんだ?」
あの地獄のような苦しみ、たしかに俺は死んだはずだった。それとも、ギリギリで生きていたのだろうか。試しに傷があった場所を触ってみたが、特に何も無かった。服を
「ふふっ。驚いた?死者蘇生ってやつ?最近の文明の利器は本当にすごいよねぇ」
レギナはおどけた口調でそう言った。やはり、その態度には掴み所がなく、まるで雲のようであった。
「さてと、最後の一人も無事目覚めたところだし、早速始めますか」
レギナはそう呟いた後、そそくさと俺の前から消えていった。周囲が暗いせいで周りの状況が掴めずにいる。一体、これから何が起こるというだろうか。唯一分かることは、さっきから人の気配を感じるということだ。それも、一人や二人ではない。もっともっと大勢の人の気配が、俺の周りを取り囲んでいた。
その時だった。突然パッと周囲が明るくなったかと思えば、俺の予想を遥かに凌駕する程の数の、老若男女問わず多種多様な人々がそこには居た。恐らく数千人は下らないだろう。皆俺がそうしたように、この状況を目の当りにして唖然としていた。
「何なんだよこれは――」
俺は周囲を見渡した。まるで体育館のようなだだっ広いホール、そこに俺と同じような状況の人々が、状況を理解出来ずにいるようだった。強いているならこの状況は、まるで何かのパーティーやゲーム、イベントなどの開始前のようであった。
「あーあー。マイクテスト、マイクテスト。よし、とりあえずは大丈夫そうだね」
何処からか流れたすっかり聞きなれた少女の声に、俺は自然と身構えていた。だが、それは他の人々は必ずしもそうである訳ではなかった。
「ふふっ。みんな、一体これはどういうこと!?って心境だね。うんうん分かるよ。僕が同じような状況だったら、絶対にそう思っちゃうもん。けど、安心して。なにもみんなに害を及ぼそうって訳じゃないんだ。
「選ばれた……。まさか、あの手紙が――!?」
思えば、タイミングが良すぎたのだ。何故、あの手紙が俺の元へ届いた日に、レギナ俺の家にいたのか。盲点だった。まさかアレが本物だったなんて。
「何人かはもう気付いたみたいだね。そう、みんなに送ったあの手紙、あれが招待状だったんだよ。そして、これから始まるのは――」
周囲の反応は分かる範囲でもマチマチだった。驚愕する者や、予想通りとでもいうような反応を示す者。中には、この状況に恐怖する者やソワソワしているような者まで居た。
「王様ゲーム、さ」
溜に溜めたレギナの口から放たれたのは、拍子抜けするようなワードだった。王様ゲームといえば、合コンなどで定番のパーティーゲームの一種だ。基本的にはクジ引きで王様を決め、王様になった者は他のプレイヤーに対して命令を一つだけ下すというやつだ。まさか本当に王様ゲームをやる為だけに、この大人数を集めたのだろうか。
否、それは違うだろう。それは、一度彼女に殺された俺だから分かることだ。彼女は一件温厚そうに見えて、その実は冷酷。きっとこの件にも何か裏があるはずだ。
「王様ゲームって言っても、みんなが想像するようなゲームじゃないよ?まあ、分かりやすく言えば決闘だね。」
やはり、俺の予想は正しかった。しかし、決闘と王様ゲームに一体何の関係があるというのだろうか。それならば回りくどいことはせずに、直接決闘と言うべきではないだろうか。
「みんな疑問に思うよね、なんで決闘を王様ゲームって言うのかって。勿論、それにはちゃんと理由があるんだ。みんな気付いてないかもだけど、今みんなには特別な能力が備わっているんだ。その名も、『王権』さ。」
俺の思考を読んだのか否か、レギナは王様ゲームついて簡潔ながら、かなり重要な説明を語った。王権、即ち王に与えられし権限。それが人智を超えた能力という訳か。
そして、それは俺にも宿っている。にわかには信じがたいが、信じざるを得ない状況だ。ここに来て既に、悪い冗談と呼べる
「王権を持った者達による、真の王を決める大合戦。それが、王様ゲームだよ。さて、では早速スタート――。と、言いたいところだけど、みんなにも準備期間が必要だろうから、開幕は今日から一週間後、その時に更に細かいルールを伝えるね。では、解散!」
レギナが解散の意を示した瞬間、俺を含めたこの場にいる全ての人間の意識は、段々と深い闇の中へと引きずり込まれていった――
闇に引きずり込まれる僅かな瞬間、俺の中には一つの情報が流れ込んで来た。普通ならありえないことなのだが、何故か俺はすんなりとそれを受け入れていた。そしてわかった。それが、俺の王権についてのことなのだと。
「これは、癖が強すぎるだろ……」
そのあまりに無茶苦茶な能力に、俺は笑うしか無かった。最も、意識の大半は既に闇に呑まれている為、その笑いは俺の内に留まるだけに過ぎなかった。
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