第131話 実力者

「ぐわああああ!!」


 攻撃を掻い潜って繰り出される相手の猛攻に思わず叫び声が上がる。


 強い。想定以上だ。


 接近を嫌がり苦し紛れに再び攻撃するも鮮やかに躱されてしまう。体勢が崩れたところをここぞとばかりに追撃されて、ついには地面に倒されてしまった。


 その戦闘技術、咄嗟の判断力。優れたスキル。何を取っても文句無し。


 一流の戦士だ。


 自分を上回るほどの戦闘能力を有する恐るべき相手を見上げる。そこには、いくつもの真っ赤な直線を背景に困った笑みを浮かべる人間の戦士、メルグリットがいた。


「くっ……!」


 トリトーンウティカは重い体を引きずるように立ち上がり槍を構え直す。


 まさかこれほどの強者が人間にいるとは思わなかった。トリトーンウティカは改めて戦士メルグリットを見やる。


 乱立し、交差し、戦闘領域をぐるりと囲みこんで完全に支配する赤の直線は炎で出来た道だ。ゆらゆらと揺らめく赤光が短めの銀髪の上で踊っている。


 その手に持つのは赤の刻印が淡く輝く神秘的な片刃のロングソード。最初は二刀流だったのだが、途中から手数よりも威力を重視したのか、メルグリットは驚くべきことに二本の剣を合体させてロングソードにしたのだ。


 二本の剣を近づけて「比翼連理」と唱えることにより反応を示した双剣はより一層美しく光を放ち、二つの炎が交わり燃え上がるように重なると、次の瞬間には一本の剣となっていた。


 火の粉が舞う剣を手に取って構え直すメルグリットの姿はお世辞抜きで格好良く、トリトーンウティカもすかさず自分の持つ白と黒の二本の槍をくっつけて「合体ッ!!」と言ってみたが、合体しなかった。残念だった。


 赤道を縦横無尽に移動するメルグリットが履いているブーツも今では赤銅色に輝き、何だかとても熱そうだ。しかしメルグリットに汗をかいている様子は見られず、それを不思議に思うトリトーンウティカだった。


 そんな強敵、戦士メルグリットの次なる一手を警戒していると、手ではなく口で仕掛けてきた。


 会話好きなのにダンジョン内でもあまり話し相手がおらず、内心寂しく思っているトリトーンウティカの弱点を鋭く見抜いてきたか。トリトーンウティカはその見事な慧眼を称賛する。


 それが罠だと分かっていてもトリトーンウティカはあえて掛からずにはいられないのだから。少し声が弾んでしまったのは仕方のないことだろう。


「ウティ君さぁ、真面目に戦ってくれない?」


「何を馬鹿なことをッ! 戦士メルグリット、君には私が手を抜いているようにでも見えると言うのくぁい!?」


「……」


 恐ろしい相手だ。既に優勢だと言うのにこちらのペースを乱し、勝利を完全に我が物にしようとしている。本当に油断ならない。


 ちなみに戦いが始まってからすぐに自己紹介しているのでお互い名前は分かっている。ウティ君というのはどうやら自分の愛称らしい。「ウティカ君ってちょっと言いづらいね。ウティ君でもいいかな?」と、はにかみながらフレンドリーに言ってきた時は魔性の男かと思った。


 そんなふうに呼ばれたことは一度も無く、とても嬉しかったのでもっと呼んでほしい。それはそうと、このままでは不味い。


 どうやら戦士メルグリットから手を抜いていると思われてしまうほど実力に開きが出ているようだ。戦ってみて分かったがそれは技術の差に思えた。


 トリトーンウティカはメルグリットに比べて攻防の技術が圧倒的に足りていない。総合的な力で言えば決して劣ってはいないはずなのだが、攻撃をメルグリットに当てることができなかった。


 高確率で発動しているらしいスキル<直感>が狡いこともあって、今のトリトーンウティカが正攻法でメルグリットにダメージを与えるのは至難の業だ。


 他に方法が無いこともないが、やはり純粋な力のみで攻撃を与えたい。何とかしなければとトリトーンウティカが頭を悩ませていると、その異変は起きた。


 膨れ上がる気配。


 湖方向から発せられる強大な気配につられてそちらを向くと、炎の道の間から巨大な竜の姿が見えた。真の姿を解放したトリトーンウティカの愛しの君の威容に、戦士メルグリットが圧倒される。


「うわー……。あれは、エグいね」


「フムン! どうやら我が愛しの君は気合が入っているようだ!」


 姿を見せるだけで戦士メルグリットほどの強者を圧倒したことが自分のことのように嬉しい。


 少し前までは自分が訓練してあげる立場だったのに、今となっては全く歯が立たなくなってしまった。自分も早く進化して再び愛しの君の訓練相手にならなければと思うと気合が入る。


 愛のエナジーにより元気を取り戻したトリトーンウティカは力強く槍を構えた。


「フッフッフ! 戦士メルグリットよ、言葉と表情が合っていないぞ! 強き者に憧れる気持ちは分かるが、もう少し仲間の心配をしてやらないと可哀想ではないかね!」


「え?」


 トリトーンウティカの言葉にメルグリットは口を触って形を確かめる。そして自分が笑っていることに気づくと諦めたように言った。


「あ、本当だ。僕、笑ってるね。でも、仕方ないと思わない? あんなに凄くて強そうなのがすぐ近くにいるんだよ? そんなのワクワクして笑っちゃうに決まってるよね! ラスタッドのことも心配は心配だけど、今はどうしようもないしねぇ。頑張って耐えてくれることに期待するしかないかな。それとも、向こうに行ってもいいの?」


「彼女と戦いたければ私を倒すしかないな!!」


「そうなるよね」


 苦笑しながら構え直したメルグリットにトリトーンウティカは二つの穂先を合わせて向けた。


「<アクアツイスト>!」


 槍の先から発射された二つの水流が絡み合いながらにメルグリットに伸びる。凄まじい勢いで迫るその水流を簡単に躱したメルグリットは、その勢いで近くの炎の道に足をつけた。


 重力を無視するように道に対して垂直に立つメルグリットはそのまま滑るように高速で移動を開始する。スピードを増すメルグリットは道から道へと次々と飛び移ってはトリトーンウティカを翻弄し、隙があると見るやブーツから火を蒸かしながら強襲した。


 闇雲に薙ぎ払う槍は簡単に弾かれ、脇腹にもろに食らう。


「痛いッッ!!」


 仲間内でも頑強さには定評があるトリトーンウティカの体は刃を通しはしなかったものの、常時火属性が付与されているらしいメルグリットの一撃によって斬られた部分が赤く熱を帯びていた。


 単純な痛みと火傷による痛みに、トリトーンウティカは地面をゴロゴロ転がる。


「ぐおおおおおおぉぉッ」


 戦闘中にもかかわらずコメディな動きをするトリトーンウティカにメルグリットは歩み寄った。


「そろそろ本気を出す気にはなったかい? ウティ君」


「私はいつでも本気である!」


 メルグリットの挑発とも受け取れるような言葉に、トリトーンウティカは毅然として答える。


 しかしどれだけキリッとした顔で言おうとも、地面に転がりながらでは格好がつくはずもない。それを見てメルグリットは溜息をついた。


 一見無防備で隙だらけに見えるトリトーンウティカだが、メルグリットは一気に攻め立てるような真似はしなかった。それは警戒心からだ。


 <直感>が、それは危険だと警鐘を鳴らしていた。


 トリトーンウティカは絶対に何かを隠している。本当の実力はこんなものではないはず。これまでの経験からメルグリットにはそう思えて仕方なかった。


 戦闘が進み、トリトーンウティカの被弾が増えるにつれてどんどん警戒の度合いも大きくなっている。メルグリットは慎重にならざるを得なかった。


 さっさと本当の力を出してくれればそれに合わせた対応ができるのだが、トリトーンウティカはこれまで通り、自分は本気を出しているの一点張り。しかし今の姿を見ても、どう見たってふざけているようにしか見えない。けれど嘘をついているようにも見えないのが質の悪さに拍車をかけていた。


 メルグリットが困り果てているとまたトリトーンウティカがふざけだす。もう笑うしかなかった。


「ふふふ、私をここまで追い込んだ者は君が…………何人目かな? ひとまず、人間では君が初めてだよ、戦士メルグリット! 君の実力を私は高く評価しよう!」


「……うん、ありがとう」


 君はいつも何と戦っているんだい? とツッコミたい気持ちをぐっとこらえてお礼を言うに止めたメルグリット。


 メルグリットが知る由もないが、トリトーンウティカは以前ゴールド級冒険者と相対したことはあるが人間と戦うのはこれが初めてだ。それを知っていればきっと我慢できずにツッコミを入れていたに違いない。


 まるで本当に弱っているかのようにヨロヨロと立つトリトーンウティカ。それは何か大事なものを守るために、懸命に立ち上がる戦士の姿に見えなくもない。


 シチュエーションさえ違えば感動していてもおかしくないところだろう。だが、それをトリトーンウティカがやっているというだけで全てが台無しになっていた。


 妙に演技がかって見えて胡散臭い。その人の行動や言動によってこんなにも印象って変わるんだねぇ、と変な感心を抱くメルグリット。


 そんなことを思っていたからだろう。危険を知らせ続ける<直感>にも慣れが出て、注意散漫になっていることを自覚しながらもそれを戒められなかったメルグリットは、炎の光を反射するトリトーンウティカのシルバーサバトンに刻印されている模様の色が、僅かに変化していることに気づかなかった。


「さあ、戦いはまだまだこれからだ! 行くぞ、戦士メルグリット! <双槍乱舞>!」


 突撃しながら二本の槍を振り回すトリトーンウティカ。遠心力を無駄なく使い、槍の性能を余すことなく引き出すその姿は舞い踊っているように見えた。


 トリトーンウティカとは思えない、優美で反撃する余地の無い攻撃に、メルグリットは後退しながら攻撃を防ぐしかない。しかし如何せん、スキル故にそんな時間もすぐに終わる。


 無理をせずに攻撃を凌ぎ切ったメルグリットはすぐさま反撃に移る。


「ぬうん!」


 槍を弾かれて斬りつけようとしてくるメルグリットに、トリトーンウティカはとっておきを披露した。首を振って頭の尻尾を叩きつける。


 初見の攻撃だ。これはさしもの戦士メルグリットも防げないはず、とフライング気味に一矢報いた達成感を得るトリトーンウティカだったが、普通に躱された。


(あ、そういえば<直感>持ちだったね、戦士メルグリット。ハッハッハ……狡くないかい?)


 不意を突くことができないから純粋に実力で上回るしかないのだ。無駄な出し惜しみになってしまったなとトリトーンウティカが思っている間にメルグリットは迫り、先ほど脇腹に食らわせた一撃のように、同じ場所、同じ角度で再び斬りつけようとしている。


 これは絶対痛いやつだ。戦士メルグリット容赦ないなと思いながら、トリトーンウティカは諦めて目を閉じた。


 諦めて、装備品の力に頼った。シルバーサバトンがボゥ、と青白く輝く。


 メルグリットの一撃がトリトーンウティカの脇腹を捉えると同時、二人を雷が包み込んだ。


「ぐうう!?」


 突然の強力な雷に、メルグリットは感電する身体を無理やり動かして急いでその場から離れる。そして<直感>が危険を知らせていたものの正体を悟った。


(ぐ、結構効くね、これ。何度も耐えられるものじゃないな……。自動迎撃? あのサバトンの特殊効果か。厄介な能力してるね……!)


 メルグリットが離れたことで雷を放つのを止めたサバトン。しかし未だに光り続けているところを見るに作動中なのだろう。


 半ば接近戦を封じられたような状況に打開策を考えるメルグリット。そこにトリトーンウティカの悲しげな独り言が聞こえてきた。


「嗚呼、発動してしまったか。できれば実力で勝利を掴みたかったのだが……」


 トリトーンウティカは一度天を仰いだ後、頼んでもいないのに、敵に教えるべきではない装備品の詳細を語り始める。


「戦士メルグリットよ、説明しよう。この雷は私の装備品の特殊効果である! 見たまえ。このサバトンには雷のマークが示されているだろう? この刻印が表しているように、私にダメージが一定数たまると自動で雷を放つようになっているのさ!」


 トリトーンウティカの言うように、そこには確かに雷の刻印がしてあった。最初は雷を示す線が引いてあるだけだったはずだが、今は黄色に染められ分かりやすくなっている。


 予想通りの回答に、形勢逆転とまではいかなくとも自分がかなり不利な立場に立たされたことをメルグリットは悟った。


(つまり、中距離か遠距離攻撃中心に切り替えないとダメってことだよね。でも困ったなぁ。僕が得意にしてるのは火属性、水の彼とは相性悪いんだよねぇ)


 通常ならば斬りつけて燃え上がるところを、トリトーンウティカの場合はただの火傷にしかならなかった。頑丈な体も相まって痛打を与えるのが難しいと言うのに、直接攻撃を封じられてしまえばなおさら攻め手に欠く。


 得意ではないが他の属性を使っていくしかないかと思うメルグリットをよそに、トリトーンウティカの説明を続く。


「まあ相手だけではなく私もダメージを食らってしまうのが玉に瑕だがね! しかし、この程度の雷ならばどうと言うこともないのだよ! 私は雷に耐性があるからね! 懐かしいな。あれはまだ私がサハギンで、愛しの君がウォーターワームだった頃。彼女と一緒の水場にいた私は、彼女が以前のメイハマーレと戦う度に死の淵を彷徨ったものだ。私の存在をまるっと無視するように、愛しの君が遠慮なくバンバンと強力な電気を放っていたからね! 半死半生でよく水面に浮かんだものだよ……。繰り返される生と死の狭間で、生存本能を刺激された私が自我に目覚めるのも当然のことだった。私を一個人に至らしめてくれた雷の痛みはやがて感謝から快感に変わり、そして愛に変わった! そう、これこそがッ! 私と愛しの君の、馴れ初めと言うわけだよ!!」


「……そう」


 ビシっと四本の人差し指を突きつけてくるトリトーンウティカに、さすがのメルグリットも押されがちだ。何を言っているのかほとんど分からない。


 だが今のメルグリットにはそれよりも気になることがある。トリトーンウティカのサバトンに刻まれている刻印は雷だけではない。


 他にもう一つ、トライデントの刻印が施されているのだが、今まさに、その刻印が赤く染まり始めていた。これが何かの特殊効果の発動を意味しているならばそれは何なのか。


 自動迎撃の件やこの相手のことを考えるといくら注意してもし足りない。そして、用心深く窺っていたメルグリットの顔が引きつっていく。その理由はトリトーンウティカの口から語られた。


「そして、痛みによって愛に目覚めた私は、ダメージを負えば負うほど愛の力を感じられるようになった! 生命の危機に貧するほど無限に湧き出るラブパワーが私を愛の戦士に至らしめる! さあ! クライマックスだ、戦士メルグリット! 君も、愛の力に溺れて目覚めろッ!!」


「これは参ったね……!」


 トリトーンウティカから感じる威圧感が桁違いに上がった。そして、それが見せかけではないことを次の瞬間証明される。


「<アクアツイスト>!」


 トリトーンウティカが穂先を合わせてスキルを唱える。少し前にも見たはずなのに、潤沢にオーラを含ませられたその技は、もはや別のスキルと化していた。


 絡み合う二本の水流は二体の水竜が如く。アギトを開いて飲み込まんばかりの迫力でメルグリットに襲い掛かった。


(速いッ!)


 威力が上がってスピードも上がっていれば、その範囲すら広がっていた。穂先を向けられた瞬間から<直感>で回避行動に移っていなければ躱せたかどうか分からないほどだ。


 獲物を捕え損ねた水竜たちはそのまま炎の道を食い破る。<交差する赤レッド・ジャンクション>を問答無用に貫いて、彼方へ消えていった。


「いやいやいや! 威力が冗談じゃすまないんだけど!?」


 再生する気配が無い赤の直線。ぽっかりと空いた穴を見て、メルグリットの顔には冷や汗が流れた。


「フムン! よく躱した戦士メルグリット! しかし、まだまだこれからだ! <ジャイアントランス>!」


 空から降ってくる巨大な水の槍。ジュッと、短い音を立てて、メルグリットを蹂躙する途轍もない質量が領域の外から突きこまれる。防ぎようがないメルグリットは慌てて領域から脱出した。


 純粋で圧倒的な力の暴力。小手先の技術が通用しないなら、丸ごと飲み込んでしまえと言わんばかりの理不尽さ。


 隙を見て遠距離から攻撃しても効果は薄く、相手の破壊力は増すばかり。メルグリットの気持ちはたった一つのもので埋め尽くされていた。


(ウティ君、めっちゃ面倒臭い!!)


 階層の奥へ奥へと追いやられて行くメルグリット。


 湖から更に離されて、やがてその目に映ったのは一つの建物。朽ち果てながらも大聖堂のような神聖さを残すその建物を見て、メルグリットは咄嗟に中に逃げ込んだ。


 見晴らしの良い場所はメルグリットにとって不利。姿を隠しながらチャンスを見計う狙いだ。だが建物の中は思った以上に簡素で隠れる場所が無く、逆にメルグリットが追い詰められてしまいかねなかった。


 今から戻ろうとしても、後ろからは馬鹿げた攻撃を仕掛けてくるようになったトリトーンウティカが迫っている。一か八か、更に奥へと進むことに決めて、駆け抜けたメルグリットは建物最奥の部屋でそれを発見した。




 石畳の上に赤紫色で描かれた魔法陣。




 ほんのりとした光を放ち、稼働状態であることを示していた。メルグリットは思わず息を飲む。


「これってもしかして、転移魔法陣……? 第三階層に行くための……? 噂には聞いたことあったけど、階段で繋がってないダンジョンを見るのはこれが初めてだねぇ」


 状況も忘れて珍しいものを見たと感心するメルグリットだったがすぐに我に返る。


 迷っている時間は無い。第三階層に乗り込むリスクはかなり高いが、どのみちここに留まっても良いことにはならない。


 トリトーンウティカへの対抗策を考える意味でも、向こうの体力が戻ればこの理不尽な状況も改善されるかもしれないと言う意味でも、とにかく時間が欲しかった。


 意を決したメルグリットは、未知に対するワクワクに少しの不安を含ませて、魔法陣に乗っかった。


「……行ったようだね」


 誰もいない聖域で、魔法陣を見つめてトリトーンウティカが呟いた。


 自分の役目はここまでだ。トリトーンウティカは、自分が認めた戦士にエールを送る。


「頑張りたまえよ、戦士メルグリット。君なら私は大歓迎さ。……さてさて、向こうも終わったようだし、私も愛しの君の元まで帰ろうかね! ハッハッハ!」


 やりがいのある任務を無事に達成したトリトーンウティカは胸を張って湖へと帰る。


 トリトーンウティカ。


 まだ一度しか進化しておらず、周りからも避けられるような身でありながら、今回一番重要な役目を任された者。それはメイハマーレやアテンといった上位勢から信頼されている何よりの証。


 それを知ってか知らずか、相手に自分と言うものを掴ませないトリトーンウティカは、鼻歌まじりで聖域を後にした。

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