第28話 雑談―その2
「まあ、その災害級の力をもってすればこのラガドの街やエルムード王国、果ては大陸までもたやすく崩壊させることができそうだが、そういう悪い方向にだけは使ってほしくないものだな。」
「ええ、ご心配なく。皆さんからご不信を抱かれないように気を付けるつもりです。ただ・・・」
「ただ…!?だと!?一体何をするつもりなんだ?」
「いえ、この世界には帝国や王国があるようですが、私にはこの封建社会の在り方が少々気に入らないのです。」
「ユカワ殿、それは外であまり口に出さない方がいいぞ。既存の支配体制を揺るがそうとする危険分子と間違えられかねない。というか、封建制を解体しようとたくらむのであれば危険分子以外の何物でもないな。」
「まあ、ウォーレン隊長、そんなに怖い顔をしないでくださいよ。王城を潰したり、貴族を皆殺しにするなんて暴力的なことを企図しているわけではありませんから。」
「では一体…」
「いやぁ、まだ具体的な理想社会の在り方が頭の中にあるわけではないんですよ。それに、それに近いものを実現するためには無数のステップを踏まねばなりませんからね。もし本当に私のこの考えを実行するとなると、クリアせねばならぬ条件はちょっと多すぎます。」
「そうか、だが、ユカワ殿の魔法をもってすれば…」
「ウォーレン隊長、暴力によって秩序を破壊するのはたやすいのです。今からでもできます。ですが、暴力は社会改革のためだからといっても、やはりとってはならない手段だと思うのです。ですから、私がそのようなことをする心配はありません。どうか、信頼してください。」
「あなたという人の力を見たものとしては、その言葉を信じるよりほかないな。嘘だったとしても我々にはどうすることもできないような気がするよ。」
「そうでしょうね。ですから、私は謙虚に活動していくつもりです。ときには派手にやらかすこともあるでしょうが、本当にまれだと思いますから。」
「それはあんまり信じられないなぁ。」
「ええっ、どうしてですか~?」
「あなたには、少々世の中の常識が欠けているようなのでな?慈善活動家兼スライム研究者殿?」
「いいですね、、スライム研究者。私の肩書はスライム研究者ってことにしておきましょう。」
そんなくだらない話をしているうちに冒険者ギルドの幹部が到着した。
慌てて馬車から降りてきたのはどうやら冒険者ギルドのギルドマスターだった。
「ウォーレン!ギルドマスターのわしを呼びつけるとはいったい何事じゃ!よほどのことじゃろうの?かわいい孫娘との時間を邪魔しおって…」
ギルドマスターは孫バカおじいちゃんらしかった。
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