第52章 衝突回避に着手④
隕石が落下するという思わぬ援護射撃? もあって、住民への説明会はどうにか無事に終わった。だが全てが順調というわけにはいかなかった。
「彗星の質量が当初の計算よりも、かなり重いといことがわかりました。ミサイルはもう1機、必要です」
アリーナが曇った顔で居並ぶ全員に説明した。
「問題は、ミサイルは追加で造ることはできますが、彗星まで飛ばせるエネルギーの不足と爆薬です。それを確保しないと建造しても、意味がありません」
沈んだ声で説明を続けてきた。
俺は、肩を落としたような顔を並べる全員に眼をやった。マルコフも青ざめた顔で棒のように立っていた。
「それは、ミサイル建造と一緒に開発できないのか?」
科学知識の乏しい俺は、重くなった雰囲気を少しでも変えようと、口を開けないみんなに代わって声をあげた。
「核原料は全て、8機のミサイルに使いました。もう原料は、残っていないのです」
マルコフが曇ったままの顔で説明をしてきた。
「方法はあります」
アリーナが今度は平静な顔に戻して声をあげた。
ひどく動揺したままの人間たちとは違って、落ち着いた顔に戻して言えるのは、やはりヒューマノイドだからか? それと元は、最強のAI女戦士でもあった。
「方法があるのか?」
周りから声が上がる前に、俺がすかさず訊いた。
「はい。みなさんがここにやってきた宇宙船の原子炉の核を使うのです。足りない分は、それで補うことができます」
アリーナが同じ口調で説明してきた。
「だがそれを使えば、万が一のときに、宇宙船で脱出できないということですよ」
マルコフが同じ表情のままで口を開いてきた。
「宇宙船を飛ばせないと、住民が知ったら」
部下の1人が呟くように声をあげてきた。
「もう一度、みんなに集まってもらって話をしましょう」
マルコフが腹を括ったような顔で声をあげてきた。
俺は嫌な予感がした。計画が失敗に終わらないか、急に心配になってきた。
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