第51章 暗雲②
怒りが収まらず、また風俗街の方角に、眼をやったときだった。
「お父、さっそくあそこの風俗に行こうと考えているの?」
娘の恵美が、スケベ親父でも見るかのような顔で吐いてきた。
「まさか」
俺は一瞬ドキッとして即座に反論した。
「ほんとかしら」
恵美が懐疑的な眼をしてきた。
「あのな、恵美。あそこにいる女たちは、俺にとって、みんな、ひ孫ぐらいの年齢だぞ。そんな女たちと、遊ぶわけないだろうが。少しは、父親を信じろ」
俺は変な誤解をされないよう、少し強い口調で弁明した。
「え? あの宮島さんは、いったい何歳なんですか? 外見はまだ、40代前半のようにしか見えますけど」
レオナードが少し驚いた顔で口を挟んできた。
「俺か? その通り、ナイスガイの中年男だ」
胸を張るように答えた。
「嘘よ。90歳はいっている爺よ」
横から幸恵が口を挟んだ。
「え? 90歳?」
レオナードがびっくりした顔で声を飛ばしてきた。
「すると、恵美さんは?」
今度は、恵美の顔のしわでも数えるかのような眼をして聞き返してきた。
「わたしは、見た目通りの年齢よ」
涼しい顔で言ってきたその顔に、俺は思わず娘の実年齢ばらしてやろうかと思ったが、恵美に首を絞められそうなのでやめた。
まあ口は強いが、愛する大切な娘だ。変な眼で、娘を見させることもない。
その後も犬も食わない話を続けながら、アリーナが待っている研究棟に戻っていった。研究棟に戻った後も、心の片隅には、あの不審者の姿が強くこびりついていた。
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