第48章 不穏な影①
どうして? 火星に、こんな不純物の連中が、混ざっているんだ? 火星への移住者は厳正に選ばれた人たちだったはずだ! 俺は腹の中で怒声を飛ばした。
「あそこを経営している連中は、竜司さんのおかげで火星に酸素の大気がつくられた後に、やってきた男たちです。僕がここに来た頃には、既にあの風俗街が建っていました」
レオナードもおそらく俺と同じ気持ちなのだろう。怒りが混ざっているような強い口調で説明してきた。
風俗街を嫌悪感と怒りの眼でまっすぐ睨みながら、その説明を聞いていくうちに、俺の怒りは収まらず、いまにも爆発しそうになっていた。いますぐにでも乗り込んでいって、風俗店の経営者どもの首を掴まえて、火星から追放したい思いだった。
「あんなのを造って、反対する人はいなかったのか?」
俺は荒げた声で訊ねた。
「もちろん、大半の人たちが反対の抗議をしたようですが、営業自由の侵害だとか屁理屈を強引に押し通したそうです。その背景には、地球からの命令もあったようです。当時はまだ、火星は地球の統治下にありましたから」
怒ったような顔で答えてきた。
「あそこは、どういう連中が仕切っているんだ?」
俺は頭を沸騰させたまま訊き返した。
「カード・ホラップというヒグマのような大男です。彼の下に30人ほどの男がいます。働いている女は50人ぐらいです」
訊いていくうちに俺の怒りは、ますます沸騰していた。竜司が、火星を人が住める星にしたのは、こんな連中のためではない。
この連中を一人残らず首に縄をかけて、地球に送り返したい思いに駆られていた。若い女の生き血を吸う性獣たちを強制送還して、代わりにガイガーのロボットたちの迫害から逃げ回っている家族を迎え入れたい思いだった。
だが、それを本当に実現できたとしても、火星も安全ではない。彗星の衝突を阻止できなければ、全員が死ぬことになる。
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