第40章 AI覇権戦争③
もっとも海中が澱んで視界を悪くしていることがむしろ幸いして、ゲバラたちの存在を消してくれていた。ゲバラたちは特殊メガネを装着し、戦況を確認した。大王軍は劣勢になり、後退しだしていた。ガイガーの海中軍は退却していく大王軍を追って、海面を飛び出して上空軍に加わり、旧ロシアのシベリアの沿岸に侵攻していった。敗走した大王軍は侵攻を防ごうと、レーザー弾の雨を海岸線に降らせた。激しい戦闘は陸上に移った。草原や森林は火の海となり、小山や丘陵は根こそぎ吹き飛ばされて更地となり、所々に月面のクレーターのような穴が増え続けた。
そこに今度は双方の超高層ビルのような巨大ロボット軍が登場し、激しいバトルを開始した。超合金の巨体同士が傷ついた大地を踏み荒らし、ぶつかり合いつぶし合い破壊する激突音が砲弾戦に混じった。
ますます周りの大地は、元の形状がわからない状態になった。巨大ロボットの対戦でもガイガー側が優勢だった。勢いを増すガイガー軍は、反撃する大王軍を蹴散らし、領地の奥に侵攻していった。
その戦闘を中空で見ているものがいた。5匹のハエたちだ。いや本物のハエではない。ゲバラが放ったハエ型ロボットだった。まだ海中に潜んでいたゲバラたちは、ロボットの複眼レンズを通して、戦況を眺めていた。
「この情勢ですと、ガイガー軍は、大王を倒すかもしれませんね」
一緒にモニターに映る戦況を眺めていた部下が話してきた。
ゲバラは声を返さず、モニターをじっと見ていた。
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