第36章 アマール⑤

 そのスパイ活動をしているアマールを捕らえたのは、ゲバラだった。さすがに最強のAI女戦士といえども、ゲバラの敵ではなかった。捕らえられたアマールは、ガーピスの手によって思考回路の65%を書き換えられた。全てを書き換えなかったのは、ガーピスと対抗するうえで彼女を2重スパイとして利用することにしたからだ。頭脳の一部を書き換えられたアマールは、ガイガーの命令通り忠実に実行しているように装いながら、実際はガーピスたちのために働いていた。


 だから彼女は、ガイガーの施設から、俺を救い出すことができたわけだ。だが時には、ガイガーの命令を拒むことができずに、ガイガーに重要な情報を漏らすこともあった。


 その情報の中で、絶対に漏らしてはいけないものがあった。竜司の情報だった。


 火星に向かう母親の見送りに竜司が大気圏外に出るという情報を、アマールはガイガーに伝えていた。俺を救ってくれたアマールは、その一方で、皮肉にも息子の殺害にも手を貸していた。


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