第33章 息子の代役③
俺は、自問自答していた。人々を説得しに、火星に行くべきなのか? 心は揺れたまま整理を付けらずにいた。俺に、そんな大役が務まるのか? 火星の人々の、みんなの命運を握る大事な役を、こんな俺にできるのか?
「大丈夫、あなたなら、きっとやってくれます。シリアやアフガニスタンで人道支援活動をしてきたように、今度は火星の人々を助けてほしい」
ガーピスが人間のように熱く語ってきた。
確かに、中東では危険と隣り合わせの中で子供たちを支援してきたが、火星とは次元が違う。
話が上手くない俺は、どちらかと言えば、言葉より行動するタイプだ。だから失敗したことも結構ある。はたして、そんな俺の話に火星にいる人々が納得してくれるだろうか? とてもだが、まったく自身がない。
「専門の具体的な話は、火星にいる竜司さんの部下や研究仲間が代わりにしてくれます」
尻込みする俺の背中を押すように、ガーピスが説明を続けてきた。
「火星には、ジュンさんも一緒に行ってもらいます」
ガーピスがすぐに言葉をつないできた。
「ジュンも一緒に?」
ジュンが、孫が一緒なら少しは安心だ。娘に一人息子を合わせることができる。たぶん娘にとって、父親との再会以上に自分の息子と再会することが一番の喜び、願いだろう。
ジュンも同行すると聞いて、迷いは吹っ切れた。
「わかった。俺にできるかはわからないが、火星に行かせてくれ」
腹を決めた俺は、返答すると、また火星に眼をやった。
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