第33章 息子の代役①

 俺は火星の映像に、瞳を移した。誰かが火星に行って、みんなを説得する必要がある。火星の人々の命がかかっている、そんな大事な大役を任せられる人間が、まだ地球にいるだろうか?


 思考を巡らせながら、その瞳を前に戻すと、ガーピスが俺の顔をじっと見ていた。観察するかのような、眼で。


「それにしても、あなたは竜司さんに、よく似ている。いや竜司さんが父に似ていると、言ったほうが正しい表現ですね。やはり親子だ。竜司さんが、宮島さんの年齢になれば、瓜二つになるでしょう」

 改めて観察するような眼をして、口を吐いてきた。


「そう言われたのは、初めてだよ。まあ、俺の家族は似てないよと言うだろうけど。特に、竜司には」


 そうは言っても、仮に冗談でも、最愛の息子と似ていると言われることは、父親としては嬉しいものだ。


「宮島さん、火星に行ってもらいませんか?」

 ガーピスが単刀直入に聞いてきた。


「俺が? 火星に?」

 まったく予想もしなかった言葉に、俺は驚いた声で訊き返した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る