第32章 巨大彗星①

 俺の大事な、愛する娘がいる火星に、巨大彗星が衝突する! あまりの衝撃に、一瞬、頭が真っ白になった。俺は息をするのも忘れ、棒のように突っ立っていた。


「それは本当なのか?」

 どうにか喉から声を絞り出した。


 娘が死んでしまう! 頭が変に、どうにかなりそうだった。


「ええそうです。間違いありません。ガイガーは巨大彗星が衝突することを知っていて、だから火星を攻撃しないのです」

 ガーピスが即座に答えてきた。


「彗星衝突で火星がどうなるのか、ひょっとして壊れるかもしれません。ガイガーは衝突の破壊力を研究しようとしています。言葉は悪いですが、言うなれば火星にいる人々は、衝突のモルモットです」

 曇った顔で、それでいてはっきりとした口調で説明してきた。


 ジュンが、ガイガーは火星を攻撃しない、と言っていたことへの疑問が、いまはじめて解けた。


 火星にいる人々は、彗星衝突で全滅する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る