第29章 悲しい決断⑤

 捕らえられた竜司は、副官の艦内に運び込まれた。座席の底にはガーピスの反対を押し切って、時限爆弾を装着してあった。


 爆発まで、5秒を切った。


「母さん」

 竜司が最後に吐いた、言葉の直後だった。


 ドドーン! 自爆の破壊力は、核爆発を連想させるほどすさまじく、木っ端微塵に艦船が吹き飛んだだけでなく、近くにいる戦闘機30機ほどが巻き添えに遭った。


 ゲバラたちは爆発の衝撃波の間隙を衝き、周りの戦闘機を次々と撃破していった。戦況が逆転しそうになったゾルダーは、残った戦闘機を盾にして逃げていった。


 その頃、地球が周りの星の一部にしか見えなくなった距離まで飛んでいた母と妹が乗る宇宙船の中でも、異変が起きていた。


「竜、竜司……」

 母のセレナが、いわゆる虫の知らせで竜司の死を知ったかのように、ひどく悲しそうな顔をして独り言を零した。


「お、お母さん、気が付いたの? お母さんっ」

 だが娘の呼びかけに、母が答えることはなかった。


 心電計は無情な表示を示していた。

 医療スタッフが懸命の蘇生を試みたが、母の命の炎が再び灯ることはなかった。


「お、お母さん! 死なないで! ここで死んだら、お兄さんに会えなくなるわ! 眼を覚まして! お母さん!」

 恵美の必死の哀願に、母がもう応えることはなかった。

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