第29章 悲しい決断③

 その間に、また仲間の1機が撃ち落とされた。


「人間をこちらに引き渡せば、我々は攻撃をやめて立ち去る」


 旗艦に乗って戦闘機を指揮するガイガーの右腕、ゾルダーが条件を発信してきた。

 その野太い声は、ガーピスたちにも届いた。


「竜司さん、その、命令を撤回してください。お願いです」

 ガーピスが泣きそうな声で訴えてきた。


「いや、それはできない。僕がいなくても君がいる。この先の指揮官は君だ。みんな僕を守ろうとしてくれて、本当にありがとう。地上で助けを求めている人たちを守ってくれ」

 竜司は感謝の思いを伝え、眼を赤くした。


「ユーリー、命令だ。解除しろ」

 操縦席に眼を向けた竜司は、今度はさらに強い口調で指示した。


「竜、竜司さん」

 ユーリーは絞るように声を出すと、スイッチを解除した。


「ありがとう、ユーリー。無事に帰還してくれ」

 そう言い残すと、竜司は離脱スイッチを押した。


 竜司を乗せた座席は、機外に勢いよく飛び出していった。


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