第28章 3年前②

 竜司たちは予想していたとはいえ、ガーピスの計算の速さに改めて驚かされた。人間の能力では、何十年も掛かる問題解決の答えを、ガーピスはその日に全て出してきた。


 さすがは、シンギュラリティを超えたAⅠだ。


「5千人が乗船できるロケットを2年で完成できるのか? 6機同時に造船すれば、一度に3万人を火星に送ることも可能だ」

 竜司は、スクリーンに映し出された巨大ロケットの設計プランを見つめ、喜ぶ顔を少し浮かべた。


 素直に喜べないのは、ガーピスが設計した新型の超大型ロケットでも全ての人々を救出することはできないからだ。それに、6機が無事に脱出できるとはかぎりない。ガイガーの戦隊が避難船を撃墜しようと襲ってくるのは間違いない。だが地球にいれば、殺される恐怖に怯えた地獄の悲惨な生活が続くだけだ。


 竜司たちは宇宙船の完成を急いだ。そして2年後、計画より少し遅れて6機の宇宙船が完成した。一方、その2年の間にもガイガーと大王のロボットたちに多くの人々が無残に殺戮されていった。このままだと、人類は絶滅危惧種の仲間に指定されそうだ。


 いや、絶対にそうはさせまいと、ガーピスが誕生させた戦士たちが、ガイガー、大王のロボット軍と激しい戦争を繰り広げていた。

 その間に、竜司たちは懸命に難民の救済を続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る