第23章 私たちは地球の家族①
アマールが眼をまっすぐ合わせてきた。あの初めて見たときの冷たい眼ではなく、慈愛を感じさせるような雰囲気を醸し出していた。
「その理由は、あなたたち人間も、わたしたちも、地球の家族だからよ」
少し強い口調で返してきた。冷たい口調ではなく、彼女の声には優しさも感じた。
その言葉に、俺は面食らった。まさか、冷徹なマネキン女だと、ずっと思っていた彼女から、そんな言葉を聞くとは夢にも思わなかった。
いまでは、彼女の顔が、観音菩薩のようにさえ見えることがある。そのスタイル、美貌には差がありすぎるが。あくまで個人の好みの問題なので、肥満の女が美女だと考える国もあるし。誤解のないように。
「さあ、急ぎましょ」
アマールは含みがあるような声に切り替えて、また速足で歩き出した。
俺も引っ張られるように、すぐに足を動かした。アマールの後ろ姿が、いまでは、すっかりすごく頼りがいのある仲間のように見えていた。
ドアの前に近づく度に閉じた通路が開き続いた。おそらく顔認証のようなシステムでも設置されているのだろう。そして4番目のドアに進むと、そこは宇宙船の大きな管制室のような部屋になっていて、地球の映像が映し出された巨大スクリーンが3つ並んでいた。
そこには、懐かしい日本の島々も小さく映っていた。日本列島の見た目は何も変わっていないように思えた。だが、もうその島々には、日本という国はない。東京や大阪、俺の思い出のある金沢の町並み、そして、ふるさとの沖縄。
いまはいったい、どうなっているのだろうか? ここからすぐにでも飛び出して、沖縄の自分の家に帰りたい。いまも家は残っているのだろうか? 家族と暮らしていた郷土に飛んでいきたい思いが、強く湧いてきた。
改めて、家族の大切さを思い知らされた。できれば、もう一度、あの頃に戻って、家族と楽しい幸せな日々をもう一度体験したかった。いや一度ではなく、欲を言えばこの先もずっとだ。その思いが頭に押し寄せてきて、感傷的になった。
「ご無事で良かった」
そこに、明るい男の声が、背後から聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます