第19章 逃げ切れるのか?①

 ドドーン! また激しい爆破音が鼓膜をつんざき、左側の壁が破壊されて、大きな穴が開いた。


 すると、アマールの左手が即座に動いた。破壊された壁穴に向かって、糸のような細いワイヤーの付いた物を投げ込んだ。ワイヤーは穴の淵にひっかかり、ヨーヨーのように壁の向こう側に飛んでいった。


 今度は壁の向こう側から激しい爆発音が聞こえてきた。ワイヤーについた物が爆発したのだ。爆煙と破片がこちらにも飛んできた。


 投げたものは、手榴弾の一種だった。アマールは穴の淵にさっと近づくと、さらに連続して爆発物を投げた。壁の向こう側で連続して激しい爆破音が響き、その爆風がまた俺の足元にも吹き付けてきた。


 煙に混じって飛んできた数個の破片が、方々の壁にガツンガツンとあたりながら、液体が待っている先へと落ちていった。汚水は、見下ろしても、煙に遮られて水面は見えなくなっているが、ついでに俺が滑り落ちるのも待っているだろう。


「さ、急いでいくわよ。すぐにまた襲ってくるわ」

 アマールがまた強い声を飛ばし、先に穴口までするりと下がっていった。


 俺もまた金魚の糞のように、アマールの後を追った。穴口側に立つと、気が抜けたわけではないが、限界寸前だった足がよろけて、プレイバックして円筒に落ちそうになった。するとアマールが右腕をさっと掴み、中に引き入れた。


 その顔は、ドジな男ね、とでも言いそうな表情をしているように見えた。俺は少しバツの悪そうな顔をぶら下げて、周りを見渡した。装備品のない反円錐の部屋になっていて、飛行物体たちがバラバラになって方々に散らばっていた。数えはしなかったが、10体はありそうだ。


「さ、また襲ってくる前に、ここを離れるわよ」

 生き残りがいないかチェツクしていたアマールが、顔を正面に戻して促してきた。


 俺たちはドアをスライドさせ部屋を出た。そこには逃走したときと似たような通路が、左右に伸びていた。

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