第17章 助っ人現る⑦

「こっちよ!」

 女が俺の腕をまた掴まえて、重装備をした大型の装甲車を連想させるような機械の背後に突っ込むように逃れた。


 ブシュ! ブシュ! ドドーン! という鼓膜を叩く激しい銃撃音と着弾音、破裂音が俺の心を強く揺さぶり続けた。男と怪物の凄まじいバトルで全ての機械が滅茶苦茶に破壊され、破片と黒煙が室内中に舞った。破壊されたのは機械だけではない。天井や周りの壁、床も抉られ無残な状態になっていた。人間が建造したビルなら、外が見えるほど風穴だらけになっていただろう。


「ここから出て!」

 女がまた大声で命令してきた。


 今度は左腕を強く引っ張ると、銃弾で壁にぱっくりと開いた穴に、腰を屈めて飛び込むようにして入った。そこは何かの配管のようだった。照明らしきものは見当たらないが、遠くまで見通すことができた。直径は3メートル近くあり、見方によっては地下トンネルのような感じだ。


 それを眼にして俺は少し安堵した。エイリアンの映画で、宇宙船の狭い管路を腹ばいになって逃走するシーンがあったが、その心配はないだけでも一安心だ。


「ここは排水管よ。5分おきに管を洗浄する液が流れて来るわ。急いで、脱出しないと、あなたは溺れ死ぬことになるわ」


 そう言われて、ドキッとした。撃たれて死ぬのも嫌だが、洗浄液を飲み込んで溺死するのも、まっぴらごめんだ。ある意味、撃たれたほうが安楽死だろう。


「どうする?」

 ひどく動揺し、混乱する思考回路を正常に働かせない脳に代わって、先に口が動いた。


「さあ、全力で走るわよ! 急いで!」


 その間も、助っ人の男と怪物の激しいバトルの音が、管路にも響いていた。



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