蜂とバッタと善意に虹を

ウタ🌱低浮上

 序章

 戦場よりも教室の方が怖いだなんて、おれはやっぱり臆病なのだろうと思う。


 薄紫色に暮れる空を見上げながら、そんなことをふと考える。夜が迫っていても、淡い光の中にありが飛び回っている光景を目にしても、不思議とおれの心は凪いでいる。


 コロン、と飴玉が歯に当たる音が頭に響く。緊急避難宣言が出されていたため、街には一般人の姿はない。それでも、この地区は時間を止めない。


 多くの建物のほとんどがネオンを灯したままで、指示を待つ車も歩行者もいないのに信号は休まない。闇が落ちてきても、おれたちの戦争の妨げにはならないというわけだ。


 視界が利く限り、おれたちはちありは戦い続ける。四角い空が細く続く街を、おれは風のように駆け抜ける。日常では人が溢れ返り、誰もが空の形も色も気にしないまま足早に通り過ぎるだけの道だ。たとえ戦場になろうとも、明日になればまたいつもの背景が戻ってくる。


「危ない!」


 その時、声と共に影が落ちてきた。おれに危険を知らせるための声だったにもかかわらず、いつもの癖で足がすくんだ。すぐに我に返り、目の前の落下物に目をやる。


「黒の制服……『あり』だ」


 つまりは、敵だ。


 気を失っているのか、微動だにしないその体に近づき、そっと手を伸ばす。警告の主は飛び去ってしまったようで、すでに姿はない。チャンスだと思った。


 蟻の制服のポケットから、アレが零れ落ちている。


 すべての元凶。


 そう、きっかけは、飴玉ひとつ。

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