第193話 二つのショック(衝撃・精神的)
☆ -蒼月今宵視点-
お兄ちゃんから片側の投石オークの集団を任された私は、順調にそのオークの集団の首を
「
私はオークを倒す時に、つい歌ってしまうようになった自作曲の曲調を変えながら口ずさむ。
最近では ユー アー マネー!の所を ユアッシャー! というような感じで強弱をつけて、ユアッマネェー! と言うのがお気に入りだったりする。
「
私は歌詞や曲調を色々に変えながら敵を倒すことで、動きもそれに合わせてノッて調子が出てきた。
まあお兄ちゃんから言わせれば、オークの曲はお金の欲望にまみれていて『はしたない』と言われちゃうんだけど、小市民がいきなりオークで大金を手に入れたら仕方がないよね!?
しかしこのオークさんたちは私に狙いを定めたみたいだけど、私がオークのボスならお兄ちゃんを追い込むんだけど見る目がないよね!
大体、もし私が一人になったから私に狙いを絞っているのだとしても、そもそもここに転移をした時点で戻るのも出来るってそれなりの知能があればわかるはずだけど。
お兄ちゃんはこのオークの集団は、知能があって油断がならないと言っていたけど、これなら敵が追い込みに来ている私の所にボスが来ちゃいそうだし倒しちゃっても良いよね!
私はそんなことを考えながら、
そうやってオークを
その声が気になってみてみると、あちら側にボスが現れたようだった。
「あれ? 今宵の所にボスが出そうな追い込まれ方だったのに!? お兄ちゃんの実力をキチンと見極められているのなら、お兄ちゃんが言うようにやっぱり知能が高いのかな? まあ、それならそれでこっちはサクッと倒してもどろっかな~」
私はそんなことを考えながら、早くお兄ちゃんの所に戻ろうと倒す速度をさらにあげた。
その瞬間、私の魔力感知に強い反応があった。
「ブヒィィィィ!!」
それと同時に大きな叫び声をあげながら、お兄ちゃんの所に出現したオークジェネラルがこちらにも現れたのだった。
「うーん。お兄ちゃん側の人数が多いから、そちらをもう一体のオークジェネラルに引き付けておいて、結局は今宵を先に倒す作戦?」
なんだかそれはそれでセオリーっぽい気もするけど……と思いながら、オークジェネラルの攻撃をかわす。
でもこれなら結局私に狙いを定めているわけだから、私たちの実力が見切れてないってことだよね。
「影残!」
私は影残を使ってオークジェネラルの真横に移動すると
「ブヒィ!」
オークジェネラルには反応ができないと思って仕掛けた攻撃は、私が忍刀を振るった瞬間にオークジェネラルの剣で対処される。
しかも相手の威力の方が強いせいで、私は吹き飛ばされはしないが少し浮かび上がってしまった。
私はそのまま浮かされると無防備になってしまうので、もう一度忍刀に力を入れオークジェネラルの剣を忍刀で押し込み、その力を利用してバク転してオークジェネラルと対峙する。
「カルラは最初に見た時に怖くて仕方がなかったけど、このオークさんは全く怖くないから弱いとは言わないけど切りつけるくらいはできると思ったのになぁ」
私はそう一人愚痴りながら、相手のパワーの方が強かったことから、さらにスピードを上げて攻撃する。
「運動エネルギーは速度の二乗! 倍の速度になれば衝撃力は
私は実際には1,1倍か1,2倍くらいに上げた影残でオークジェネラルに切りかかる。
ガンッという音がお互いの剣と忍刀のぶつかり合いで鳴るが、今度はこちらが浮き上がることはなかった。
そのまま連続攻撃をしかけると、ガンガンガンッという音を響かせてオークジェネラルに対応される。
20階層のボスですら1撃になっている現状で、圧倒的に格上と言う訳でもなく負けると思うようなことはないが、こちらの攻撃も対応されるこの状況に今宵は楽しみを感じ始めていた。
そうやって戦っていると、周りのオークがオークジェネラルの上や左右に少しだけ離れた状態で投石を始める。
私のスピードが速すぎるせいで、オークたちは私が動いた瞬間に石を投げても私に当てることはできないので、それなら先に私が移動する可能性のある場所に投げておけと言う訳だ。
そして私は石を避けるという動作が加わったことで、その瞬間に再加速をすることになり私がオークジェネラルに与える衝撃力が下がってしまう。
さらに、腰の入ったパンチではないが、体の軸や体重のベクトルが剣に上手く乗らなくなったことで威力の低下を招いている。
私は武術全般というスキルを持っているからそれらは大きく補正されるけど、全く下がらないわけではない。
だから相手のパワーに負けないように忍刀を振りきる速度を上げてその威力低下を防ぐ。
「正面なら投石は問題がないけどっ」
正面からの攻撃なら投石はオークジェネラルにもあたることになるので、オークたちは投げることはないが、その分こちらの攻撃も読まれやすくなってしまう。
そうこうしているうちに私は知らず知らずに一定の方向へと追い詰められていた。
こちらの戦闘には巻き込まれないように介入してきてはいないが、かなり近くに投石をしているオークの集団とは別のオークの集団が来ていたのだ。
元々、何か罠があるような感じで追い込まれてはいた。
私自身は追い込まれた後に、ボスのオークジェネラルが出てくると当初は考えていたがそれは逆だった。
オークジェネラルは早い段階で出て来ていて、オークたちと連携をしながら、さらに追い込んで集団で私を倒すつもりなのだろう。
今回はこちらが認識をしていない状態で追い込まれていたことに私は気が付いて、少し強引ではあるけれど、正面からオークジェネラルを力任せに攻撃をしてこの相手の戦略通りにこちらが動かされている状況を打開することにする。
だから私は、仕方なく正面からオークジェネラルに攻撃を仕掛けた。
影残を使い忍刀を振りきる速度を上げ攻撃を加えるが、やはり対応をされてしまう。
それでも今回はオークの集団と距離が近いことを警戒してそこから離れるための仕掛けであるので、ここから向きを変えてオークジェネラルを引きつけながら離れられれば問題はない。
そうしてうまく攻撃を加えて向きを変えることには成功したが、剣と忍刀がぶつかり合ったせいで私は一度停止してしまっていた。
その瞬間、私は私の隣に正面のオークジェネラルとは違う大きな影を感じ「ブヒィィィィ!」という叫び声とともに、吹き飛ばされていたのだった。
「「今宵ちゃん!」」
私は吹き飛ばされて地面にぶつかったせいで砂煙が上がり、周囲が見えない状況で大声をあげて私を助けようとやって来る二人の親友の魔力を感知する。
そして敵の魔力も同時に確認し、それが二体目のオークジェネラルで自分はそれに殴られたのだろうと判断した。
剣で殺気を向けられていたのなら、私はおそらく察知をすることができて避けることができたと思う。
それなのに相手は打撃で、しかも私を殺そうという攻撃ではなくダメージをまず与えて、私のスピードを殺そうという作戦をとったようだった。
「あ~あ。二人に心配をかけちゃったなぁ。簡単に死なない敵だったから、楽しくて少し遊びすぎちゃったかな。オークの集団に気配を消して紛れてたのかな? ボスなのにセコイことするね」
私はパンパンと猫耳フード付きショルダージップスリットパーカーについた埃を叩いて落としながら、二体のオークジェネラルを見据える。
二体のオークジェネラルは、私が今吹き飛ばされたこの場所に追撃を仕掛けて移動をしてしまうと、せっかく私を追い込んでオークの集団の近くに移動させたのに、離れてしまうせいなのか追撃をしてくる事はなかった。
してくる事はなかったが……二体ともニヤニヤした表情を浮かべていた。
まさかこの程度の策略で私を倒せると思われちゃった?
キィちゃんとさっちゃんにも心配をかけちゃったし、反省をしないといけない所は多いけど、とりあえずこのオークジェネラル二体にダメージを与えておいて、こちらにやって来る二人と一緒に倒せば良いか。
「協力プレイだねっ! でもそれまでにダメージは与えておくよ!」
私は影残を使い片方のオークジェネラルに斬りかかると、それを防がれた瞬間に今まで使っていなかった体術を使って足払いをする。
それによってオークジェネラルは転び、そこを忍刀で串刺しにしようと試みるが、もう一体のオークジェネラルによって阻止された。
魔物の癖に無駄に連携が良い。
そして私が次の行動に移ろうとしたその時、オークの大きな叫び声が2ヵ所からあがる。
どうやら、キィちゃんとさっちゃん、マコトちゃんと天音ちゃんの所にもオークジェネラルが出現したようだった。
私はそれならこちらは早く倒さないといけないと思いながら、二体のオークジェネラルと攻防をしていると、ドーン! という大きな音とともにお兄ちゃんの近くに目の前のオークジェネラルよりも圧倒的に大きな力を感じる敵が出現したことを感知した。
「オークなのにやるね。そんなつもりもなかったんだけど、どうやら無意識のうちにどうせオークだからって思っちゃってたかも。ハァ……」
私は二体のオークジェネラルと対峙しながら、ため息を吐く。
そしてそのまま一瞬だけ息を止めると、深く深く集中するのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ユアッシャーは空耳、さらにその後は英文を普通に訳しただけなので、替え歌にはならず(読者さまが頭の中で思う可能性があるだけ)著作権には問題がないと思われますが、もし問題がある場合には、
この訳した部分を無くします。
それでただの文章になると思うので……。
それでもダメな場合はユアッシャーの所もなくしますが、空耳だしな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます