第157話 今宵チェック 本音出す
☆
俺はなぜか一人でウルフを蹂躙しているアステルを横目に見ながら、ダンジョン攻略道のメンバーのいる場所にこっそりと移動すると水戸君に話しかける。
「お疲れ。こっちは大丈夫だった? てかなんでアステルがいるの?」
「ああ、蒼月。こっちはギリギリ。結構危ない時に……数分前くらいかな? アステルが来て、良く分からないけど今はこんな感じ」
「あー! 蒼月君ー。遅いよー。なにか問題でもあったのー?」
俺は水戸君に状況を聞き、七海さんには逆に俺の話を聞かれたので、魔物寄せ器が9個も野営地の周りに置かれていて処理して回った状況を攻略道のメンバーに話す。
「それは……明らかに人為的にこちらへ魔獣をしむけていますわね。ギルドと学校へ報告をしなくてはいけませんわ」
「だね。俺もそう思う。さすがに冗談でここまではしないだろうし。でも動機も犯人もわからない」
俺たちがお互いの情報を話し合っていると、残敵をすべて倒したアステルが近くにやって来た。
俺はお前は何でいるんだよ? という目を今宵に向ける。
「来ちゃった」
「あ、はい」
俺はなぜかその一言に狂気を感じ、ただ頷くのだった。
「アステルちゃん、ありがとうやで!」
アステルが俺たちの所へ移動したのをみた榎本は、それなりに離れた位置にいたのだがアステルのもとへと駆けつける。
そしてアステルはその後に九条君や堂島君、椿や一ノ瀬さんからもお礼を受けていたが、九条君と堂島君は何故かモジモジしながら恥ずかしそうにアステルにお礼を言うのだった。
「くぅーん」
「え?」
鳴き声を近くに聞いてその音の出所を探すと、椿の足元に傷ついたフォレストウルフが伏せをして鳴いている。
「なんや? まだ残ってたんかいな。ワイがやるで」
「ま、まってくれ榎本君。この子からは敵という感じがしない」
「椿? どういうことなの?」
魔獣を目の前にして敵ではないと言い出した椿に、一ノ瀬さんはどういうことかと話を聞いている。
「たぶんこのフォレストウルフは最後に私が切りつけた個体だと思うんだが……、うん? JOBを従魔剣士に変えれば良いのか?」
椿は前半はこのフォレストウルフの説明を、そして後半は新たなジョブが現れたのか独り言を言うと、おもむろにポーションを取り出して怪我をしたフォレストウルフにかけて治療をする。
「ほ、ほんまに大丈夫なんかいな」
「あ、ああ。どうやら私の従魔になったみたいだ」
それを聞いて全員が驚く。
魔獣を従魔として連れている探索者はいないわけではないが、数が少なくどうすれば従魔を得ることができるかはまだ判明をしていない。
一説ではスキルがあればということであったが、椿の場合はどうやらJOBで従魔を得ることに成功したようだった。
いや、ジョブを変える前から従魔にしている感じだったので、そのジョブについていなくても発現をしただけでも効果があるのかもしれない。
「うーん、階層移動は魔法陣に乗れば私たちと同じように移動できるようになったみたいなんだが、放置をしておけば討伐されてしまう。許可もないうちからダンジョンから出しても良いものなのだろうか。一体どうしたら……」
俺が従魔について考えていると椿がこのフォレストウルフをどうすれば良いか悩んでいるようだった。
確かに従魔で言うことを聞くと言っても、6階層においておけば討伐されるよね。
それにいきなりダンジョンからフォレストウルフを連れて出れば、ひと騒動おきてしまうかもしれない。
「こんなこともあろうかと! このアステルが持つ従魔の指輪を条件次第であげてもいいよ! あ、条件はその左手の人差し指にある指輪を外すことね?」
アステルが急に大きな声を出したかと思うと、従魔の指輪を持っていると言い出した。
しかも何故か椿が付けている婚約契約指輪を外せと注文を付けている。
「こ、これは……すまない。(契約で)外せないんだ」
「うーん。なら、ポーションもあるし一度その指を切り落としちゃおっか」
「「え!?」」
俺はその一言に戦慄して今宵を見やると、椿も同じように人差し指を切り落とせと言われると思っていなかったのか驚いて人差し指を隠していた。
いやいや、今宵さん? どうしちゃったの? 指切断はポーションではどうだろう? 初級では生えてこなかったんじゃないかな~?
「まあ仕方がないかー。アステルの口寄せの術用の指輪だったけど、あげるよ。でもその子(フォレストウルフ)が運命の子なんだから、この指輪は左手の薬指に付けてね? それならあげる」
「そ、それでいいなら」
椿は従魔の指輪を左手薬指に付けることを了承すると、今宵からその指輪をもらい指にはめる。
そして念じることでフォレストウルフは消え、また出るように念じると現れるようになったのだった。
「その指輪の中に入っている間は亜空間だから食事はいらないよ。でも当然だけど外に出している時にダメージを受けすぎると死ぬし、ご飯もいるからね」
「わかった。本当にありがとう」
「それで魔石はどうするの? アステルが倒したのもあげるけど、早く取らないと消えちゃうよ」
「「「あ!」」」
それから俺たちは全員で死体が消える前にできるだけ多くの魔石を取り出すと、野営を切り上げて従魔報告と今回の出来事についての報告をギルドへ済ませると、解散をしたのだった。
「んで今宵、あの従魔の指輪はどうしたんだ? あんなの作れなかったろ?」
俺はダンジョン内で一度別れた今宵がいたので近寄ると指輪の話を聞いた。
ちなみに椿は従魔のことでまだギルドに残っているためにここにはいない。
「あー、あれね。こないだ町を歩いてたら変装してパンケーキを食べてる矜侍さんに遭遇したから、そのお店に突撃して今宵もパンケーキを食べたんだよ。その時にNINJAに口寄せの術って無いのかを聞いたら、あるって教えてもらって、呼び出したらこれにいれると良いよってもらったやつ……」
えぇ?
そんな大事な貰い物を椿にあげちゃったの?
「お前それ大丈夫か? 矜侍さん怒るんじゃ?」
「うーん たぶん大丈夫! パンケーキとかもご馳走してくれたし、何かあれば相談しろって言ってくれてたから!」
まあ、椿も矜侍さんから婚約契約指輪を露天で買っているし、縁があるから大丈夫なのか?
ただ、従魔の指輪の話をする
魔道具って言ったら、矜侍さんは一枚噛んでそうだしね。
それと今更ながらに今宵が急に来たことで気が付いた事があって、ダンジョンゲートを通る時に今宵はアステルだとギルド側にバレているのでは?
シュテルンにしてもバレている可能性が高い気がするが……。
恐らく、現状で何も言われないので、防具の時に矜侍さんがしてくれた工作がギルドにもされていると考えても良いのかもしれない。
それでも推測が正しくない場合には対策が必要になるので、俺はそのことも聞いてみることにする。
「一応矜侍さんに連絡しておくぞ?」
「あ! それなら新しい従魔の指輪がほしいって今宵が言ってたってお願いして!」
フィクサーと畏れられる矜侍さんにそんな気軽に頼みごとを俺にさせようとする今宵を横目に、俺は矜侍さんへメールを送ると、今宵と帰路についたのだった。
夜になって矜侍さんから返信が届く。
魔物おびき寄せ器の話については「ふーん」という感じで興味があるのかないのか分からなかったが、俺たちがダンジョンゲートに通る時にアステリズムの正体がバレているのでは? という話については、ゲート自体が矜侍さんを認識させないように弄っているので俺たちにはそれを既に適用していることと、洗の……仲の良いギルド職員にも手をまわしているそうで問題にはならないようだった。
ちなみに、今宵の願いの従魔の指輪はダンジョンコアの欠片を使って作っていたそうで、2個目は断られた。
2個目も貰えると思ってた今宵は見る影もなく落ち込んでいて、あの女のせいで! と目からハイライトを消して呟いて危険だったので、「自分からあげたよね」と俺が言うと、そうだった……と
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以下、九条君たちのステータスです。
<名前>:九条 レン
<job> :剣士
<ステータス>
LV : 15
力 :D
魔力 :D
耐久 :D
敏捷 :D
知力 :D
運 :D
魔法 :
スキル:武器マスタリー5、身体強化、精神耐性
<名前>:堂島 海斗
<job> :魔法士
<ステータス>
LV : 15
力 :D
魔力 :D
耐久 :D
敏捷 :D
知力 :D
運 :D
魔法 :氷魔法2
スキル:身体強化、集中
<名前>:十六夜 椿
<job> :従魔剣士(change)
<ステータス>
LV : 14
力 :D
魔力 :E
耐久 :D
敏捷 :D
知力 :D
運 :D
魔法 :
スキル:剣術3、身体強化、俊足
<名前>:一ノ瀬 葵
<job> :ヒーラー
<ステータス>
LV : 14
力 :D
魔力 :D
耐久 :E
敏捷 :D
知力 :D
運 :D
魔法 :回復魔法
スキル:身体強化、魔力アップ
<名前>:榎本
<job> :斥候
<ステータス>
LV : 14
力 :D
魔力 :D
耐久 :D
敏捷 :D
知力 :E
運 :E
魔法 :
スキル:気配察知、身体強化、素早さアップ
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