第130話 指輪型アイテムボックス!?
俺たちはトワイライトの件を家族内で共有した結果、同じクランに二度もトラブルに巻き込まれていて、一度目は殺される可能性もあったことから、三度目もあると想定して行動をすることに決める。
具体的には、俺たちに特に関りのあるメンバーには周知させることと、担任の冴木先生とダンジョン攻略道顧問の桃井先生にも情報を提供しておくことになった。
冴木先生と桃井先生に連絡をするのは、この問題を重要視しているということを分かってもらうために父さんがすることになり、昨日の夜には桃井先生に連絡をしている。
桃井先生に先に連絡をした理由は、両親が一度パーティを組んでダンジョン攻略をしていることや休日に俺たちに交じって攻略をしているという気安さからだった。
そこで桃井先生が冴木先生には自分からどうしても伝えておきたいとの話から冴木先生の連絡は任せることにした。
父さんによると、桃井先生は距離を縮めるにはこういう連絡で共通の問題をこまめにすることが重要なのよぉと言っていたとのことだった。
それを受けてか、学校での今朝のホームルームでは学校外でのトラブルになりそうな場合の対処法が冴木先生からクラスに伝えられていた。
しかも冴木先生が学校内で情報を集めた結果、毎年外部生のみ……1-5クラスの何人かはトラブルに巻き込まれて怪我をしたりすることがあったそうだ。
毎回それが外部入学生だけということもあって、1-5クラスは落ちこぼれという認識が先生の間でも広がっていたのかもしれない。
そしてその日の放課後。
俺はダンジョン攻略道のメンバーとは別れて、今宵とダンジョン前で待ち合わせをしていた。
なんでも凄いことを思いついたらしく、その実験に付き合ってほしいという。
「あ、おにいちゃんお待たせ!」
「「こんにちは」」
「おー。んで昨日聞いても明日のお楽しみだって内容を教えてくれなかったけど、何の実験をするんだ?」
俺は今宵とキィちゃんとさっちゃんの3人に手を挙げてこたえ、昨日今宵が言っていた実験の内容を聞いてみた。
「まーまー、とりあえずダンジョンの中に行こうー」
俺は今宵に促されてダンジョンの中に入る。
そして向かった場所は1階層の魔法陣。
「魔法陣に乗ったらお兄ちゃんは何もしないでね。ダンジョンパーティに全員登録されていることを確認してー。よし、じゃあみんな乗ってー」
今宵がそう言うと、俺たちは魔法陣の上に乗る。
その後に今宵が何かさっちゃんに目線を送ると、さっちゃんは『てぃっ』とした。
おお、さっちゃんだけそのリアクションは何か意味があるのか?
俺がそう思っていると、どうやら転移したようだった。
「やった! 成功した!」
「「すごーい!」」
「これで楽になるね!」
「「うんうん!」」
?? 今宵たち3人は盛り上がっているが、俺にはなぜ盛り上がっているかさっぱりわからない。
ここは……11階層だけど、今宵が転移してみんなを連れて来ただけで何も変わった所はないんだが?
「今宵? もう実験は終わった? 俺には何か変化があったようには思えないんだが……」
「あっ! えっとー。今はさっちゃんが魔法陣転移を使ったんだよっ!」
「お、レベル21になっていたのか? ああ、それでさっちゃんでも使えるかどうかっていう実験ね」
俺がそういうと、今宵は人差し指を立てて横に何度も移動させ口でチチチと音を出した。
「それが違うんだなー。なんとさっちゃんの付けている指輪に、11階層に行ける付与をかけました! 付与をゲットしてから何度も試行錯誤してたんだけど、空間魔法みたいに行ったことのあるどの階層でもって言うのは無理だったから、今日は階層を11階層に限定したんだよね~。それが上手くいった!」
今宵がそう言うと、さっちゃんはその指輪を俺に見せて来る。
付与……凄いな。
付与のレベルが上がったら、階層指定をしなくても良くなるとかなのかな?
って言うか、普通にマジックバッグが作れるのでは?
「って言うかアイテムボックスを付与したらマジックバッグになるんじゃないのか?」
俺はそう言うと、今宵はハッとした顔をする。
「お兄ちゃん賢い!」
いやいや、魔法陣転移に行きついていたんなら、普通は先にアイテムボックスの付与を思いつきそうなもんだけどな。
今宵が困っていなかったからか?
魔法陣転移についてはタクシー代わりに利用されるのが面倒だったので、今宵もなんとかしたかったのかもしれない。
「うーん、この着替えとかを入れている袋に付与してみよっかなー」
今宵はアイテムボックスから袋を取り出してどれに付与するか悩んでいるみたいだ。
「ってか、魔法陣転移が指輪に付与できたなら指輪とかにもアイテムボックスを付与できるんじゃないか?」
俺が思ったことを今宵に伝えると、自分が付与したものに二つ以上の付与はまだできないそうで、自分で
「ん~? なんかできたっぽい? キィちゃん使ってみて」
今宵はそう言うと、アイテムボックスの付与をかけた指輪をキィちゃんに渡した。
「試してみるね~」
キィちゃんがそう言うと、手に持っていたハルバードが消える。
どうやら成功したみたいだ。
「やった! あ、でもハルバード1本で限界みたい?」
「むむー。結構少ないね。でも量産しまくれば、みんなも荷物を持たなくていいね」
んん? 俺は今宵のこの発言を聞いて何かに引っかかる。
空間魔法と付与があればアイテムボックスが指輪なんかであっても使えるのに、矜侍さんが作らないはずがない。
マジックバッグを作った会社のロゴがkyouji companyと刺繍されていたので、間違いなく矜侍さんが絡んでいるはずだ。
「待て今宵。それを作るのは何か問題があるかもしれない。マジックバッグだけしか世間に流通していないし、矜侍さんがそれを作っていないのはおかしい」
「え? うーん。矜侍さんも気づかなかっただけかもよ~?」
まあたしかに? その可能性はゼロとは言わないが、あの矜侍さんが気づかないだろうか?
「まあ、とりあえず連絡して聞いてみるから、一旦ダンジョンの外に出るぞ。それ以上作るなよ」
俺はそう言うと、3人を連れてダンジョン外にでて矜侍さんに連絡をとるのだった。
「でもお兄ちゃん、返信はすぐには来ないだろうから16階層でも行こうよ」
連絡をとってから数分。
3人でワイワイ話していた今宵が、こちらに来てダンジョンに潜ろうという話をする。
俺はそれもそうだなと、今宵に返事をしようとした瞬間、今宵の隣に矜侍さんが現れるのだった。
「おーっす。連絡をくれて助かった。まあ、家族分くらいなら作るのは良いが、量産しすぎたり流通させるのはダメだ。魔法陣転移もそうだが、特にアイテムボックスは小型化させて流通させると、容量が少ないものだと値段も大きく下がるだろう? そうすると、一人一つというようなものになってしまっては、窃盗や他の犯罪を阻止できなくなるからな」
あー、指輪型のアイテムボックスなんてあれば知らない間にお店の商品を入れたりすることが出来るのか。
あれ? でもそうなると、マジックバッグも同じでは?
「ああ、マジックバッグも同じでは? って言う様な顔をしているな? マジックバッグは俺が一つ一つうーん、この世界での説明だと……、
頭がパンクしてしまいそうな話が出てきた。
まあ、とりあえずは入れちゃダメなものは勝手に
「むー、残念! 今宵も楽に大儲けできると思ったのに~」
今宵が頬を膨らまして、下衆なことを言っている。
「ハハハ。まあそう言うなって。世界が修羅の国になったら嫌だろう? 仲間に配る……のなら、お前が命を賭けてでも守りたいと思える奴にだけにするんだな。それと、魔法陣転移の方は渡す人を広げても契約魔法で縛っているやつだけだな」
矜侍さんはそう言いながら、今宵の頭をガシガシと撫でた。
「んじゃあな。頑張っているみたいだが、また何かあれば連絡しろよ」
「はい」
矜侍さんはそう言うと、また一瞬で消えるのだった。
「じゃー、さっちゃんにもはい!」
今宵は矜侍さんがいなくなると、すぐさまさっちゃんにもアイテムボックスの付与をかけた指輪をあげていた。
そして俺たちはその後、16階層で訓練をしてから帰宅をしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます