第四章 ダンジョンは未来への希望か悪の温床なのか

第128話 席替え!

 *******



 ダンジョン攻略道が創部されてから、約2週間目(16日後)の7月11日水曜日の午後の授業を終えて帰りのホームルームで席替えをすることになった。


 なぜなら7月の初めに期末テストがあり、本日すべての答案用紙が返却されてクラス内の順位が確定したからだった。

 クラス内順位は様々なポイントで計算されていて、そのポイントがすなわち学年での順位でもある。


 ただまあ、他クラスの人のポイントは本人が言わない限りバレることはないので、3学期の試験が終わって総合順位が出るまでは基本的に予想をするしかない。


 基本的にと言うのは、他クラスに友人がいたりした場合にはその人のポイントを教えてもらって、そのクラス内での順位と自分のポイントを比べれば上か下かがわかるために、その時点においては2年時にどのクラスに行けるか大まかな予想がつけられる場合があるからだ。


 「よーし、移動し終わったな。次の席替えは2学期の期末が終わった後になるぞー。この学校ではクラスでの順位が席順でバレるからな。入学の時点より下がった者は頑張れよー。では解散」


 冴木先生はそう言うと、ホームルームを終えて帰っていった。


 「蒼月君は私の予想通りの順位だったねー。自分の予想は外しちゃったけどー」


 そう言って俺に話しかけて来るのは隣に移動してきた七海さんだ。


 「由愛とはまた近くになれたね! 蒼月君もよろしくね!」


 そして俺の後ろには葉月さんになって友人に囲まれると言うミラクルが起きていた。


 「どうせなら後ろが良かったけど、近くに二人がいるならここでも良いか」


 俺自身はこの席は出入り口から遠いこともあって好きではないのだが、友人が近くにいるというのは話し相手に困ることもないし、一つを除いてそれはそれで嬉しいことだった。


 「七海さんと葉月さんに負けちゃったね。近くになったよしみでよろしくね」


 「あはは。私はマグレだけどねー。よろしくー」


 「よろしく!」


 そう一つを除いてと言うのは、俺の右斜め後ろには九条君がいるのだ。


 「椿と海斗もよろしく」


 「あ、ああ」


 「おう」


 さらに葉月さんの後ろには椿がいて、その隣には堂島君がいた。


 そう……俺はなんと、クラス内順位1位の席にいたりする。

 2位が七海さんで3位が葉月さん。

 4位が九条君で5位が椿、6位が堂島君となっている。


 他のダンジョン攻略部のメンバーはと言うと、7位に水戸君がいてその隣が一ノ瀬さん。


 そして……、


 「あ~。一番前とか最悪だし。ななみんが隣だからマシだけど~」


 「あはは、私はみんなが近くて嬉しいよー」


 猪瀬さんは11位で七海さんの隣にいて、机に突っ伏し一番前の席を嘆いている。

 七海さんと葉月さんでわかっていたけど、猪瀬さんの期末の成績を聞く限りではもう少し順位が低い気がするので、これは個人戦の成績が結構なポイント加算になっているのかもしれない。

 


 ちなみに、張本は29位で青木は30位の最下位となっていた。


 と言うか、ダンジョン攻略道のメンバーと九条君のパーティメンバーがあまりに近くにいすぎて、今まではそれぞれ1位席付近でカーストトップグループ、そして最下位席の辺りでダンジョン攻略道のメンバーがたむろすると言う感じで離れていたのに、これでは近距離で二つのグループが集まることになってしまう。


 どちらのメンバーも上位にいて席も近く、どこの席で集まってもお互いが近くなってしまうのだ。

 ラノベなら普通作者の都合で場所を分けるよな……。

 毎回他のグループが会話に混ざったりしたら邪魔だろうし。

 俺は現実逃避をしながらリアルを嘆く。


 「あおっち早く部室にいこうよ~。リザードマンとギルーマンを倒す時間がなくなるし?」


 俺たちの秘密を猪瀬さんが知ってから約3週間。彼女と水戸君の二人はパワーレベリングを経て一気にレベルも11の壁を超えている。

 現在はレベル15になっていて、11階層の金銀トラップ部屋で銀のトラップだけを発動させ50匹以上のリザードマンやギルーマンを相手に集団戦を楽しんでいた。


 「え!? 七海さんたちってもう11階層に行っているの? 凄いな。でもいくらミノタウロスがほぼ沸いていないからと言って、10階層を飛ばしていくのはもしもがあって危ないよ」


 九条君が猪瀬さんの話を聞いて七海さんたちに話しかける。

 端末で確認できるレベルでは、九条君たちのパーティも全員がレベル11の壁を超えていて1-5クラスでは俺たちと九条君たちは完全に一歩も二歩も抜けている状態になっていた。


 猪瀬さんや水戸君はステータス偽装は覚えたが、魔法やスキルを自力で覚えたということもなく、隠しているのはレベルを少しだけ下げるということと覚えたステータス偽装を隠すと言うわけわからないことになってしまっていたりする。


 ただ、端末でわかる情報であれば俺たちと九条君にレベルの差は殆どなくて、今の俺たちでは10階層のミノタウロスに遭遇すると、死ぬ危険が高いということを忠告してくれているんだろう。


 「あ、あはは。そうだねー。10階層でミノタウロスを倒すのに順番待ちをしているパーティがいる時だけ、先に進んでいるからたぶん大丈夫。心配してくれてありがとー」


 「蒼月どうしたの? 部室に行こう」


 俺が自分の席に留まっていると水戸君がやってきて部室へ促す。

 俺はそれを聞いて七海さんたちに目で先に行くねと言ってから、水戸君を追って前方の出入り口へ移動した。


 出入口にさしかかると、22位の席にいるクラスメイトの所に青木と張本がいて話をしていた。

 青木は俺と目が合うと嫌そうな顔をする。

 俺は普段であればこの二人を無視するのだが、今回の席替えで青木と張本の席が羨ましくてつい話しかけてしまった。


 「二人の席の場所が羨ましい。戻りたいよ」


 「ハァ? テメー! 調子に乗りやがって!」


 席替えまでいた前の俺の席は、今思うと出入口に近くしかも一番後ろという立地条件は最高だった。


 「お、おい蒼月。蒼月が過去のことでこの二人に言いたいことは理解できるが、ほっておいてもう行こう」


 「え? うん」


 俺は返事をすると、水戸君と一緒に移動する。

 青木たちはまだ何か言っていたが……、話しかけたとはいえ長く話すつもりもなかったし、俺に対してはいつも通りの喧嘩腰なので放置で良いかな。


 「あ、あおっちとミトミトー。待ってよ。あたしたちも行くし!」


 九条君たちと話していた猪瀬さんからも声が掛かり、こちらにやって来る。

 俺たちは結局全員で部室へと向かうことになるのだった。





 ―――――――――――――――――――――――――――

 四章開始の導入部分です。2話でもわかりにくかったですが、一応席順を下記に書いておきます。

 見る機種によって盛大にズレたらごめんなさい。


            前方出入り口

 1位 2位 11位 12位 21位 22位

 3位 4位 13位 14位 23位 24位

 5位 6位

 7位 8位

 9位 10位      29位 30位

            後方出入り口


 128話時点の猪瀬さんと水戸君のステータス(偽装なし)

 <名前>:猪瀬 里香

 <job> :フラッパー

 <ステータス>

 LV  : 15

 力  :D

 魔力 :D

 耐久 :D

 敏捷 :D

 知力 :E

 運  :D

 魔法 :

 スキル:身体強化1 ステータス偽装(NEW)


 <名前>:水戸 光成

 <job> :ランサー

 <ステータス>

 LV  : 15

 力  :D

 魔力 :D

 耐久 :D

 敏捷 :D

 知力 :D

 運  :D

 魔法 :

 スキル:身体強化1 ステータス偽装(NEW)





 

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