第124話 死神さん家にお邪魔しました
16階層を引き続き探索する。
序盤にキィちゃんの意識を失わせてしまうという大失態はあったが、それ以降は一定以上の出力の魔力を纏わせられるなら素手でもゴーストは倒せることが判明して一気に雑魚化したのだった。
ただ、俺たちは今宵と母さんの魔力感知、俺と父さんの気配察知があるために不意を突かれることはないが、ダンジョンの壁をすり抜けてくる場合もあって、その場合に感知系スキルを持っていないとキィちゃんが陥ったような状況にパーティでなってしまうかもしれない。
しかも今宵と母さんが言うには、ゴーストを倒すとその瞬間に近隣に魔力波のようなものが流れて仲間がやられた事を感知してゴーストが集まって来ているらしい。
一度対戦してからかなり頻繁にゴーストが出現していたのは、そういうことだったのかと理解した。
「あ、なんか違うの来る。レイスかな?」
今宵が今までと違う敵が来ると全員に声をかけた。
恐らくレイスだろう。
「さっちゃん、次の敵に
「はい、わかりました」
俺はレイス相手にどの程度、さっちゃん特製のスタミナポーションが効くのか知りたかったので、さっちゃんに試してもらうことにした。
「おぉ……。死神だ! 鎌を持ってる!」
父さんの説明で聞いていたはずのレイスの外見をみて今宵が興奮する。
「行きます!」
ポイッ
・・
・・・
・・・・・・
ブシュゥ!
「「えぇ……」」
悪霊退散!
「あ! レベルが上がった! ってここにいるとヤバいかも~。四方八方から敵がすごく集まってきてるよ!」
今宵がレベルが上がったと言った後に、すぐさまここは危険だという話をする。
「矜一、どこかに大きな部屋でもないのか? 追いかけてくるかはわからないがレイスが断末魔で呼んだなら、もう少しひらけていて戦いやすい場所で戦おう」
俺は父さんの意見を聞いて、空間把握で周りの地形を把握していき調べて行く。
そこである程度移動する事にはなるが、父さんの言う条件に合った大部屋を発見したのでそこへ皆を誘導する事にした。
「少し先に大部屋があるみたい。こっち!」
俺たちが移動して大部屋に入ると、そこにはレイスが1体とゴーストが10匹ほどいる事を確認した。
これはモンスター部屋か?
こういう場所を探していたこともあって俺は敵を視界に入れるとすぐさま魔法を放った。
「シャイン・レイ!」
「ちょ、ま……」
父さんがなぜか一瞬止めようとするが、俺はすでに少し多めに魔力を込めた光魔法を放っている。アンデッド系には光魔法は定番だからね!
「仕方ない。ウインドカッター!」
俺のシャイン・レイでレイスが消滅したことを確認した父さんは風魔法を使って周りのゴーストに取り掛かった。
「じゃあ私も。ファイヤーボール!」
「稲光!」
母さんと今宵も参戦して大部屋には平和が訪れた。
「いや、矜一よ。レイスとゴーストは倒したら仲間を呼ぶんだよな? そうなるとさっき呼ばれて集まってくるやつ以外もここに集合するし、この部屋はどう考えてもモンスター部屋だよな? 敵の出現時間がわからないが、今まで通りだと30分で湧くわけだが……。無限湧きみたいになると思うんだが?」
父さんが俺の思慮の足りなさを注意してくる。
でもこういう場所を探していた訳だし問題ないのでは?
俺は仲間を呼ぶ特性を含めて、逆にこの部屋を見た瞬間嬉しかったんだけれども。
「無限湧き!? 楽しみ! バッチコーイ!」
「今宵……」
父さんが今宵を残念な目でみる。
「矜一。
「でもすでに敵に認知されてたし、倒さないって選択肢はなかったよね? 無限湧きになるならレベ上げにもちょうど良いし……」
「それはそうなんだがな。これが若さか」
「そうね。条件には合っているし、戦うことにも変わりがない。私たちからするともう少し判断する時間が欲しかったと言っても、たしかに結果は変わらないのよね。二人で冒険してた時なら恭也さんも同じことをしていそうだし」
なぜか父さんと母さんが若かりし日を思い出して遠い目をしている。
でも父さんたちはマコトたちに、11階層で金銀トラップブートキャンプをしようとしていたよね。
結局はやらなかったと言っても、あっちの方が無茶だと俺は思うよ。
ただ、敵に認知をされていたと言っても、父さんや母さんに確認をとって攻撃する時間はあったので、その辺りは俺ももう少し改善しようと思う。
「来るよ~」
今宵がそう言うと、ぽつぽつとゴーストが大部屋に侵入してくる。
はじめちょろちょろ 中ぱっぱ 疲れて泣いても手を緩めるな これは小学校の時などの
初めちょろちょろってのは江戸時代にご飯を釜で炊くときに、もみ殻を使って火おこしをして、最初はどうしても火力が上がらないことから言われていた言葉なので、現代の実際の飯盒炊爨では最初から強火でないと、上手くご飯は炊けないので間違えないようにしたい所だ。
そこから数時間……俺たちは延々とゴースト&レイスと戦い続けた。
休憩をしようにも部屋の中でモンスターは湧くし、倒すごとに仲間を呼ばれるために、いくらでも大部屋へモンスターが入ってきて入れ食い状態なのだ。
レイスは光魔法とさっちゃんのスタポで瞬殺できることが判明したので、普通の魔法や魔力を纏わせた攻撃ならどうだろうと父さんたちが試した結果、光魔法とスタポ以外では激戦となって、その戦っている時間に手数が足りなくなった。
そのため、レイスが出た場合は光魔法が使える俺、母さん、父さんがシャイン・レイを使うことによって対処する事となった。
「しかし、移動のマラソン以外でさっちゃんのポーションのお世話になるとはな。助かるよ」
父さんが無限湧きへの対処で疲れて、さっちゃんのスタミナポーションがあって良かったと話しながら手を動かして、敵を倒している。
「いえいえ~。お役に立てるのがうれしいです」
さっちゃんも暢気に返信しているように聞こえるが、手をしっかりと動かして魔物を処理している。
白鳥が優雅に水面を泳いでいるように見えて、実は水面下では足を一生懸命に動かして進んでいるのと同じだね。
ちなみに俺を含めて全員が既にさっちゃんのスタミナポーションのお世話になっている。
ある程度敵を倒して魔石が貯まると回収しているのだが、またこの作業がみんなの戦闘をかいくぐりながらする必要があるために面倒くさい。
「あ、レベルがあがったわ」
母さんのレベルが上がったようだ。
この大部屋で戦闘をしている間に俺と父さんのレベルも上がっているので、これで家族全員がレベル21で壁を超えたことになる。
まだ覚えてはいないが戦いながら覚えられる魔法やスキルを調べたところ、俺には契約魔法が出ていたのでとりあえずは一安心だ。
実際に俺が覚えるかどうかは4人の覚えられるものを聞いて相談してからになるけどね。
「よし、じゃあ今日は少し早いがこの辺にしておくか。矜一、17階層へ向かう魔法陣へのルート案内を頼む」
「うん。了解」
俺はそう言うと端末を開いてマップを確認する。
「じゃあ戦いながらついて来て」
俺はそう言うと、周囲から襲い掛かってくる無限湧きの一角……、通路に出るためのゴーストを一掃するとみんなに声をかけた。
敵を倒せば呼ばれて襲ってくるので俺たちは魔法陣に向かうまでもずっと戦闘をすることになったが、無事に魔法陣まで移動し転移をして、ダンジョンの外へ出ることに成功するのだった。
「楽しかったね~! でももう少し戦う時間はあったんじゃないのー? お父さんにしては帰ろうって言うの早かったよね」
今宵は楽しかったというが……、いやまあ程よい疲れで俺も一仕事した感じにはなってはいるが、、
「ああ、それはな。この後で今宵にはハイオークをギルドと企業に卸してもらうことになるが、それでパーティでの金額がな。さすがに多くなりすぎるだろう? だからこの後にキィちゃんとさっちゃんの親御さんと話をしておこうかと思ってな。あとマコト達の養護施設にも話を通しに行こうかと思ってる」
「え? 私たちの親と話すんですか?」
さっちゃんが自分たちの両親と俺の父さんが話をすると聞いて父さんと話をする。
「ああ、悪いけど二人とも連絡をとってみてくれ。急で悪いが、できればこの後に話に行けたらと思う。今回だけのパーティだけではなく、起業と絡めて税金関係の処理が楽になる探索者クランも作ろうと思ってるしな。二人ともクランを作ったら入ってくれるだろう?」
「それはもちろんです!」 「私も」
ほえー。父さんも大変だなぁ。
ただ戦って素材を落としてってシンプルに考えていたけど、確かに今宵たちは中学生だ。1日に何十万、何百万円も稼ぐことになったりしたら、いくら探索者協会ができて探索者証で税金やもろもろの管理がしやすくなっていると言っても、親御さんとの話し合いは必要かもしれない。
しかしクランか。
ちょっと楽しみだ。
今のメンバーだけなら配分率で揉めたりすることもなさそうだけど、家族以外がアイテムボックスを覚えたりマジックバッグを持ったりしたら揉めることもあったりするのだろうか。
俺はそんな未来を想像しながら、父さんたちのやり取りを聞いて物思いにふけるのだった。
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