第117話 メガネ

 月曜日の午前の授業を終えて、俺は食堂で1-5のダンジョン攻略道のメンバーの皆と一緒に昼食をとる。


 「えー皆さま。あたしとミトミトはついに……レベル6になって壁を超えました! はい、あおっち拍手ー。パチパチ―!」


 「おめでとう!」


 俺は祝いの言葉を言いながら拍手をする。

 皆が集まって食べる前に一呼吸置いて「あたしとミトミトは……」なんて言うから、付き合い始めました! とか言うのかと思っちゃったよ。


 猪瀬さんといえば土曜日のダンジョン探索部との競争の帰りに、イケメンメガネにやたら話しかけられていた。

 言動も俺相手には今までと大差はなかったが、猪瀬さんには見下した感じがとれていた。


 いや猪瀬さんだけではなく七海さんにも話しかけていたし普通に会話をしていたので、二人の評価が爆上がりしたって所だろうか。


 俺も今ならもしかすれば生徒会の美和さんと仲良くなれるのではないのかと思って勇気を出して話しかけようとはしたのだが、美和さんは疲れ果てていて女性がしてはいけない顔をしながら歯を食いしばって移動に専念をしていたので諦めた。残念。


 だから俺は寂しく帰り道で先に魔獣を狩って、皆の手を煩わせないように頑張ったよ!

  


 「いやぁ、身体能力のスキルがあるとこんなに動きに余裕が出るとは思わなくて。内部組って全員が最低でも1回は壁を超えているって思うと、僕たちはもっとダンジョンに潜って訓練をしないといけないと思ったよ。攻略道に入れてもらえて本当によかった」


 水戸君は身体強化を選んだのか。

 それなら猪瀬さんもかな? 

 たしかに身体能力のスキルは全体的に1.25倍上がると言われているから、体感でもわかるくらいには違いが出てくる。


 「うんうん。土曜日にあたしが身体強化を持っていれば、あおっちにおんぶをしてもらわなくても良かったんだけどね。ごめんね」


 「いや、あの時に言ったようにご褒美だから気にしないで」


 俺が猪瀬さんに気を使わせないようにそういうと、なぜか顔を赤らめて下を向いてしまった。


 「ええ? 由愛。これってどういうことなの!?」


 葉月さんが俺と猪瀬さんのやり取りを見てなぜか驚いて、七海さんに話を聞いている。


 「うーん……。蒼月君って、ちょっと抜けてるからー」


 いや、競走中に疲れて仲間におんぶをしてもらうって自分の力不足を気にしてしまうだろうから、それを感じさせないようにこっちも気を使って猪瀬さんに接しているのにディスることはないんじゃないの!?


 「土曜日の蒼月たちは凄いよ。3年に勝ってしまうんだから」


 「それはほんとにそう思う! ダンジョン探索部の3年生ってどんな感じだった? 凄かった?」


 水戸君が俺たちの勝利を凄いと言ってくれて、葉月さんは3年生がどんな感じだったのかを聞いてくる。

 ダンジョン探索部の3年生……う、うーん?


 「うーん、最初にお互いが様子見をしてスタートしなかったところは見ていたと思うんだけど、あの後は俺たちは先行逃げ切りに作戦を変えて全力で先を進んだから……、正直ダンジョン探索部の人たちとは一切会うこともなかったんだよね」


 「そうそう。妨害してくる可能性とか考えていたのにねー」


 「そ、そうなんだ」


 「生徒会のイケメガネも絶対に悪い奴だと思ってたけど、案外良いメガネだったし~」


 「あれもビックリよねー」


 「え? あのイケメンメガネは良い奴なの!?」


 葉月さんがイケメンメガネの話題に喰いついて、3人でその話題をし始める。

 というか猪瀬さんはあのイケメンメガネのことを呼ぶときに、「メガネって良い奴だったんだね」とか急に言い出した時はさすがに戦闘になることまで考えたよ。


 魔獣の露払いをしていたら、いきなりうしろから聞こえてビックリだよ。

 それなのにあのイケメンメガネは、「メ、メガネ!?」とか言いながらくぃっとするだけでその後もそう呼ばれても普通に会話をしていた。


 あれ? そうなるとやっぱり実はいいやつなのか? 

 でも俺には最後まで結構、棘があった気がしたけどなぁ。


 「そう言えば水戸君は昨日ダンジョンで皆とどんなことをしていたの?」

 

 俺は昨日ダンジョン攻略道のメンバーがどんなことをしていたのかが気になったので聞いてみる。


 「ああ。最初は5階層を目指して進んでそこでスケルトンと戦ってから、6階層のフォレストウルフの集団と集団戦とかしてた感じ。シロダイショウが茂みから急に出てくるし、6階層はレベルが上がるまでは僕には格上だったから皆には迷惑をかけたよ」


 なるほど。

 七海さんは6階層を選択したようだ。

 12階層のガラドクヘビ対策にも14階層のヘルハウンド対策にもなるので、6階層はかなり良い選択だと思う。


 「6階層はレベルが上がってからも訓練で重宝するかも? ウルフ系って集団でくるし、動きも早いから慣れていないと危ないし。シロダイショウも12階層でガラドクヘビが気配を消して飛びかかって来るから、それの対策にもなるよ」


 「そう言えば蒼月はもう14階層まで攻略をしたんだっけか。僕も早く追いつけるようにしないとな」


 「壁を超えたし6階層でやっていれば、もっとレベルも上がって動きも良くなるから訓練だね」


 「ああ、頑張る」


 何げなく男友達と学校でこんな感じで話すのは久しぶりだなと俺は思い、変わっていく環境に楽しさを覚えたのだった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――

猪瀬さんと水戸君のステータスです。


<名前>:猪瀬 里香

<job> :フラッパー

<ステータス>

 LV  : 6

 力  :E

 魔力 :E

 耐久 :E

 敏捷 :E

 知力 :F

 運  :D

 魔法 :

 スキル:身体強化1(NEW)


<名前>:水戸 光成

<job> :ランサー

<ステータス>

 LV  : 6

 力  :E

 魔力 :E

 耐久 :E

 敏捷 :E

 知力 :E

 運  :D

 魔法 :

 スキル:身体強化1(NEW)

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