第115話 ハルバード
俺たちはリビングアーマーを見つけると今宵と東三条さんが一人で、中学3年生組が3人で1体を相手に戦いながら訓練をして先を目指す。
今宵はNinpoで俺より早くリビングアーマーを倒し、東三条さんも魔剣を使いリビングアーマーを切り裂く。
中学3年生組の3人はマコトが少しモタモタしてはいたが、これはキィちゃんとさっちゃんはいつも組んでいて連携が完璧であるのに対して、そこに一人混じって戦うことの難しさから来ているのだと思う。
というかあの魔剣を個人対戦の時に使われていたら、東三条さんがダブルスラッシュを使った時にこちらが躱せないと判断して俺がスラッシュを使いダメージを軽減した場面で、俺ってその時に死んでいるんじゃないの?
こっちが全力を出せないと思っていたら、実は手加減されていたのは俺だったという……。
「東三条さんはどうして俺との対戦にその魔剣を使わなかったの? 俺が5組だったから?」
俺は手加減されていた事実が悔しくて、東三条さんに魔剣をなぜ使わなかったのか聞いてみる。
「それは蒼月君も同じでしょう? 最初は小さな違和感でしたが、会うたびに
仙道さん職務中にMeTubeを見ちゃったの?
いや……学校の授業中に見るやつもいるから世間ではわりといそうだしまあ多少なら良いとは思うけど、東三条家でそれをしたらサヨナラバイバイされちゃうんじゃないの?
俺は近く解雇されるだろう運転手の未来を思い……いや同情はできないわ。
俺に威圧をかけて来てたし! と考え直すのだった。
「それに魔剣がいくら効果があったとしても、それは所詮装備の力です。個人戦は多くの人が学校で用意されたものを使うという伝統も、武器のせいで勝ったと言われないためのものですし……。でも抱きしめるという行為は破廉恥だと思いますわ」
「……お兄ちゃん?」
「い、いや違うぞ今宵。校内の対戦で戦った時に体術で
どうして魔剣を使わなかったのかという話だったのに、なんで最後に急に体術の話を混ぜて来ちゃったの!?
ほんとちょいちょい抱きしめたという風評被害を何とかしてほしい。
だってこれを言われると格闘技……総合格闘技の寝技だとか柔道やレスリングなんて試合できないじゃん!
「マコトちゃん。矜お兄さんはこんなだから騙されちゃダメだよ」
「うんうん」
さっちゃんが俺のことをセクハラをする男のようにマコトに言ってキィちゃんもそれに同意している。
「……。お前らそんなことを言うならもう一緒に探索しないからな! 出演もさせませーん(怒」
俺はさっちゃんとキィちゃんにディスられたことが不満で、今度からのチーム分けには二人を入れないことと配信にも出演させないということを言った。
二人は俺が怒ったことを悟ると、スススッと両側に寄って来て俺の腕を掴むと……当ててくる。
いやコイツら男がすぐそれでコロッとやられると思うなよ!
俺は戦闘でもほぼ使わない短距離転移を使ってそこから抜け出し、マコトの近くに逃げるのだった。
「マコト、あの二人の言い分は信じないように。先を進もう」
俺はマコトにそういうと先に進む。
マコトはキィちゃんとさっちゃんを一度見たが、俺について来てくれるようだった。
俺はキィちゃんとさっちゃんを見るとニヤリと笑う。
「「今宵ちゃん! ちょっと何か言ってやってよ!」」
「いや~、今のはさすがにあざとかったし~?」
「「えぇ~!!喫茶店では今宵ちゃんも楽しそうに指揮してたのに~!」」
今宵からも俺に対する行動は微妙だったと言われて、声をあげた二人を見て俺のセクハラ疑惑は免れたと思うのだった。
全員がリビングアーマーとの戦闘にも慣れた頃、俺はキィちゃんに話しかける。
「キィちゃんって剣よりもっと怪力を生かせる斧とかの方が良いんじゃないの?」
「私が持ってるスキルは剛力です矜一お兄さん。でもジョブが剣士なんですよ。それを考えるとやはり剣の方が良いかなと思うんです」
なるほど。
スキルを活かして斧なんか良いと思ったけど、ジョブの問題があったか。
「ジョブに斧士か戦士って出てないの? 出てれば変えれば良いと思うんだけど?」
「……出てますけど、カッコ悪いじゃないですか、斧」
……それを言われるとなぁ。
斧を使っている探索者には悪いけど、たしかにそう思わなくもない。
全国の斧を使ってる皆さんごめんなさい!
「ならハルバードは? あれなら槍として突き刺した時に接近された場合でも振り回せて槍の短所も消せるし、特に今回の敵のような甲冑相手には有効だと思うけど? 結構カッコも良いしハルバード最強そうじゃない?」
「それはたしかに最強そうでロマンはありますけど……。私もマジックバッグが欲しいので出来ればお金は貯めたいなって」
まー、自分の命を預ける武器の選考は難しいし、お金を貯めたいって時に買い替えは厳しいか?
「キィちゃんハルバードはカッコいいと思うよ! 女の子が重そうなハルバードを持って戦うとか逆に良くない?」
「! ハルバードにする! 今宵ちゃん今度一緒に買い物に付き合ってよ」
「いいよー!」
いや、今宵が勧めたら速攻で武器を交換するのを決断しちゃうのやめよーよ。
まあ俺も推薦したし、キィちゃんがハルバードなら戦闘の幅も広がる。
だから良いことのはずなのに俺と今宵の場合での対応の違いに少しモヤっとするのだった。
「スラッシュはもう覚えているんだっけ?」
俺はせっかく剣士になっているのに、技を覚えずにジョブ変更するのはさすがに勿体ないかなと思い聞いてみる。
「はい、スラッシュはもう覚えてます。ジョブを変えても使えるんですかね? スキルの剣術は取得していないから変更したら無理ですか?」
「いや、ネットで調べた感じだとジョブを変えてもスキルで剣術がない場合でも一度覚えておけば使えるらしいぞ」
俺はネットサーフィンで得た知識をキィちゃんに話す。
ジョブはそれになって行動をしていると、熟練度のようなものが内部で溜まるらしく剣術で覚えるスラッシュなんかを覚えることが出来るのだが、覚えたそれはジョブを変更しても使えるらしかった。
「そうなんだ。じゃあハルバード買ったらジョブを変えますね」
「お、おお。キィちゃんも一応自分で調べて考えるんだぞ」
「はーい」
俺たちはそうやって話しながら探索をしていると、14階層への魔法陣を見つけたのだった。
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