第三章 彩る学園生活

第95話 1-5クラス5位の男

 次の日の水曜日。

 今日は特に何も起こらずに放課後を向かえた。


 「あおっち~。ひがしっちの端末に昨日の対戦が凄かったから連絡を入れてるのに既読が付かないんだけど!」


 部活動は認可されたとは言え、すぐに部活として活動できる訳ではないので今日はダンジョンの何階層に行こうかと考えていると猪瀬さんが話しかけてきた。

 猪瀬さんは東三条さんと連絡先を交換しているの? 

 俺は友人のはずなのにまだなんですけど!? 


 というか既読が付かないって単に避けられているだけじゃないの? 

 そんなの俺も中学1~2年の時によく合ったけど? 

 前日までは仲が良かったのに、急に既読が付かなくなっていくホラー。


 だいたい、猪瀬さんと東三条さんって水と油ぐらいに違いがあるしお嬢様にいきなりひがしっち呼びはどうなんだろう? 

 最初に呼ばれていた時は特に気にした様子はなかったけど……。


 「それ単に猪瀬さんが嫌われているだけじゃ」


 俺がそう言うと、猪瀬さんは驚いた顔をしてきびすを返していく。


 「ななみん! はづきち! あおっちが酷い事を言うよ~!」


 会話が終わって帰っていっただけかと思ったら、まさか二人に泣きつくためだったとは! 

 大声で俺の事を言われても猪瀬さんは気にしていないが、今まで俺へ酷い扱いをしていた事に自覚があるクラスメイトは前のような見下した感じではないけれど、俺には近寄りにくいし話しかけにくいというそんな雰囲気があるから、あんまり俺の事を大声で言わないでほしい。



 「蒼月、ちょっと良いか?」


 俺の事をワイワイと話す猪瀬さんにクラス内が微妙になるからやめて~と思っていたら話しかけられた。

 俺はそちらを見るとクラス内順位5位の……たしか水戸 光成みとみつなり君だったかな。


 「水戸君どうしたの?」


 「いや、実はお願いがあって。僕も君たちが立ち上げた部活に入れてくれないか?」


 え? 

 実は七海さんが一度クラスメイトに向けて部活を作るから加入してくれる人を募ったんだが、最初は興味深く聞いていた連中も参加メンバーである俺の名前を知ると結局誰も加入したいという話にはならなかったのだ。


 それに差別を受けると言っても、既に多くが部活に所属しているという事もあった。

 まあ、一番多く所属している所は外部生で集まって作られた部活みたいだけどね。


 「え? ダンジョン攻略道に? でも水戸君なら新規に作られる部活じゃなくてもやっていけそうだけど」


 「ああ、いや……、こんな事を言うと失礼かもしれないけど蒼月には親近感があって。実は僕はあまり人と話すのが得意ではないんだ。だから固定パーティも作れていないし、上級生がいる所も嫌だなって。でもボッチだった蒼月君でも楽しそうにしている所なら俺も話ができるんじゃないかって」


 なんだかすごい事を言われたぞ? 

 やはり俺はボッチ認識されていたのか? 

 しかしそれにしても水戸君がコミュ障だったなんてね。


 たしかに入学時の順位が5位だったにもかかわらず、九条レンのパーティには6位の榎本君が入っている。

 そこが少し不思議には思っていたんだよね。


 「もしかして九条レンのパーティに榎本君が入っていて水戸君じゃないのって人見知りだから?」


 せっかくなので気になった事を聞いておく。


 「ああ~。初日の帰り際だったかな? 堂島君と一ノ瀬さんに話しかけられたんだけど、ちゃんと答える事ができなくて。その時に榎本が俺が加入するみたいな話をして。でもそれでも5人だから気になったら声をかけてねって話だったんだけど、その後にダンジョンに行ってからあいつら凄く仲が良くなってたろ? それから結局まともに話ができなくてね」


 初日に友人作りに失敗しちゃった系か~。

 わかるよその気持ち! 

 俺も入学式のざわついた時に何かあったの? と話しかけるだけで、もっとうまく馴染めたかもしれなかった。

 過ぎた話になるけどね。


 「なるほど。俺は全然問題ないから他のみんなに話してみるよ」


 入部は俺だけで決められる事でもないし。


 「ちょっと蒼月君? 猪瀬さんが可哀そうでしょ!」


 ちょうどダンジョン攻略道のメンバーである葉月さんが俺の所に来たようだ。

 でも猪瀬さんの口車に乗せられたのか少し怒っている。


 「いやいや、だって既読が付かないんだよね? 猪瀬さんの距離感と東三条さんの高貴な感じからしたら嫌われてそうでしょ」


 「そ、そう言われると……そうかもしれないけど」


 「はづきち!? はづきちもそんな事を言うの?」


 「蒼月君ー? 東三条さんはそんな事で無視するような人じゃないでしょー。なにより一緒にこれから部活をする仲間だよー」


 七海さんが東三条さんはそういう子ではないという。

 まあ俺も本当はそう思ってるけどね。

 ひがしっち呼びされた時に戸惑ってはいたけれど、嫌という感じはなくて受け入れていたし。


 「あ、蒼月? 東三条さんもメンバーなのか? いやそれならやっぱり止めようかな……」


 「あれ、水戸君ー? 止めるってなにをー?」


 水戸君は東三条さんが既に俺たちのメンバーだと知って気おくれしたようだ。

 まああの存在感のある人相手だとコミュ障にはきついよね。

 会話のキャッチボールができないし。


 「ああ、水戸君が俺たちのダンジョン攻略道に入部したいって」


 「ちょ、おま 蒼月」


 「ええ~! ほんと~? 水戸君大歓迎だよー」


 「え、なになに? ミトミトもあたしらの部活に入るん?」


 「え、い、いややっぱり止め……」


 「水戸君ほんとなの? 歓迎するね!」


 七海さんと猪瀬さんがウェルカムを水戸君にするが、水戸君は東三条さんが気になる様でやっぱり止めようかという話をしようとするが、葉月さんに押し切られる。

 ああ、陰キャあるあるの陽キャの言葉攻めに押されて何も言えなくなるの巻。


 「あたし、メンバーが増えた事をひがしっちに連絡する!」


 話題ができたと早速に猪瀬さんは既読のつかない東三条さんへと連絡をする。

 ちなみに5分ほどたっても既読は付かず、さらに落ち込んでいた。

 いや5分て。


 そんな短時間なら気づかない事の方が多いでしょと俺が言うと、みんな「え?」っていう顔で俺をみた。

 ええ……。

 そんなにみんな端末見るんだ……。

 俺たちはその後に水戸君と猪瀬さんも含めてダンジョンに行こうという話になったのだった。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る