第65話 増える仲間

 今日はゴールデンウィークが終わって初めての日曜日。

 今宵が注文したクナイは意外と早くでき、既に昨日手に入れている。


 1日中ダンジョンに潜っていた俺が家に帰った時は夜のとばりが下りていたにもかかわらず庭の木に木板の的を作って、カーテンが閉められた家の窓の明かりを頼りにクナイを投げて遊んでいた。

 スキルで暗視を覚えるのも早いかもしれない。



 そして現在、俺が何処にいるかと言うとダンジョン前でクラスメイトの七海さんと葉月さん、そして今宵の友達の綾瀬 季依あやせ きいこと、キィちゃんと琴坂 佐知ことさか さちこと、さっちゃんの5人でDだんじょんパーティを組んだところだ。


 キィちゃんとさっちゃんは昨日、既に探索者登録を終えていて……ジャージに身を包み帯剣していた。

 剣はご両親にどちらも買ってもらったそうだ。

 両親と今宵そしてマコト達とは既に挨拶を済ませていて、あちらのパーティは俺たちより先にダンジョンに入っている。

 9階層辺りで戦闘訓練をすると言っていた。


 なぜこの5人とこうなっているかと言うと、一昨日の放課後に遡る。

 5月の下旬から校内戦が解禁されるという話があったその日は特になにもなかったのだが、その次の日の放課後に1-4クラスのやつらが大挙して押し寄せて1-5でも順位が低い人たちに対戦を申し込んできたのだ。


 当初は誰も取り合わず、拒否していたが煽られるにつれてこの高校に外部入学しようとする人達だ。

 結局は我慢ができず、多くが対戦申し込みを受ける事になった。


 そこで1-5クラスの上位陣には挑んでこない、1-4クラスの奴らに対して九条 レンが煽り返した結果、1-4クラスの上位15人と1-5のクラス上位15人がそれぞれ1対1で対戦する事にもなるのだが、正直これも仕組まれてたのではないかと思う。


 さらにその約束を取り付けた後で、クラス間のポイントに差がある事から1-4クラスは1人最低5回もこちらに対して戦える事になってしまった。


 上位クラスを煽ったくせに5戦するのが怖いのかと言われ……、九条を含めウチの上位の多くが賛成した結果、決まってしまったのだ。


 ちなみに俺は大人気で1-4クラス全員から対戦申し込みを受けた。

 更にはなぜかクラスメイトの青木、他4名からも申し込みを受けたので受諾しておいた。


 いや最初は断ろうとしたんだよ? だけど1-4クラスの「最下位君は逃げるんだぁ」とかそういう煽りはどうでも良かったのに、クラスメイトの青木が「お前が1-5クラスの評判を落としたせいで1-5が対戦を申し込まれてる」とか言った挙句に俺にも対戦を申し込んでくるものだから、俺のせいじゃない事を示すためにどうせならと申し込み全てを受諾したのだ。


 俺が感じる強さ判定から1-4クラスの上位陣はコチラの上位陣より普通に強い。

 1-5クラスで一番強い九条レンは1-4クラスの下位には勝てると思うが、両クラスはそれくらいの強さの開きがあるようだ。


 そう言った経緯で七海さんも葉月さんも対戦が決まり、信じられない数の対戦申し込みを受けた俺の事を心配して話しかけてきてくれた。

 話す中で彼女たちも不安が大きいという事だったので、いっそのこと一緒に練習しないかと誘ったのだ。


 ちなみに誘い文句はウチの両親が結構強いから教えてもらう? だ。だって俺や今宵の事を言っても信じられないだろうからね。

 そしてその話を夕食の時にすると、今宵が前々からキィちゃんとさっちゃんも一緒にダンジョンに行きたいという話で11階層のパワーレベリングを一緒にすれば効率が良いという話になり……今に至る。



 

 

 「お、こいつらが矜一の今日のパーティか?」


 声がかかったので振り返ると矜侍さんが何処からともなく現れていた。

 今日のパーティメンバーに自分の力の事を話さないとレベリングができないからどうすれば良いか相談したのだ。


 「矜侍さん。そうです」


 「ふむ……。俺は天城 矜侍という」


 矜侍さんが自己紹介すると、さっちゃんが何かに気づいて言う。


 「え? 『諸行無常チャンネル』の矜侍さんですか!?」


 「お、そうだ。良く知ってたな」


 その紹介で一気に女性陣が色めき立って自己紹介を始めた。

 200億回視聴のチャンネル持ちは凄いね。


 「あー、君と君……七海さんと葉月さんには悪いけど、俺たちの秘密を話さない契約をしてくれないかな?」


 「「契約ですか?」」


 「ああ、動画を見てもらってるならわかると思うけど、今の俺はマスクもしてないし、言いふらされても困るんだ。矜一と矜一の家族、その仲間の事もちょっと問題があってな。なに簡単な契約で俺たちの話ができないだけで何かペナルティがある訳じゃない。ダメかな?」


 「「ぺ、ペナルティがないなら……」」


 矜侍さんの自分の事を話されても困るという話が効いたのか、二人は簡単に承諾した。

 二人がそう言った瞬間に矜侍さんが持っていた紙が魔法陣を描いて消えた。


 「同意してくれたみたいでこれで成立だ。矜一、念の為に5枚ほどこの契約のスクロールを渡して置く」


 矜侍さんはそう言って俺にスクロールを5つ渡してきた。

 既に契約が済んでるとの事なので俺はアイテムボックスにそれをしまう。


 !?!?


 何もない空間にスクロールをしまったから少し皆がざわつく。


 「そう言えば、キイちゃんとさっちゃんは問題ないんですか?」


 「あ? ああ、こっちの二人か。大丈夫だな。中学の頃、お前の問題が妹の所に波及した時に妹を支えて裏で守ったのはこの2人みたいだぞ。お前の妹……家族にもし不利益があれば命を絶つ覚悟がある」


 解析かなにかでみたのかな? 

 そうかこの二人は俺のせいで今宵に迷惑がかかった時に今宵を支えてくれてたのか。

 それなら信用できる。

 でももし彼女たちに俺たちの事で死ぬほどの危険が迫る事があるのなら、情報なんて相手に渡してほしい。


 「じゃあ、俺は戻るけど頑張れよ」


 「はい、時間をとってもらってありがとうございました」


 矜侍さんはそう思うなら動画配信でもして俺を楽しませろよと呟くと目の前から消えるのだった。


 

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