第61話  発散

 昼食は盛り上がった。

 各々がレベルが上がった事や宝箱を開けた後の魔法陣、そして出現した魔獣の多さへの驚きなど話題は尽きないようだった。


 父さんは壁を超えた事で新しいスキルか魔法を早く覚えたいようだったが、一応どういうものが出現しているか聞いてから先を考えて判断してもらいたい。


 一番の希望はステータス偽装が出ていればそれをとってもらいたいけど、強さには関係ないので薦めるか悩む所だ。

 今宵に関しては確実に色々覚えすぎるので必須だと思ったが、両親は今後どの程度ダンジョンに潜るかもわからないからだ。


 俺としては家族は信頼できるしスタンピードがあった場合でも安心できるので一緒に潜りたいが、俺にしても学校関連の予定が入る事もあるだろうし、それぞれの予定が合わない事も多いかもしれない。


 マコト達に関しては、レアスキルが出ていれば別だが、基本の生活魔法の取得が今後を見据えるなら良い気がする。

 毎回レベリングした後の30分の休み時間で、魔力制御なんかの訓練をしながら決めていきたい。





 合計で10回のトラップパワーレベリングを終えた所で、17時30分を回っていたのでマコト達3人の事もあり終了する事にした。


 トラップを発動させた後の訓練で今宵に魔力を流した時の教訓を活かして、初めは後ろに回って肩に手を置いて魔力を流したのだが、どうも上手く行かず結局マコト達3人と見つめ合って訓練する事になった。


 魔力が感じられるようになってからは見つめ合わなくても良くなったが、魔力を感じとるまではもしかしたらお互いの目の動きやそこから見られる感情が魔力を感じ取るトリガーになるのかもしれない。


 近くで見つめ合うと息遣いだとか集中している様子、お互いの揺らぎなんかが確かに良く分かったからね。

 しかし女性と見つめ合うのは慣れない。

 特にマコトと桃香は緊張しているのが丸分かりで、モジモジされるとこちらまで恥ずかしくて困った。


 そう言えば、今宵と訓練した時は俺だけが恥ずかしがっていたようだったからなんか悔しい。

 ちなみに聡と見つめ合っていると、聡のバックにバラが咲き乱れて「ヤラないか?」というのが見えたが、聡はマッチョではないので幻視だろう。


 その後は3人には瞑想をしてもらいながら順次、俺が回りながら指導したが3人共魔力感知はまだできないようだ。


 両親には家で練習できない生活魔法のディギング(正確には庭でできるけど)を何度も試してもらって基本属性魔法を覚える練習、妹は生活魔法を覚えようと頑張っていた。


 ちなみに……現在の俺のレベルが15。

 そしてパワーレベリングを終えた両親がどちらもレベル15、マコト達は3人共レベル10に。

 そして今宵は3度目のリミットを超えてレベルが16になっていた。

 父さんは早い段階でレベル15になっていたがその後は上がらず、マコト達も途中はバラバラであったが最終的には揃っていた。


 壁を超えた父さんと母さんは鑑定阻害の訓練をしていた為かステータス偽装が出現していて、俺の話に賛同していてくれたためにどちらもステータス偽装を覚える事になった。


 マコトと桃香は生活魔法。

 聡は身体強化。

 聡のスキル決定にはひと悶着あり、2人と同様に生活魔法を勧めたが、強くなるまでにこの間のように襲われたら対処ができないから、誰か一人は(3人の中で)少しでも戦える人が必要だと無口な聡が主張して来た時には驚いた。


 後々を考えれば生活魔法の取得が良いと分かっていても、他の2人が強くなるまで僕が身体強化を覚えていれば、身体能力で劣る相手にも戦えるという話を聞いて男の覚悟を見たために聡は1人だけ身体強化を選ぶことになったのだった。


 ちなみになぜか今宵には「細工」という手先が器用になるスキルが出ていてそれを強硬に覚えたがった。


 細工を覚えた後に「魔道具作成」を覚えて指輪を作るんだと駄々を捏ねたのにはまいった。

 魔道具作成の本を読ませておいたら出ていたかもしれない。

 魔道具作成なら俺もOKをだしたんだけどね。

 家に帰ったら矜侍さんからもらった本を渡しておこう。


 そもそも、今宵が選べる他の魔法やスキルにはレアが出ていて「氷結魔法」だとか「縮地」だとか「思考加速」がある中でなぜか一番覚えたいスキルが「細工」ですよ。お兄ちゃんビックリだよ。


 思考加速で本を読んだりすれば、勉強や魔法関連、魔道具の本を読むのに役立つかもしれないぞと言ったら、やっと収まって「思考加速」を覚えてくれたのだ。






 「父さんこれ行きの道中で俺が倒した魔物の魔石。復帰したばかりでダンジョンに入ったのに貢献ゼロはまずいだろうから、6人分として提出しとけばいいよ」


 「む? 悪いな。ここは遠慮なくそうさせてもらう」


 息子に借りを作るみたいなので一瞬ためらった表情を見せたが、父さんは普通に受け取ってくれた。


 「あと、俺だけ今日はレベルが上がってないから少しだけ残ってやっていっても良い?」


 「まあ、そうだな。一人だけ俺たちのために頑張ってくれたし良いか。だが、夕飯までには戻る事と危険だと思ったらすぐ逃げる事を約束しろ」


 「うん。危険な事はしないよ」


 「矜一さん私たちのためにごめんなさい」


 マコトが謝って来るが、全員が強くなる事は最終的には俺のためでもあるから恩に感じたり謝る必要はなにもない。


 「いや、今後一緒に仲間としてやってもらえるための打算だよ」


 「それでもです」


 ……。

 マコトは全肯定少女みたいなところがあるんだよなぁ。


 「お兄ちゃん! 今宵も残る!」


 妹が自分も残ると手を挙げているが、お前はだめだろ。


 「いや、今宵がいないと魔法陣転移が使えないから戻れないだろ」


 「あ~そうだった~。残念」





 両親たちが帰ってから俺はトラップを3回発動させてレベルは17になっていた。

 覚えられるものでレアなのは「雷魔法」、「思考加速」、「鍛冶」で残念ながら欲しかった「魔道具作成」や「付与」は出てこなかった。


 正直、鍛冶はラノベを嗜むものであればロマンの塊で迷いに迷ったが、脳裏に「今宵には選びたいものを変更させておいてそんなことするの?」と出て説教をしてきたので俺も思考加速を覚えたよ。

 今が19時。あと1回はできるが……、今日は消化不良なんだよね。


 宝箱がリポップするのを待ち俺は……銀の宝箱にロックブレットを当ててトラップを発動させると呪文を唱えながら飛び降りる。


 「身体強化アビリティライズ



 さぁ、力試しさせてもらおうか!!

 大きな魔法陣が消え、目の前には50匹を超えるリザードマンとギルーマンが出現していた。

 先ほど覚えた思考加速が早くも役に立っていて、立ち回りや動き方を瞬時に思考する事ができた。


 「ファイヤーボール!」


 「ダブルスラッシュ!」


 俺は右方向に魔法を放つと、左方向に走り近くのリザードマンを2匹切り捨てる。


 「ダークネス!」


 闇魔法のダークネスを唱え、敵に目視させないように立ち回る。


 「ファイヤーボール」「ロックブレット」


 相手が見失ってくれたおかげで時間ができ、そこでまた魔法を使う。


 移動して切り伏せては魔法。この繰り返し。


 「シャイン・レイ」「ウォーターカッター」


 


 ザンッ


 俺は目の前にいる最後のギルーマンを切り捨て全ての討伐を完了した。


 ふぅ。

 かなりの緊張感を持って動く事ができた。

 普段使わない属性魔法を使う事もできたし、強くなれた事を実感する事もできた。


 

 一度目をつぶり満足感を噛み締める。

 そして目を開けると、そこには多数の魔獣の死体があり……、


 「魔石取るか……」


 どこまでも締まらないのだった。







 ―――――――――――――――

 以下本文ではありません。各々のステータスです。読まなくても問題ありません。

 機種によっては見え方が違うようでステータス表記がズレるみたいですし、見難い場合はごめんなさい。



 <名前>:蒼月 矜一

 <job> :魔法剣士

 <ステータス>

 LV  :17

 力  :C

 魔力 :B

 耐久 :B(UP)

 敏捷 :B

 知力 :C

 運  :D

 魔法 :生活魔法5、基本属性魔法(火2(UP)・水2(UP)・風1・土2(UP)・光2(UP)・闇2(UP)・無2(UP))、回復魔法1、空間魔法2

 スキル:剣術4(UP)、体術3、槍術1、杖術1、危険察知1、気配察知2、気配遮断1、空間把握2、魔力制御2、ステータス偽装1、孤独耐性1、暗視1、身体強化1、思考加速1(NEW)



 <名前>:蒼月 今宵

 <job> :NINJAニンジャ

 <ステータス>

 LV  : 16

 力  :C

 魔力 :C

 耐久 :B (UP)

 敏捷 :B

 知力 :B

 運  :B

 魔法 :空間魔法2

 スキル:武術全般3、Ninpoニンポー1、魔力感知3(UP)、 ステータス偽装1、魔力制御1(NEW)、思考加速1(NEW)




 <名前>:蒼月 恭也

 <job> :剣士

 <ステータス>

 LV  : 15

 力  :C

 魔力 :C

 耐久 :D

 敏捷 :D

 知力 :D

 運  :D

 魔法 :生活魔法7

 スキル:ステータス偽装1(NEW)




 <名前>:蒼月 咲江

 <job> :マジシャン

 <ステータス>

 LV  : 15

 力  :D

 魔力 :C

 耐久 :D

 敏捷 :D

 知力 :D

 運  :C

 魔法 :生活魔法7

 スキル: ステータス偽装1(NEW)




 <名前>:星野 真

 <job> :治癒士

 <ステータス>

 LV  : 10

 力  :E

 魔力 :E

 耐久 :E

 敏捷 :E

 知力 :D

 運  :E

 魔法 :生活魔法1(NEW)

 スキル:なし



 <名前>:桐島 桃香

 <job> :スカウト

 <ステータス>

 LV  : 10

 力  :E

 魔力 :E

 耐久 :E

 敏捷 :D

 知力 :F

 運  :E

 魔法 :生活魔法1(NEW)

 スキル:なし



 <名前>:桐島 聡

 <job> : 剣士

 <ステータス>

 LV  : 10

 力  :D

 魔力 :E

 耐久 :E

 敏捷 :E

 知力 :E

 運  :E

 魔法 :身体強化1(NEW)

 スキル:なし

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